今年、各界で最も顕著な業績を残したチームを称える「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2012」の表彰式が26日、都内で行われ、スポーツ部門では夏のロンドン五輪で初の団体メダルを獲得したフェンシング男子、卓球女子、アーチェリー女子の各代表チームが選ばれた。表彰式には、それぞれのチームからフェンシング・太田雄貴、アーチェリー・蟹江美貴、卓球・平野早矢香の3選手が出席。団体で銀メダルを手にした太田は「北京でも(個人で銀)メダルを獲れたが、今回はチームでメダルが獲れて良かった」と改めて喜びを語った。
(写真:審査員の有森裕子さんからトロフィーを受け取る太田)
「ベスト・オブ・ザ・イヤー」は今年で5回目を迎えた賞で、国内はもとより世界を舞台に高い実績・評価を獲得した製品やサービス、コンテンツを生みだしたチームワークに焦点を当て、毎年、実行委員会の審査を経て表彰している。スポーツ関係では第1回目の2008年にバレーボール全日本女子代表の主将を務めた竹下佳江選手が受賞している。

“いいチーム(1126)の日”でもあるこの日の表彰式では、今年5月に開業した東京スカイツリーの運営チームが大賞を獲得。企業部門では、無料通話&メールのスマートフォンアプリを開発した「LINE」チーム、PC作業用メガネを世間に広めた「J!NS PC」プロジェクトチーム、パンダの自然交配で13頭目の赤ちゃんを誕生させた「アドベンチャーワールド」の飼育チームが賞に輝いた。また芸能文化部門では今年の邦画で興行収入1位のヒット作となった「テルマエ・ロマエ」の製作チームが選ばれた。

 今年、スポーツ部門でのチームの活躍といえば、何と言っても夏のロンドン五輪が記憶に新しい。フェンシング、アーチェリー、卓球以外でも、サッカー女子、体操男子、バレーボール女子が団体でメダルを獲得。競泳の4×100メートルメドレーでも男女で日本チームがメダルに輝いた。この結果、日本は過去最多となる38個のメダルを収めている。

 フェンシングは準々決勝で世界ランキング2位の中国、準決勝では同3位のドイツと格上の相手を撃破。決勝ではイタリアに敗れたものの、堂々の銀メダルだった。団体戦に先駆けて実施された個人戦では全選手が早々と敗退しており、太田は「(団体まで)5日しかなかったので切り替えが大変だった」と当時の状況を明かす。それでも好成績を残せたのは「チームワーク」だ。

「練習も大事だが、プライベートの時間も一緒に過ごしてチームワークも高めあってきた。本気で鬼ごっこをしたり、ユニバーサルスタジオや京都の祇園祭に行ったり、陶芸教室にも通った。いろんなことを全員で一致団結してメダルを獲ろうと、いつも話してきた」
 その言葉通り、団体ではエースの太田のみならず、千田健太、三宅諒が躍動した。準決勝のドイツ戦では2選手の頑張りでリードして最終セットに持ち込んだことが延長戦の末の勝利につながった。

 男女通じて同競技では日本初のメダル(銀)となった卓球女子は4年前の悔しさをバネにした。北京五輪は3位決定戦で韓国にストレート負け。「北京からの4年間、ロンドンでのメダルに向けてチーム一丸だった」と平野は振り返る。
(写真:「家族より過ごしている時間が長い。お互いの性格や目指すものは分かっている」と代表チームの絆の深さを披露した平野)

 ロンドンでは19歳の石川佳純、3大会連続出場の福原愛がそれぞれ実力を発揮。前回銀のシンガポールを準決勝で下して初の決勝進出を決め、メダルを確定させた。「卓球界念願のメダルで、これからの選手には目標になる。これをきっかけに卓球界が盛り上がればいい」と語った平野は来年1月の全日本選手権に出場予定で、4年後のリオデジャネイロ五輪に向けて、さらなる高みを目指すつもりだ。

 競技2日目に銅メダルを獲得して日本中を沸かせたアーチェリーは、蟹江をはじめ3選手がいずれも五輪初出場。しかし、ウクライナ(世界ランキング3位)、メキシコ(同5位)と強豪を破り、初のベスト4入りを果たす。五輪7連覇を達成した韓国と激突した準決勝は敗れたが、ロシアとの3位決定戦では最終第4エンドで各選手が高得点を収めて逆転する。ロシアの最終射の得点が日本に及ばず、3位が決まった瞬間、3選手が手を取り合ってうれし涙を流したシーンにはチームの雰囲気の良さが表れていた。

「アーチェリーでは団体初のメダル。私だけの力ではなく、早川(漣)選手、川中(香緒里)選手のおかげだと思っている。チームみんなの賞です」と蟹江はチームメイトへの感謝を口にした。もう五輪から4カ月近くが経つが、まだ「メダルのすごさは実感がない」という。現在は「気持ちが一段落してお休み期間をいただいている」状態だが、「チャージして、また頑張れるようにしたい」と今後も競技を続ける意向だ。

 4年に1度の大舞台で結果を出し、どの選手も「最高の1年だった」と、この2012年を総括した。「毎年、毎年が過去最高の1年になるように頑張りたい」と語った太田は、「42.195キロを走れば何かが見えるはず」と12月にホノルルマラソンに挑戦する。熱狂の夏を経て、チームで、そして個人で、次なる目標に向けた道のりがスタートしている。
(写真:モデルの冨永愛さん、アーティストの土屋アンナさんも特別賞を受賞した)