田口竜二(元プロ野球選手、(株)白寿生科学研究所人材開拓課長)第27回「独立リーグに提案。NPBに先駆け指導者ライセンス導入を」
みなさん、こんにちは。いよいよプロ野球も開幕してドキドキする毎日をお過ごしかと思います。私は野球評論家ではないのでここで順位予想はしませんが、自分がいたチームには頑張って欲しいなと願っています!
時期を同じくして独立リーグや大学野球も開幕しました。自分は選手たちのセカンドキャリアを支援していることもあり、独立リーグの関係者といろいろと話す機会があります。今回は独立リーグ関係者に是非チャレンジして欲しいことを書かせていただきます。
第23回のコラムで「指導者のライセンス制度導入の必要性」について書きました。野球界のために絶対に必要な制度ですが、現状は何も動いていません。ライセンス制度に関してアマチュア側がアクションを起こしたところで、プロ野球、いわゆる日本野球機構(NPB)や12球団が動かないことにはこれから何も変わらないと思っています。そのプロ野球を動かすためにどうすればいいか。私はプロ野球はプロ野球でもNPBではなく独立リーグが動いて、ライセンス制度の必要性を知らしめることが有効なのではと考えています。
現状、独立リーグもNPBも指導者や監督を選ぶ際に「あの人いいんじゃないの?」「チームに貢献してくれたからね」「ある人に頼まれたからね」という資質以前の判断基準で決まってると言ってもおかしくない状況だと認識しています。「貢献者だから」「スターだから」「選手として結果を残してるから」「監督のブレーンだから」という選考理由に誰もが納得できるかといえば、答えはノーでしょう。そういう選び方は選手に対しても失礼です。
そこで組織もコンパクトでいろいろとチャレンジが可能な独立リーグがまず動いてみるのはどうでしょう。独立リーグがNPBを慌てさせられる指導者ライセンス制度を確立し、最終的には独立リーグで学び、選ばれた指導者がプロの指導者になる。そういう流れになれば面白いと考えています。
ライセンス制度導入にあたっては以下のような作業が必要になります。
・指導者になるためにはどんな資質、どんな経験が必要なのか、また何を学んでないといけないのかをリーグ側で熟察し、指導者として相応しいかの判断基準を明確にする。
・チームが新たに迎えたいと考える指導者候補の面接はリーグが実施し基準を満たしているかを判断する。
一般企業では人材を採用する場合に面接は必須です。ここで「この人物は無理だろう」「実力がない」など自社に合わないとなれば不採用は当たり前です。でも野球界では指導者を面接し、基準以下ならば採用しないという概念は存在しません。もしかすると面接を実施すること自体が受け入れられない可能性もあります。それでも選手を苦しめるような指導者は排除し、どこにいっても指導者として通用する人材を育成するためには面接は必須条件だと考えています。
指導者を採用した後にもまだやることはあります。シーズン中、全球団の指導者を集めて勉強会を実施するのです。勉強会といってもただ聞いてるだけの会ではなく、しっかり学ばないと基準点をクリアできない試験ありきの勉強会です。これをクリアできない指導者はベンチ入りを認めず、追試を実施。そこでもクリアできない場合にはチームを去ってもらう。これくらいの厳しい制度が必要だと個人的に考えています。またシーズン終了後も指導者の能力向上のため、選手からの360度フィードバック(多面評価)を行う必要があります。
さてこうしてライセンス制度が確立されて実績ある指導者を生み出すようになれば、必ずNPB側は動いてくるでしょう。機構が動くのか、チームが動くのかはわかりませんが、チームの場合は、将来の指導者候補に資質があるのかどうか、あるのならば独立リーグでその能力を伸ばしてほしいと人材を独立リーグに預けることになります。
こうなれば独立リーグに大きなメリットが生まれます。現状で独立リーグの監督やコーチの給料はチーム持ちです。ほとんどが元プロ野球選手の方々なので決して安い金額ではなく、それが経営の圧迫になっているとも聞いています。NPB球団から送られてきた指導者の給料や経費はすべてNPB球団が支払うとなれば、独立リーグは随分と経営が楽になるでしょう。NPBと独立リーグのウィンウインの関係になれるのです。
ライセンス制度が軌道に乗ればNPB側もライセンス制度採用の動きを見せるかもしれません。NPBが動けば日本の野球界が動くことになります。「野球の将来のために独立リーグの指導者ライセンス制度の構築は急務だ」と、ここに提案して今回のコラムを締め括りたいと思います。