4月8日、今年もBCリーグが開幕しました。開幕前によく「平野さん、連覇いけそうですか?」「連覇頼みますよ」と声をかけられました。地元である群馬のみなさんの期待の大きさをひしひしと感じています。


 昨季、群馬ダイヤモンドペガサスは四国アイランドリーグplusとのグランドチャンピオンシップを制して初の日本一に輝きました。当然、今季も目標は「前後期優勝、そして日本一!」といきたいところですが、BCリーグで連覇はそう簡単ではありません。


 というのもBCリーグはシーズン毎に戦力が大きく入れ替わるんです。独立リーグですからNPBへ行く選手もいるし、野球を辞める選手もいる。群馬も昨年とは顔ぶれが半分近く変わっています。だから毎年、開幕前に選手にはこう言っています。「今年もチャレンジ。新たなシーズンだからまた挑戦者の気持ちでやっていこう」と。

 

 地元選手の奮起に期待

 先発投手は伊藤拓郎、南拓真、柿田兼章、抑えに荻野恭大という布陣でシーズンを戦うつもりです。野手ではベテランの井野口祐介、そして外国人のフランシスコ・カラバイヨが今季も打線の中心になります。


 1番で起用する藤井一輝には俊足を活かした切り込み隊長として頑張って欲しいですね。彼は足以外にもセンターから正確なバックホームができる強肩も武器なんです。外野守備の専門家の僕から見ても光る物を持っていますよ。当然、NPBのドラフトにもかかる可能性があるでしょう。あとは本人がどれだけ欲を出して、目の色を変えて頑張ることができるか、それにかかってますね。


 2年目のキャッチャー、速水隆成は非凡なミート力があり打者としても期待しています。あと面白い存在がトライアウトで入ってきた笠井聖寿という選手です。彼は駒大苫小牧の野球部出身ですが、高校卒業後は就職して野球を辞めていました。4年間のブランクはありますが足と肩はいいものを持っています。打力がまだまだなので、そっちが伸びてくれば面白い存在です。


 地元群馬出身の選手はルーキーの富田光孝に活躍して欲しいですね。地元の選手が活躍すると、やはり球場が盛り上がるんですよ。活躍すれば拍手喝采、変なプレーをしたら「なにやってんだ」と容赦ない声が飛びます。球場が小さいからベンチでもグラウンドでもそれがよく聞こえるんです。そういう意味では柿田、荻野も地元選手として奮起してくれることを期待しています。

 

 巨人3軍なにするものぞ

 今年もBCリーグは巨人3軍との交流戦を実施します。昨年、初めて対戦したときは選手によって反応がそれぞれ異なっていて面白かったですね。巨人のユニフォームを見て「負けるもんか」と燃える選手もいれば、少し萎縮していた選手もいました。

 でも実力としてはうちの選手も負けていないし、去年同様に五分以上に戦えると思っています。


 選手に期待するのは「これだけは負けない」という個性を磨いて欲しいということ。足でも肩でも打力でも何でも、一芸に秀でた選手がどんどん出てきたら面白いですよね。


 BCリーグですから選手の技量が未熟なのは仕方ないんですよ。ミスは出るのが当たり前です。だからうちは勝っても負けてもミーティングをして、ミスを成長の糧にしています。あと選手が未熟な分、こっちもすごく勉強になりますね。この選手はこう育てていこう、こっちはこうやって教えよう、といろいろと我々ベンチの人間も頭を使うことになります。これは独立リーグの指導者でなければ経験できないことです。


 最初にも言いましたが、今季もうちはチャレンジャー、挑戦者です。その中で結果を出せたら最高ですね。今季も群馬ダイヤモンドペガサスの応援をよろしくお願いします。


<平野謙(ひらの・けん)>:群馬ダイヤモンドペガサス監督
1955年6月20日、愛知県出身。78年にドラフト外で中日に入団する。81年に公式戦初出場を果たし、翌年からスタメン(センター)に定着する。86年に48盗塁をマークして盗塁王を獲得。88年に交換トレードで西武に移籍すると、88年から92年まで5年連続でパ・リーグの最多犠打を記録。90年に通算265犠打を決めて、当時の日本記録を塗り替えた。その後、ロッテに移籍し、96年に現役を引退した。引退後はプロや社会人野球のコーチを経て、15年に群馬ダイヤモンドペガサスの野手コーチに就任。16年から監督を務める。現役時代、ベストナインに1度(88年)、ゴールデングラブ賞に9度(82年、85年、86年、88-93年)も輝いた守備と走塁のスペシャリスト。NPBでの通算成績は1683試合、1551安打、打率.273、53本塁打、479打点、451犠打、230盗塁。


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