昨季、25年ぶりのリーグ優勝を果たした広島が、さらに進化している。と言っても、本拠地マツダスタジアムのことだ。

 

 

 今年1月から1億円かけてトイレの改修に乗り出した。試合中はトイレの中にいても、ラジオ実況が聞けるようになった。

 

 これはいいアイデアだ。観客の多くはイニングの合間を狙ってトイレに行くが、混んでいると大事な場面を見逃してしまいかねない。せめて実況があれば流れがわかるのに、と思っていたファンも多かろう。

 

 さらに言えば、女子トイレは全て温水洗浄便座になり、通路の鏡も増設した。これなら待っている間に身だしなみを整えることができる。「カープ女子」にとっては朗報だろう。

 

 広島躍進の最大の理由は「放映権ビジネス」から「球場ビジネス」への転換にある。球団創設間もない1957年に建てられた旧市民球場は老朽化が進み、球界再編騒動が起きる前年の03年には観客動員数が94.6万人にまで落ち込んでいた。

 

 観客が減れば経営は立ち行かない。それでも、なんとか存続できていたのは、巨人戦を中心とする放映権収入に依る。だが年々巨人戦は地上波から姿を消し、巨人も“扶養家族”を養えなくなった。広島が生き残りの道を球場に求めたのは、当然の帰結だった。

 

 その成果はすぐに表れた。新球場元年の09年、成績は5位だったものの、178万人の観客が球場に駆けつけた。15年は約211万人、16年は約215万人と2年続けて200万人を突破した。

 

 15年の売り上げは04年の2.5倍にあたる148億円。このうちの約25%が物販収入だ。アミューズメント性に優れていることに加え、ホスピタリティの行き届いた新球場が球団価値を高めたことは自明である。

 

 しかし、選手同様、球場にも賞味期限はある。魅力ある球場であり続けるためには、“たゆまざる改善”が必要だ。

 

<この原稿は2017年4月10日号『週刊大衆』に掲載された原稿です>

 

 


◎バックナンバーはこちらから