16日、前日に開幕した全日本卓球選手権大会ジュニアの部に続き、一般の部が開幕する。ロンドン五輪に出場した日本代表選手は、福原愛(ANA)、石川佳純(全農)、平野早矢香(ミキハウス)ら全6名が参戦。今年度の総決算となる大会で、全5種目での日本一が決まる。また今大会のシングルス優勝者は5月の世界選手権パリ大会、6月のアジア選手権釜山大会の日本代表に内定する。
(写真:大会に向けて意気込む五輪メンバー。左から平野、福原、石川)
 ロンドン五輪メダリスト、三つ巴の争い

 女子シングルスは、ロンドン五輪団体で史上初の銀メダルを獲得した日本代表メンバー3人が優勝争いの軸となるだろう。昨年、悲願の初優勝を果たした福原愛(ANA)は、「全日本選手権は、私の中では1年間頑張った人が優勝できる大会」と語り、今年度をいいかたちで締めくくりたいとの思いは強い。ただ気になるのは昨年8月に手術した右ヒジの状態だ。復帰戦となった12月のITTFワールドツアー・グランドファイナルでは中国選手にストレート負けを喫している。本人は右ひじの状態を「(手術前と)比べたくない。新しい腕と交換したと思っています」と話すように不安は口にしないが、万全とも言えないだろう。試合をこなしながら感覚を掴んでいくしかない。

 現役最多の5度の優勝を誇る平野は、福原とは対照的に「新しいスタートということで、オリンピックのメダルは封印」と、年が明け気持ちも新たに臨む姿勢だ。かつては全日本を3連覇するなど、日本のトップを走っていたが、ITTF世界ランキングでは37位と、福原(7位)、石川(9位)に水を開けられている。ここで王座を奪還して、意地を見せたいところだ。福原と平野は順当にいけば、準決勝で対戦する。

 その2人の勝者を決勝で待ち受けることが予想されるのが、一昨年の女王・石川だ。ロンドン五輪では巧みなサーブと強烈なフォアを武器に、シングルスで4位に入り、表彰台まであと一歩と迫った。五輪後も日本リーグで無敗、ITTFワールドツアー・グランドファイナルU−21で優勝を果たすなど、3人の中で一番、順調に試合数を積み、結果も残している。コンディションに関しては「練習も長い間することができ、この試合に向けて調整することができた」と語り、大会に向けては「自分でもすごく楽しみ」と調子の良さを窺わせた。19歳のレフティが女王へと再び上りつめる可能性は高い。優勝候補の筆頭と言えるだろう。

 またジュニア勢にもタレントが揃う。高校1年生でインターハイを制した前田美優(希望が丘)、昨年のジュニア女王・谷岡あゆか(JOCエリートアカデミー)に加え、さらに下の世代にも、昨年、小学生初のベスト16まであと1勝届かなかった加藤美優(JOCエリートアカデミー)などがいる。そして平野美宇(ミキハウスJSC山梨)、伊藤美誠(豊田町卓球スポーツ少年団)の小学生コンビには、かつて福原も果たせなかったベスト16入りの偉業を成し遂げられるかに注目が集まる。

 エースが天皇杯奪還なるか

 一方の男子は、水谷隼(beacon.LAB)が本命だ。史上初の5連覇を達成するなど、実績は申し分ない。しかし、昨年は当時高校生の吉村真晴(現愛知工業大学)に敗れ6連覇を逃し、涙をのんだ。日本卓球界をリードし続けてきた男は、その雪辱に燃えているはずだ。ただ「ラケットの補助剤問題」を訴えて、国際大会の出場を辞退しているため、5カ月ぶりの公式戦に試合勘には不安が残る。それでも水谷は「強い選手の発言力は大きい。結果を残すことを重視したい」と、モチベーションは高い。歴代2位タイの6度目の制覇へのチャレンジは容易くはないが、エースがその実力を証明するには絶好の機会だ。
(写真:「引退する可能性もあった」と語る水谷)

 その水谷を破って史上2人目の高校生王者に輝いた吉村は、日本代表として世界選手権を経験。大学進学後はアジアカップで準優勝、全日本大学選手権を準優勝し、全日本学生選抜では優勝を果たしている。吉村自身は「去年は勢いのあった1年間で、充実した年だった。今年度はプレッシャーに負けてしまった部分があって、自分の思うようなプレーができなかったことがありました」と振り返る。ただ「1年間立ち止まったわけじゃないですし、培ってきたもの出せたらなと思っています」と、若きチャンピオンがさらに快進撃を続けるのか。

 ロンドン五輪組では、ジュニア3連覇の丹羽孝希(青森山田高)が吉村に次ぐ高校生王者を狙う。丹羽は、五輪後、ドイツ・ブンデスリーガに参戦し、経験を積んだ。本人は「沢山強い選手と試合できたので、いい経験になったとは思う。まだ3カ月しか行ってないので、まだまだ成果が出るとは思っていないです」と控えめだ。目標も「まだベスト8より上に行っていないので、準々決勝で吉村さんに挑戦したいです」と大口は叩かない。昨年の五輪アジア予選で世界ランク1位(当時)の馬龍を撃破するなど、大番狂わせを演じている。謙虚な18歳が、日本の頂点に立つことは不可能ではない。

 もうひとりの五輪組は、岸川聖也(スヴェンソン)。近年、全日本での成績はふるわないものの、ロンドン五輪では男子シングルスで史上初のベスト8入りの好成績を残した。「全日本も僕にとっては、重要な大会なので、(五輪と)同じような気持ちで頑張りたい」と意気込む。五輪で得た自信を力に変えて、初優勝を狙いたい。

 男子ダブルスは、水谷、岸川組が6度目の優勝を、女子ダブルスは藤井寛子、若宮三紗子(日本生命)組は4連覇を狙う。混合ダブルスは松平賢二(協和発酵キリン)、若宮組の前年度覇者に吉村、石川組らが挑む。今大会はロンドン五輪後初の国内。福原が「沢山のお客さんがロンドンのプレーをもう1回見たいと思って、会場に足を運んでくださると思う」と語るように、女子団体は銀メダル、シングルスはベスト4、男子シングルスはベスト8と、過去最高の結果を残した。先月行われた世界ジュニアでも団体で男女ともに準優勝を果たすなど、勢いに乗る日本卓球界。この盛り上がりを冷まさないためにも、国内での熱い戦いに期待したい。

【全日本選手権大会(一般の部)】

・16日(水) 女子シングルス&男女ダブルス 1回戦
        混合ダブルス 1〜3回戦
・17日(木) 男子シングルス 1〜2回戦
        女子シングルス 2〜4回戦
        男子ダブルス 2〜3回戦
        女子ダブルス 2回戦
        混合ダブルス 4回戦〜準々決勝
・18日(金) 男子シングルス&女子ダブルス 3〜4回戦
        女子シングルス 5〜6回戦
        男子ダブルス4〜5回戦
        混合ダブルス 準決勝〜決勝
・19日(土) 男子シングルス 5〜6回戦
        女子シングルス&男子ダブルス 準々決勝〜決勝
        女子ダブルス 5回戦
・20日(日) 男子シングルス&女子ダブルス 準々決勝〜決勝

※すべて時間は10時〜、会場は代々木第一体育館