昨年の合同トライアウトを経て5名の新人を獲得しました。投手、捕手、内野手が1名ずつ、外野手が2名と満遍なく補強ができたのではないかと思っています。特に楽しみなのは1位と2位で指名した外野の2選手です。
 1位の河田直人(生光学園高−愛知学院大)は今季のクリーンアップ候補です。天性の飛ばす力を持っており、一昨季のホームラン王・迫留駿といい勝負ができるでしょう。昨季、迫留は打率.151、3本塁打と伸び悩みましたが、お互いに高め合って和製大砲として打ちまくってほしいものです。

 2位の宮坂基也(帝京高−仙台大)も肩が強く、バッティングも広角に打てますから、実力は十分、レギュラークラス。2人の加入で、先程、名前の挙がった迫留や、リーグ9年目となる梶田宙と激しいポジション争いが繰り広げられることは間違いありません。加えて韓国人の外野手も獲得予定です。練習生にも外野を守れる選手が5名も控えています。今季は誰もレギュラー安泰と言えない競争の1年となるのではないでしょうか。

 捕手も2年目の屋宜宣一郎夏山翔太がうかうかしていられない選手が入団します。高卒ルーキーの安田開(東京国際高)です。183センチ、95キロと体格も堂々しており、高校生離れしたえげつない打球を飛ばします。もちろんキャッチャーとしてはこれから経験が必要ですが、打撃なら屋宜や夏山にも引けをとりません。昨季は2選手とも打率は1割台でしたから、あまりにも結果が出ないとスタメンマスクを奪われてしまうかもしれません。

 ピッチャーの中村正利(鹿児島城西高)もこの春、高校を卒業する18歳。サウスポーながら140キロ台のストレートを投げられる逸材です。昨春の鹿児島県大会ではチームを優勝に導いており、高校生として力は申し分ありません。体力もありそうですから、同じ左腕の吉田豊彦投手コーチの下、実戦の中でどんどん投げさせたいと考えています。彼の加入により、このところ故障もあって結果が出ていないサウスポーの吉川岳らにいい刺激を与えてほしいものです。

 5位指名した山下和則(青嶺高−九州総合スポーツカレッジ)は二遊間を守れる内野手。まだ線は細いですが、足が使えるところが長所です。スイッチヒッターのようですが、トライアウトで見た感じでは、まず左打ちを完成させたほうがよいとみています。19歳と若く、伸びしろがあるだけに高知での成長が楽しみです。

 昨季までの僕はなるべく多くの選手にチャンスを与え、我慢して起用してきたつもりです。しかし、チームの成績は一昨季、昨季と四国の4チームの中で最下位に終わりました。さすがに3年連続でファンの皆さんを裏切るわけにはいきません。今季は少し考えを改めようと思っています。

 チーム内の競争を勝ちぬき、結果を出さなければ試合には出られない――プロとしては当然のことですが、今季はより、この部分を徹底していく方針です。そのためにも、外野に限らず、開幕に向けて全ポジションの争いを激化させていこうと考えています。この先、球団には外国人助っ人も補強してもらう予定です。

 そして各選手の状況をコーチ陣全員で共有すべく、「育成シート」を作成して指導することになりました。監督・コーチは合わせて4名と限られた人数ですから、今、何を重点的にすべきかを明確にすることで、指導にもムダがなくなると感じています。

 昨季はチーム成績のみならず、育成面でもドラフト指名選手が0名と不甲斐ない1年となりました。そんな中、木幡翔が埼玉西武の通訳として採用されたことはうれしいニュースでした。彼は投手として米国の独立リーグでプレー経験があり、英語でもコミュニケーションがとれます。昨春、春野にキャンプに来ていた西武の関係者に、たまたま「英語ができる選手がいる」と紹介したことから彼の新たな道が開けました。通訳は言語力のみならず、専門用語や選手の心理も理解した上で話す仕事です。ピッチャー上がりの木幡にとっては、大きな強みとなるでしょう。

 木幡は英語力が武器になったように、人間は、いつ、何が幸いするか分かりません。ワンプレーや1球1球を大切に過ごしていれば、NPBスカウトの目に留まるチャンスもあるでしょう。1年はあっという間に過ぎてしまいます。一瞬一瞬をムダにせず、チーム成績でもドラフト指名でも結果を出す。これが今季に課せられた大きな使命です。ファンの皆さんに喜んでいただけるシーズンになるよう精一杯頑張ります。応援よろしくお願いします。


定岡智秋 (さだおか・ちあき)プロフィール>: 高知ファイティングドッグス監督
 1953年6月17日、鹿児島県出身。定岡三兄弟(次男・正二=元巨人、三男・徹久=元広島)の長男として、鹿児島実業から72年、ドラフト3位で南海(現ソフトバンク)に入団。強肩の遊撃手として河埜敬幸と二遊間コンビを形成した。オールスターにも3回出場し、87年限りで現役を引退。その後、ホークス一筋でスカウトや守備走塁コーチ、二軍監督などを歴任。小久保裕紀、松中信彦、川崎宗則などを指導し、現在の強いソフトバンクの礎づくりに貢献した。息子の卓摩は東北楽天の内野手。08年より高知の監督に就任。現役時代の通算成績は1216試合、打率.232、88本塁打、370打点。
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