代々木第一体育館で行われた全日本卓球選手権は19日、女子シングルス決勝で福原愛(ANA)が石川佳純(全農)を4−2(6−11、11−7、4−11、11−9、11−8、11−3)で下し、2年連続優勝。男子ダブルスは松平健太(早稲田大学)、丹羽孝希(青森山田高)組が坂本竜介、笠原弘光(協和発酵キリン)組をストレートで破り、2年ぶり2度目の全日本制覇を果たした。
(写真:表彰式で笑顔を見せる石川<左>と福原)
 復活を印象付けるには、十分すぎる結果だった。福原が女子シングルス決勝で、石川との昨年の決勝と同カードを制した。

 福原は、準決勝で藤井寛子(日本生命)と対戦。得意のバックハンドが冴え、4−2で社会人王者を退けて、決勝進出を決めた。迎えた決勝の相手は、ロンドン五輪を一緒に戦った代表メンバーであり、シングルスでは過去最高の4位に入った石川。勢いに乗る19歳は、準決勝では松澤茉里奈(淑徳大)にゲームカウント1−3と追い込まれながら、逆転で制していた。

 第1ゲームは6−11で石川に先手を許した。福原の頭の中に「勝てないかな」との思いもよぎったが、そこで弱気にならず強気に攻めた。第2ゲームは0−2から7連続ポイントを奪うなど、11−7でモノにする。第3ゲームを落としたものの、第4ゲームは根気強く石川のフォアをバックハンドで返すなど、11−9の接戦で制す。
(写真:右ヒジの不安を感じさせない強烈なバックハンド)

 競れば競るほど、福原の集中力は増し、バックハンドから繰り出される威力のあるボールは、石川のミスを誘発した。続く第5ゲームも11−8で奪取すると、一気に福原のペースに持ち込み、第6ゲームは9−2とリードを奪う一方的な展開だった。1点を返されても「最後の一球まで集中した」と、連続ポイントを奪って11−3でゲームセット。自らが「1年間、頑張った人が優勝できる大会」と位置付けた大会で、見事2連覇を成し遂げた。

 今大会はロンドン五輪後に右ヒジを手術して臨んだ復帰第2戦。復帰戦のITTFグランドツアー・ファイナルは初戦で敗退しており、不安もあった。「“どれだけ戻っているか”という思いがあった。優勝することができて、すごく大きな自信になりました」と、試合後の会見では安堵の表情を見せた。福原は3カ月間のブランクを振り返り、「体力面、技術面で元通りになるまで時間がかかって、苦しかった。今回の優勝で、つらかったこととかが、うれしいという気持ちに変わりました」と語った。福原は今大会で得た自信を携え、今度は世界に挑む。5月の世界選手権パリ大会では「もっともっと強くなりたい」と一層の成長を誓った。
(写真:ポイントを決め、吠える福原)

 一方の石川は「向かっていこうと思っていたが、リードをしたら守りに入ってしまった」と、攻めの気持ちを欠いたことを敗因にあげた。福原のバックハンドに追い込まれ、「相手のボールに対して焦って、“早く終わりたい”と思ってしまった」と唇を噛んだ。

 男子ダブルスは松平健、丹羽組が優勝。松平健は青森山田高の出身で丹羽の3年先輩にあたる。2人は息の合ったコンビネーションを見せ、準決勝で水谷隼(beacon.LAB)、岸川聖也(スヴェンソン)組を3−1で下した。

 5度の全日本優勝を誇るペアを下した勢いで、決勝戦でさらに波に乗る。第1ゲームを11−7で取ると、第2ゲームは8−10で相手にゲームポイントを許してしまう。それでも丹羽が「1ゲームをとっているので、2ゲーム目は取られてもいい」と慌てなかった。連続ポイントをあげて追いつくと、最後は丹羽がスマッシュを叩き込み、このゲームを13−11で制した。これで流れを完全に掴んだ松平健、丹羽ペアは、第3ゲームも11−7でモノにして、ストレート勝ちを収めた。松平健は2年ぶりの優勝に「去年は準決勝で負けたので、より一層勝ちたい気持ちがあった」という。松平健と丹羽はシングルスでも勝ち残っており、明日は2冠を目指す。
(写真:男子ダブルスを制した丹羽<左>と松平健)

 また男子シングルスは5、6回戦が行われ、水谷、岸川、丹羽のロンドン五輪代表トリオは順当に8強入り。その一方で昨年度覇者・吉村真晴(愛知工業大)が平野友樹(明治大)に敗れる波乱も起こった。女子ダブルス5回戦は4連覇を目指す藤井寛、若宮三紗子(日本生命)組が準々決勝進出を決めた。注目された小学生コンビの平野美宇(ミキハウスJSC山梨)、伊藤美誠(豊田町卓球スポーツ少年団)組は大学生ペアに敗れ、前日に続く快挙とはならなかった。全日本選手権は明日20日に男子シングルスと女子ダブルスの準々決勝から決勝を行い、6日間続いた熱戦に幕を閉じる。