(写真:ゴミ拾いを行う武蔵野サポーター)

(写真:ゴミ拾いを行う武蔵野サポーター)

 現在、東京に本拠地を置くサッカーJリーグのクラブは3クラブある。J1のFC東京、J2の東京ヴェルディ、FC町田ゼルビアだ。J3リーグの1つ下のカテゴリーにあたる日本フットボールリーグ(JFL)には東京武蔵野シティフットボールクラブが存在する。

 

 Jリーグ入りを目指す武蔵野は今回のゴールデンウィークにユニークな試みを行った。

 

 それが『侍☆ゴミ拾ウォーズ』と称した街のゴミ拾いイベントである。5月3日を「ゴミの日」と謳い、サッカー場の最寄り駅からスタジアムまでゴミを拾いながら歩くのだ。

 

 参加者は吉祥寺駅と三鷹駅の2つに分かれてスタートし、試合が行われる武蔵野陸上競技場を目指す。吉祥寺駅からは約3km、三鷹駅からは約2km。参加賞としてJFL第7節の武蔵野対FC今治戦の無料観戦チケットが配布される。

 

 私は吉祥寺駅周りのコースで参加した。駅には40人ほどの参加者が集まっていた。

 

 単純にゴミを拾うだけだと思っていたが、ゴミ拾い侍“時代組婆沙羅”-BASARA-というゴミを拾いながらパフォーマンスをする集団と一緒に行動をするのだという。これが実に面白かった。

 

(写真:ゴミ拾い侍”時代組婆沙羅”-BASARA-)

(写真:ゴミ拾い侍”時代組婆沙羅”-BASARA-)

 時代組婆沙羅は毎週日曜、侍の格好をしながら渋谷センター街のゴミ拾いをしている集団だ。今回、武蔵野のオファーを受け、ゴミ拾いのプロとしてこのイベントの牽引役を担った。

 

 彼らはゴミ拾いの要領を参加者に教えつつ、ゴミを見つけると「むむ、何やつ! 成敗!」とパフォーマンスをしながら街の清掃に励む。参加者を飽きさせない工夫がそこにはあった。ゴミ拾いに集中し過ぎて、下ばかり見ている参加者には「自転車が通ります」「歩行者が通ります」と注意喚起も促す。

 

 私も輪に交じりゴミを拾い、参加者の声に耳を傾けているうちに、“地域密着”というJリーグの理念が頭によぎった。参加者は老若男女問わず幅広い層が集まった。スタジアムへ向かう道すがら当然、軽い世間話が始まる。このイベントでは世代間のコミュニケーションを図ることもでき、かつ街の美化活動にも貢献できるのである。

 

 吉祥寺駅から出発しておよそ1時間半。ようやくスタジアムに着いた。街を綺麗にした達成感にひたりつつ、この後はサッカー観戦が待っている。試合は武蔵野が3-0でFC今治を下した。見事なショートカウンターが決まり、得点を重ねていく武蔵野。それを懸命に応援するスタンドのファン・サポーターの姿はとても温かく、美しい光景だった。

 

(写真:参加者全員で集合写真)

(写真:参加者全員で集合写真)

 東京武蔵野シティFCの活動は、美しい街を作り、地域の人々の交流を生む。<今後、東京武蔵野シティFCはごみ拾いなど社会的な活動も取り入れますます地域に根ざし、エリアNo.1のスポーツ団体として目標であるJリーグ参入へまい進して参ります>(公式HPより)。

 

 これがJクラブのあるべき姿ではなかろうか。

 

(文・写真/大木雄貴)