いよいよ、2月13日(日本時間)から欧州チャンピオンズリーグ(CL)2012−13が決勝トーナメント(以下T)に突入する。ノックアウト形式の決勝Tでは、一戦の緊張感がさらに高まる。ロンドンの“聖地”ウェンブリースタジアムで行われる決勝(5月25日)に駒を進め、ビッグイヤーを掲げるのはどのクラブか――。
 決勝T1回戦は、早くもビッグマッチが実現した。マンチェスター・ユナイテッド対レアル・マドリード、アーセナル対バイエルン・ミュンヘン、ACミラン対FCバルセロナ。いずれも決勝といっても過言ではない対戦カードだ。なかでも注目は日本代表MF香川真司が所属するマンU対レアルの一戦だ。

 変幻自在のマンU.VSシンプルなレアル

 マンUは今季、香川とFWファン・ペルシを補強に成功し、リーグ戦で首位を独走している。CLのグループステージ(GS)も4勝2敗で1位通過を果たした。特徴は変幻自在の攻撃だ。ポゼッションもできれば、速攻を仕掛けることもできる。ファン・ペルシはリーグ戦で得点ランクトップ(19点)を走り、コンビを組むルーニーも10ゴール4アシストと好調を維持。ここに香川がワンタッチプレーやキレのあるドリブルなどでアクセントを加える。

 強力な攻撃陣を擁する一方で、守りには不安を抱えている。リーグ戦の失点はで26節終了時点で31。昨季が33失点だったことを見れば、守備に問題があるのは明白だ。CLでもGS6試合で9失点を喫している。要因としてあげられるのがセンターラインの脆弱さだ。CBのリオ・ファーディナンドとネマニャ・ヴィディッチのコンビはスピードに衰えが見え、裏を取られると苦しい。ボランチに守備力の高い選手がいないことも悩みの種だ。現在のマンU守備陣が、GSで1位タイの15ゴールをあげているレアルの攻撃陣を抑え込むのは至難の業だろう。マンUとしては多少の失点を覚悟し、攻め勝つ攻撃的サッカーで打ち合いに持ち込みたい。

 対するレアルはリーグ戦では宿敵バルセロナに勝ち点16差をつけられて、優勝が厳しい状況に陥っている。ゆえに、11季ぶりの欧州タイトルは是が非でも手にしたい。レアルのスタイルは文字通りシンプル。前線から激しくプレッシャーをかけてボールを奪い、空いたスペースを突く。キーマンはマンUからレアルに巣立ったFWクリスティアーノ・ロナウドだ。カウンターサッカーを掲げるチームにおいて、彼の超高速ドリブルと高い決定力は必要不可欠だ。

 攻撃から一転して、ディフェンス面はマンU同様、安定していない。GSでの失点は決勝T進出の16チーム中最下位(9失点)だ。要因は最終ラインにケガ人が続出したことがあげられる。1月にはキャプテンのスペイン代表GKイケル・カシージャスが左手中手骨を骨折して長期離脱を余儀なくされた。クラブはすかさず今冬の移籍市場で経験豊富なGKディエゴ・ロペス(セビージャ)を獲得。だが、抜群のリーダーシップを誇る守護神の不在の影響は計り知れない。堅守あっての速攻だけに、早急な守備の整備が間に合うか。マンUの強力攻撃陣を抑えられなければ一気に試合を決められる可能性もある。

 通算対戦成績はマンUから見て2勝3敗3分け。直近の対戦は02−03シーズンの準々決勝。この時はマンUが2戦合計5−6で敗れ去った。果たして、“赤い悪魔”が雪辱を果たすのか。それとも“白い巨人”がねじ伏せるのか。攻撃力が高いチーム同士だけに、白熱の戦いが予想される。

 驚異的ポゼッションのバルサ、バランスとれたバイエルン

 毎シーズン、優勝候補にあげれらるバルセロナは、持ち前のポゼッションサッカーで2季ぶりの欧州制覇を狙う。GSの平均ボール支配率は驚異の71パーセントを記録した。スペイン代表MFアンドレ・イニエスタ、同MFシャビ・エルナンデスらが織りなすパスワークはもはや芸術の域に達している。

 中心選手はアルゼンチン代表MFリオネル・メッシ。リーグ戦では23試合で35ゴールを荒稼ぎしている。欧州CLでも得点ランク2位につけており、5季連続得点王は射程圏内だ。ボールをキープしてフィニッシャーのメッシにつなぐ。この得点パターンを防ぎきれる相手はそう見当たらない。守りもGSでは6試合で5失点と安定している。アウェーの第1戦で負けさえしなければ、6季連続のベスト8進出は堅いだろう。

 そのバルサの対抗馬がバイエルンだ。昨年は決勝に進んだものの、栄冠には手が届かなかった。12季ぶりの優勝を目指すチームは、攻撃陣にMFフランク・リベリ(フランス)、FWマリオ・マンジュキッチ(クロアチア)、トーマス・ミュラー(ドイツ)ら各国代表級のアタッカーを揃える。GSではレアルと並ぶ15ゴールをあげ、ボール支配率でもバルサに次ぐ61パーセントを記録した。今季は公式戦で無得点に終わった試合がないことも、攻撃力の高さを証明している。

 守りも主力のCBをケガで欠きながら、GS6試合を7失点。これも悪くないパフォーマンスといえるだろう。ただ、油断は禁物だ。相手はカウンターを得意とするアーセナルだけに、攻撃から守備に移行する際の切り替えを早くしたい。パスの出し所を潰して、波状攻撃につなげられるか。

 日本代表DF内田篤人が所属するシャルケは、ガラタサライと対戦する。互いにボールを支配しながらのサイド攻撃を志向している。実力的にシャルケ有利と見られていたが、ガラタサライはMFウェズレイ・スナイデル、FWディディエ・ドログバといった大物を相次いで補強し、実力は拮抗してきている。また、シャルケは11日に内田が右太もも肉離れを発症したことを発表し、第1戦の欠場が濃厚となった。攻守に貢献していた内田の離脱はチームにとって痛手だ。

 ただ、内田は前回、同患部を負傷した際は約1カ月で復帰しており、回復次第ではホーム開催の第2戦(3月12日)に出場できる可能性もある。シャルケとしては一昨季に成し遂げたベスト4以上の成績を残すために、何としてもアウェーから勝ち点を持ち帰りたい。

【決勝トーナメント1回戦1stレグ】

2月12日(火) 28:45キックオフ
セルティック(スコットランド) × ユベントス(イタリア)
バレンシア(スペイン) × パリ・サンジェルマン(フランス)

2月13日(水) 28:45キックオフ
レアル・マドリード(スペイン) × マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)
シャフタール(ウクライナ) × ドルトムント(ドイツ)

2月19日(火) 28:45キックオフ
アーセナル(イングランド) × バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)
ポルト(ポルトガル) × マラガ(スペイン)

2月20日(水) 28:45キックオフ
ACミラン(イタリア) × FCバルセロナ(スペイン)
ガラタサライ(トルコ) × シャルケ(ドイツ)

【決勝トーナメント1回戦2ndレグ】

3月5日(火) 28:45キックオフ
マンチェスター・ユナイテッド × レアル・マドリード
ドルトムント × シャフタール

3月6日(水) 28:45キックオフ
ユベントス × セルティック
パリ・サンジェルマン × バレンシア

3月12日(火) 28:45キックオフ
シャルケ × ガラタサライ
FCバルセロナ × ACミラン

3月13日(水) 28:45キックオフ
バイエルン・ミュンヘン × アーセナル
マラガ × ポルト