四国アイランドリーグplusは早くも前期終盤戦を迎えている。現在3位と優勝争いから一歩後退した香川オリーブガイナーズは残り8試合で勝率5割突破を目指す。今回の「野球西国巡り」は香川・江村将也投手コーチに話を聞いた。今季から指導者としての道を歩み始めた江村コーチ、選手とともに成長する新米コーチの本音に迫る。

 

 上を狙える好素材が揃う

 これまでNPBやBCリーグで選手としてやってきましたが、指導者の経験はこれが初めてです。最初は「自分にできるのだろうか」と不安に思う部分もありました。就任のきっかけは西田真二監督から直接、電話で誘われたことです。西田監督とはそれまで接点がなかったので、どういう経緯で自分に白羽の矢が立ったのか、今も不明なんですよ(笑)。シーズンが終わったらその理由と、1年生コーチとしてどうだったか、その評価も含めて聞いてみようと思っています。

 

 コーチとして香川の投手陣と接していて思うのは、将来性のある楽しみな選手がたくさんいることです。こっちの言うことも素直に聞くし、さらに何でも聞いてくるんです。そういう向上心のある選手は伸びるでしょうね。選手とは年齢も近く(この7月で30歳)、コミュニケーションもとれているのでやりやすい環境です。

 

 エースとして期待する原田宥希はここまで3勝をあげています。3年目を迎える彼にはブルペンを引っ張ってほしくて投手キャプテンという役を任せました。「投手陣の軸になってほしい」という期待よりも「軸にならないとダメだ」と、プレッシャーをかける意味もありました。その重圧の中、よくやってくれていると思います。

 

 1年目の投手では箱島章矢、秀伍が勝ち星をあげています。秀伍は社会人時代に外野手になりましたが、香川に来て投手に再挑戦しているんですよ。堂々としたマウンドさばきで7年間のブランクを感じさせないあたりに素質を感じています。彼ら以外にも藤原龍海、三木田龍元などの若手投手には後期、そして来シーズン以降の活躍を期待しています。

 

 ゼニの取れるキャッチボールを目指せ

 コーチとして投手陣に徹底しているのは、3球で1ボール2ストライクとカウントを整えられるようにしろということです。3球でそのカウントに追い込めば、あとは低めに投げて投手有利でゲームを進めることができますからね。まあ試合では状況によって変わってきますが、ブルペンではそれを常に意識させています。練習でできないことは試合ではできませんから。

 

 あとは基本であるキャッチボールの見直しです。私も東京ヤクルト時代にNPBの様々な選手を見ましたが、特にいい選手になるほど、キャッチボールが丁寧なんです。あれだけでお金が取れるんじゃないかな、というくらいにきれいな回転のボールが相手の胸元にピシーッと行くんですよ。

 

 それにキャッチボールはウォームアップの役割だけではなく、ルーティンとして確立することで自分の状態を把握することにもつながります。キャッチボールをしながら自分の体と対話をして違和感がないかチェックすれば、マウンドに上がるまでにいくらでも修正ができます。ファンのみなさんはこれから香川の試合を見に来たら、キャッチボールに注目してください。

 

 私はアマチュア、プロを通して多くの指導者に恵まれました。その方々のおかげで今の自分があると思っていますが、強いて1人、名前をあげるとすればヤクルト時代の伊藤(智仁)コーチですね。伊藤さんは自身も現役時代、ケガに苦しんでいたので、ヤクルト時代に負傷続きだった僕のことを気に掛けてくれました。ケガをすると投手は「早く復帰しなきゃ」「取り戻すために投げ込みしなきゃ」と、投げ過ぎじゃないかというくらい投げてしまうんですよ。僕もそうでしたが、そのときに伊藤コーチが「無駄に投げるな」と結構、強く言ってくれたんです。
 復活するためには「投げなきゃ」と思い込んでいたんですが、伊藤コーチのその言葉で目からウロコが落ち、焦りがなくなりました。いつか自分もそういう風に選手を気付かせることのできるコーチになれたらいいなと思っています。

 

 若い選手を見ていて「なんでできないんだ」と思うこともありますが、それは全部コーチである自分の責任だと考えています。1年生コーチとして大変ではありますが、非常にやり甲斐があり充実した毎日を送っています。選手とともに成長中ですね。

 

 香川に1勝でも多く貢献できる投手を育てて、そして1人でも多くNPBに送り出したい。これからも香川オリーブガイナーズの応援をよろしくお願いします。

 

<江村将也(えむら・まさや)プロフィール>:香川オリーブガイナーズ投手コーチ
1987年7月5日、広島県出身。佐野日大高校から日本大学に進み、卒業後は社会人野球のワイテックに所属した。2012年、第83回都市対抗野球大会に伯和ビクトリーズの補強選手として出場。初戦で8回途中から登板し無失点に抑えるなどチームのベスト8進出に貢献した。同年秋、東京ヤクルトからドラフト4位指名を受けてプロ入り。サウスポーの中継ぎ、リリーフとして1年目から起用された。その後、ヒジを故障して15年に戦力外通告を受けてヤクルトを退団。BCリーグ福島ホープスに入団し、チーム最多の9勝をマークした。同年、NPBトライアウトを受験後に現役引退。17年から香川オリーブガイナーズの投手コーチを務める。NPB実働2年間で通算3勝1敗7ホールド。実弟は千葉ロッテマリーンズの捕手、江村直也。

 

(このコーナーでは四国アイランドリーグplus各球団の監督・コーチが順番にチームの現状、期待の選手などを紹介します)


◎バックナンバーはこちらから