第257回 徳島・養父鐵監督&鈴木康友コーチ「狙いどおりの前期優勝」

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 4月に開幕した四国アイランドリーグplusは5月末に前期を終了した。前期優勝は徳島インディゴソックス。2位の高知ファイティングドッグスに4ゲームをつけて、3年ぶりの前期優勝を果たした。今シーズンは養父鐵監督、鈴木康友コーチが新たに就任した新体制の下での戦いとなった。チームを率いた養父監督、鈴木コーチそれぞれに前期優勝の喜びと後期にかける意気込みを聞いた。

 

 より体力面の強化を/養父監督

 2月に初めて選手たちと接したときには、チーム作りをどうするのか、どんな風に戦っていくのかなど、私も監督業が初めてだったので不安もありました。そんな中、優勝を果たせたのは(鈴木)康友コーチ、(駒居)鉄平コーチに支えられたことが大きいと思っています。私が主に投手を見て、野手はコーチふたりが見るという分業制にできて負担も減りました。また両コーチともに走塁や打撃などそれぞれの持ち場で力を発揮してくれました。

 

 投手陣では松本憲明(5勝3敗)、伊藤翔(4勝2敗)、伊藤克(3勝1敗)、橋本隼(2勝1敗)、相澤健勝(1勝)らが頑張ってくれました。それにハ・ジェフンは抑え投手として6セーブ、野手では4本塁打と今季も二刀流で結果を残しました。あとミャンマー出身のゾーゾー・ウーが2勝をあげるなど、選手たちがシーズンを戦いながら成長したのをすごく感じました。

 

 監督として気を配ったのは外国人選手とのコミュニケーションでした。私は台湾や中南米のチームにいたこともあるので、言葉の問題はなく、積極的に彼らと話して、意見を聞いたりアドバイスをしました。就任当時は「異色の経歴」と言われてましたが、その経歴が役に立ちましたね。

 

 私は会社経営もしているので監督と社長業というのは似ている点が多いなと感じ、ビジネスの経験も役立てることができました。特に目標に向けて戦略を立てて人員を配置する、これは野球もビジネスもまるで同じでした。そういう意味では新米監督の私に「自分流」でやらせてくれたチームやコーチには本当に感謝しています。

 

 後期に向けては体力面をもっと強化していきたいですね。打者も投手もやはり強い打球を打つ、速い球を投げるには体力が必要です。後期までのインターバルはグラウンドの練習よりもウエイトトレーニングを主体にしようと思っています。うちの球団は他の3球団と比べると練習環境などの面で少し落ちるんですよ。選手たちはそういう環境で頑張って、そして前期優勝という結果を残した。これは自信になったと思うし、それでさらに成長してくれるでしょう。後期も応援よろしくお願いします。

 

 多国籍軍ながら団結力は一番/鈴木コーチ

 多国籍軍のうちのチームをまとめられたのは養父監督のおかげですよ。言葉は英語、中国語、スペイン語が堪能だから問題ないし、何よりも前向きで陽気なんですよ。だから選手たちもすごくやりやすかったんじゃないですかね。失敗を恐れず思い切りプレーして、それが前期優勝という結果につながったんでしょう。

 

 開幕前に私は「前期は絶対に優勝しましょう」と監督に言ったんですよ。前期優勝すればチャンピオンシップ出場権は確保できます。そうすれば後期は相手を見ながら戦うことができる。新しい選手を試すことも可能です。それに外国人選手は後期もいるとは限らないので、戦力としては前期の方が充実してるから、ここで勝っておかないと厳しいシーズンになる、と。

 

 そして選手には「うちは団結力は一番。お前たちは絶対に勝てる!」と常に暗示にかけていました。メンタルがブレたり弱気になったら勝負には勝てませんから、とりあえずハッパをかけたんです。

 

 とは言ったものの優勝を狙うには投手陣が不安でした。松本と伊藤翔が先発で頑張ってくれて、あとは中継ぎ陣がうちにとっての命綱でした。勝っている試合はもちろん、負け試合でも反撃の機会をうかがうために伊藤克や相澤を投入したりもしました。

 

 選手にはいつも「(失点は)5点までオッケーだ」と言ってたんですよ。失点しても中継ぎが食い止めて、その間に打線に火が付いて逆転。それがうちの勝ちパターンでしたから。だからほとんど送りバントはしませんでしたね。簡単に1アウトを献上するのもしゃくですし、ゲッツーの危険性はあっても積極的に打った方がビッグイニングを作れる可能性もある。そういう野球をしているうちに選手たちも自分たちで考えて、ケースバッティングをするようになりました。

 

 打者では三國(和磨)が使われながら成長しましたね。打率3割2分3厘は主軸として文句なしの成績です。それと小林(義弘)はうちには貴重な右打者なんですが、3割1分8厘と結果を残しました。

 

 後期はもちろん優勝を目指しますが、他球団の動向を見ながらの勝負になります。巻き返しに必死になる3球団がもつれれば、うちにとっては願ってもない展開ですね。チャンピオンシップの前に疲弊してくれれば、そこでもうちが有利になりますから。

 

 でもうちも簡単には負けないと思います。先日、中国のチームと交流戦をしましたが、そこで新人投手も交えた継投で無四球で勝ったんですよ。これは結構、大きいなと思っています。ヒットを打たれるのはいいんですよ。打たれても3割、4割ですから。ただ四球やエラーは連続することがあるので、これをなくすことが勝利につながります。

 

 前期は「5点まではいい」と言ってましたが、後期はそれを4点、3点、2点と失点を減らしていきたいですね。そのためには四球やエラーをなくすことが大切です。

 

 独立リーグは選手にとってはもちろんですが、指導者にも厳しい環境です。「こんな環境で……」なんて思っていたらチームを率いることはできませんよ。養父監督も私もNPBも知っていますし独立リーグの経験もあります。私は欽ちゃん球団(茨城ゴールデンゴールズ)のコーチもしたので「こういう環境もある」と理解できています。そういう意味で監督と私はいいコンビですね。これからも応援よろしくお願いします。


養父鐵(ようふ・てつ)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
 1973年6月26日、神奈川県出身。逗子リトルリーグで7歳から野球を始める。高校は帝京第三高(山梨)に進学し、山梨選抜チームとして渡米。アメリカでは大学生を相手に7イニング14奪三振を記録した。その後、亜細亜大、日産自動車に進み、01年に台湾・兄弟エレファンツ(現・中信兄弟)と契約。月間MVP3回、台湾シリーズMVP獲得と活躍し、02年にドラフト6位で福岡ダイエーホークスに入団した。一軍登板はなく03年に渡米し、シカゴ・ホワイトソックス3Aと契約。その後はベネズエラ、メキシコ、アメリカの独立リーグでプレーし、06年台湾・兄弟に復帰。07年の現役引退後、10年に野球スクール「ルーツベースボールアカデミー」(神奈川県藤沢市)を開業。15年、台湾・中信兄弟の投手コーチ、2軍ヘッドコーチを務める。16年12月、徳島インディゴソックスの監督に就任した。


鈴木康友(すずき・やすとも)プロフィール>:徳島インディゴソックス野手コーチ
1959年7月6日、奈良県出身。天理高から77年にドラフト5位で巨人に指名され、翌年入団。その後、西武、中日に移籍し、90年シーズン途中に再び西武へ。主に守備固めとして活躍し、92年に引退。その後、西武、巨人、オリックスのコーチに就任。05年より茨城ゴールデンゴールズでコーチ、07年よりBCリーグ・富山サンダーバーズ初代監督に就任した。10年~11年は埼玉西武、12年~13年は東北楽天、14年~16年は福岡ソフトバンクでコーチを務める。17年から徳島インディゴソックスの野手コーチに就任した。

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