交流戦はセ・リーグ球団にとって「鬼門」と毎年言われています。パ・リーグにはグイグイと力で押してくるパワー型のピッチャーが多く、これにセ・リーグの打者が苦労しているように見受けられます。それも「鬼門」の一因でしょう。セ・リーグ首位チームの失速は14年の広島、15年の横浜DeNAが思い出されます。ともに首位で交流戦を迎えながら広島は9勝15敗、DeNAは3勝14敗1分と負け越し。広島はシーズン3位に終わり、DeNAは最下位に沈みました。


 ただ今季はパ・リーグの強豪チーム、北海道日本ハム、福岡ソフトバンクがともにケガ人を抱えて必ずしもベストメンバーとは言えない状態です。セ、パの勢力図は例年とは異なったものになりそうですね。

 

 それでもセ・リーグ首位の阪神にとって、この交流戦が前半戦のひとつの山になるのは間違いありません。阪神で気になるのは選手たちの疲れです。どのチームも開幕して最初の疲労のピークを迎える時期ですが、阪神は首位ということで例年よりも疲労度が高い。5月の頭から首位の重圧の下で戦ってきた分、想像以上に体は疲れています。もう交流戦まで1週間もありませんが、ベテランの糸井(嘉男)をどこかで休ませるなどの策も必要です。

 

 阪神は日替わりDHか

 DHに誰を起用するのかも注目ポイントです。金本知憲監督はDHを固定せずに、それこそ試合毎に変えてくると思われます。原口(文仁)や中谷(将大)と強打の若手を据えることもあれば、助っ人の(エリック・)キャンベルも考えられます。福留(孝介)もDHで起用すれば守備の負担が減るので、シーズンを戦う上でもプラスになるでしょう。選手の調子を見極める金本監督の目利きと手腕に注目したいですね。

 

 好調の阪神ではこの選手に触れておきましょう。先発ローテの一角を担う秋山(拓己)です。彼は今季8年目を迎えますが、ようやく1軍で勝てるピッチャーになりました。巨人戦でもエースの菅野(智之)を相手に堂々と渡り合い、テンポのいいピッチングは見ていて気持ちいいですね。

 

 彼がここまで伸び悩んでいたのはメンタル面の弱さが原因でした。いいボールを持っていましたが、フォームばかりを気にしてどちらかというと神経質なタイプ。それが「今年は気持ちの面で変われた」と本人が言うようにピッチングスタイルも変わりましたね。今までも秋山は追い込むまでは抜群のピッチャーだったんです。ただそこからキレイに打ち取ろうとして痛打を浴びるパターンでした。それが今季はなくなって、あとはストレートで空振りがとれるようになったのも大きいですね。

 

 オープン戦で結果を出して、そして順調に勝ち星(3勝)も重ねています。すべてが好循環でさらに自信もつけているようです。安定感もあるし、今のところは申し分ないですね。問題は次の段階になったときにどうなるか、です。これからシーズンが進むと疲労が蓄積して調子が悪いときも出てきます。そういうときにいかに粘れるか、そこで真価が問われますね。だから秋山にとっては交流戦から6月、7月までが正念場です。そこをうまく乗り越えられればふた桁勝利も見えてくるでしょう。

 

 こういう話をすると気の早いファンの方は「阪神のエースや!」って騒ぎますけど、まあもう少し見守りましょう(笑)。秋山は今のローテ4~5番手というポジションで、じっくりと経験を積むのがベストです。きちんと育てれば非常に楽しみな存在なのは間違いありません。

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商、近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日、エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)、ロサンジェルス・ドジャース、メキシコシティ(メキシカンリーグ)、エルマイラ・パイオニアーズ、オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。


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