韓国開催のU-20W杯に臨んだ日本代表はD組3位で決勝トーナメントに進出し、1回戦でB組1位のベネズエラ代表と対戦。延長戦の末に0-1で涙をのみ、2003年UAE大会以来となるベスト8進出はならなかった。

 

 次なる注目は、この世代で臨む2020年東京五輪代表の監督選考だ。チームは来年1月の立ち上げを予定していることから、年内までには決める必要がある。有力候補として報道に名前が挙がっているのが、ガンバ大阪の長谷川健太監督とリオ五輪代表監督を務めたハリルジャパンの手倉森誠コーチだ。

 

 2人の名前から監督の条件として見えてくるのは、まずもって自国開催の東京五輪で「勝つ」こと。

 

 そのためには堅い守備から縦に速くゴールに向かっていくハリルジャパンのスタイルに近い形を、模索していることがうかがえる。長谷川監督も手倉森コーチとも、勝つ確率を上げていく現実主義のサッカーを志向しており、その方向性と合致する。

 

 その意味において長谷川監督はJ1で申し分ない実績を残している。2014年シーズンはJリーグ、ヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)、天皇杯の3冠を達成し、翌シーズンには天皇杯2連覇を果たしている。

 

 またガンバはこの東京五輪世代に堂安律を筆頭に、初瀬亮、市丸瑞希、高木彰人と多くのタレントを抱えているというのも一つのポイントだ。

 

 一方で手倉森コーチはベガルタ仙台監督時代、2012年シーズンにチームを2位に引き上げ、その手腕を買われてU-21代表監督に就任。2016年1月、AFC U-23選手権で優勝を果たし、リオ五輪の切符をつかんだ。本大会では決勝トーナメント進出を果たせなかったものの、日本サッカー協会(JFA)の技術委員会からは高い評価を得た。

 

 A代表コーチに戻ってからはヴァイッド・ハリルホジッチ監督の右腕としてチームの強化に欠かせない存在となっている。「五輪経験者」「A代表強化とのリンク」から手倉森コーチを推す声があるのも頷ける。

 

 しかしながら、年内いっぱいのリミットを考えても、選考を急ぐ必要はまったくない。

 

 今回のU-20W杯はベスト16止まりとはいえ、グループリーグではイタリアに2点ビハインドから追いつき、決勝トーナメントで強豪ベネズエラを苦しめた。チームを率いた内山篤監督は7月のU-23アジア選手権予選を終えて退任する方向という報道も出ているが、まずは今大会の検証が先だ。

 

 JFAとしては、日本人監督を据える方針に変わりはないようだ。長谷川監督、手倉森コーチのみならず、広く候補者を挙げたほうがいい。今季はJリーグで下位に低迷しているが、実績で言うなら3度のリーグ優勝経験を持つサンフレッチェ広島の森保一監督もいる。また、若いフレッシュな人材なら元日本代表主将で現在ガンバ大阪U-23の指揮を執る宮本恒靖監督という手もあるだろう。もちろん昨年10月、U-19アジア選手権を初めて制した内山監督も候補になる。

 

 そしてもう一人候補に挙げるとすればロンドン五輪で日本を4位に導いた関塚隆氏だろうか。守備を固めて1トップの永井謙佑を走らせる、まさに対世界仕様であのスペインを破ったという実績があるのだから。

 

 東京五輪は、勝つための大会。

 予選が免除されるため、遠征や強化合宿をいかに濃くやれるかどうかがカギを握る。ならば、五輪代表チーム専任でGM的な役割を担う人が加わっても良いのではないかと思う。

 

 個人的なイメージとしてはW杯を2度戦った経験を持つJFAの岡田武史副会長だ。現場にアドバイスもできるし、要望を聞いて協会内部やJリーグとの折衝もできる。

 

 いずれにしても“オールジャパン”で臨まなければならない。監督選考も大事だが、東京五輪までどうロードマップを描くかも重要である。


◎バックナンバーはこちらから