1706ch1二宮清純: 東京オリンピック・パラリンピックは合わせて1カ月ほどで終わりますが、会場などの施設はそこからも持続して使われるものでないといけません。

丸川珠代: もちろんです。スタジアムを地域の中核にして、地域の活性化を図っていこうと議論もしています。例えばプロ野球やサッカーのJリーグなどプロスポーツの拠点となっているところはいいのですが、そうではないスタジアムやアリーナは国体などの大会の時だけは集客できるけれど、それ以外の時は閑散としているというのではもったいないですから。そこで、例えば市民スポーツ大会、コンサート、物産展の開催など、日頃から人が集まるような仕掛けを皆でつくって、そこが地域交流の拠点となるようにしたいと考えており、そのような地域ぐるみの取組を、政府としても応援していくことにしています。また、今年3月に文部科学省で策定された第2期スポーツ基本計画に盛り込まれた日本版NCAA(全米大学体育協会)構想の具体化が進むことにより、大学スポーツがもっと地域の活性化に活かされていくことも期待しています。

 

二宮: 東京開催ということで一極集中化を危惧する声もあります。その点はオールジャパン体制を敷いて、地域の活性化に結び付けたいとお考えでしょうか?

丸川: そうですね。オリンピック・パラリンピックでつくった施設を使い続けていただくためにどうするか、自治体がどう使いたいかということを聞きながら、一緒に話を進めているところです。オリンピック・パラリンピックに向けて、"更なる地域の発展を"という自治体は、この機会に施設をよりバージョンアップしてくださったりしています。

 

二宮: 世界のトレンドとしてはオリンピック・パラリンピック全体の開催費用をかけない方向に進んでいます。一方で施設を新設する場合は、ちゃんと未来にも役立つものとして整備しなければいけません。これからはヨーロッパのスタジアムのように、競技をするだけではなく医療施設、介護施設、保育園、スーパーマーケットもあるというワンストップとオールインワン型が求められます。日本の場合、病院は病院、保育園は保育園、スーパーマーケットはスーパーマーケットと分かれています。少子高齢化が進む中で、1カ所でないと逆に不便だと思うのですが、いかがでしょう?

丸川: 街づくりと一体となってスタジアムを考えることは今までにはなかった発想だと思います。せっかく2020年東京オリンピック・パラリンピック開催というきっかけがあるので、モデルになる地域をつくれたら素晴らしい。

 

二宮: 新設のスタジアムは地域活性化の拠点となることも大事ですが、それと同時にその施設がユニバーサルデザインであることも重要なことです。

丸川: はい。できる限り、我々も進めていきたいと思っております。少なくとも新国立競技場は世界最高水準になるように設計しました。

 

伊藤数子: あるスポーツの大会でこんなことがありました。車椅子の人と一緒に来場した人が複数名いたんですが、そこに会場の係の人がやってきて「車椅子の人の横に付けるのは介助者1名です。残り3名はあちらに行ってください」と言われたんです。

丸川: ボランティア育成も整備して、そういったことは是非なくしたいと思っています。スタジアムの仕様もできる限り、水準の高いユニバーサルデザインとなるよう努力をしてもらっています。少なくともオリンピック・パラリンピックの会場は、Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインに従って、車椅子の席の数なども考えてつくることになるでしょう。しかし、オリンピック・パラリンピックの競技会場以外のスポーツ施設については、我々は「こういう設計が理想です」ということは申し上げることはできても、すべてを強制するところまではできません。とはいえ、競技会場とならないスポーツ施設の所有者の方々にも、ぜひ、施設を新設、改修する際には、このガイドラインも参考にしながら、ユニバーサルデザインに配慮した環境整備を進めていただきたいですね。やはりソフト面、ハード面の両方が揃ってこそ、本当のバリアフリー、共生社会の実現につながると思います。

 

※2017年4月24日、インタビュー実施

 

(第3回につづく)

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1706chPF丸川珠代(まるかわ・たまよ)プロフィール>

1971年1月19日、兵庫県生まれ。東京大学経済学部を卒業後、テレビ朝日に入社。2007年7月に参議院議員初当選を果たす。以降、厚生労働大臣政務官、参議院厚生労働委員会委員長、環境大臣・内閣府特命大臣(原子力防災担当)などを務めた。昨年8月に東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当国務大臣に就任。現在、東京オリンピック・パラリンピックに向けた環境整備などに尽力している。


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