22日、第85回選抜高校野球大会が開幕する。今大会は「東北絆枠」が設けられ、例年より4校多い36校が出場。最大の注目は史上初の3季連続優勝を狙う大阪桐蔭。そして、その大阪桐蔭を破るのはどのチームか。紫紺の優勝旗を目指して13日間にわたった熱戦が聖地・甲子園で繰り広げられる。
 昨年は好投手・藤浪晋太郎(阪神)を擁し、春夏連続制覇を成し遂げた大阪桐蔭。その連覇に貢献した正捕手の森友哉(3年)、昨年の甲子園で3本の本塁打を放った笠松悠哉(3年)を中心とした打線は昨秋、11試合で109得点を叩き出した。チーム力は昨年にもひけをとらず、今大会も優勝候補の筆頭に挙げられている。

 だが、その大阪桐蔭にアクシデントが起こった。8日の練習試合で、昨秋の公式戦で打率5割1分1厘と高打率をマーク、森、笠松と共に主軸を担う近田拓矢(3年)が死球を受け、右手首を骨折。登録メンバーから外される事態となった。実は昨春も大阪桐蔭はアクシデントに見舞われている。初戦の花巻東(岩手)戦で4番・田端良基(亜細亜大)が死球を受けて骨折し、2回戦以降は欠場を余儀なくされたのだ。それでも選手層のあつさと、4番不在によってさらに生まれた結束力で優勝している。それだけに、今大会も優勝候補のひとつとして外すことはできない。昨秋から各選手が2つのポジションを守る練習もしており、急なアクシデントにも対応できる能力はある。

 また、出場36校中、最後の登場という日程も、大阪桐蔭に味方している。昨秋の近畿大会からエースナンバーをつける葛川知哉(3年)が年明け早々に右足の小指を骨折し、手術した。ようやくブルペンに戻ってきたのは、2月末。3月の練習試合で実戦復帰を果たしているものの、調整が遅れていることは否めない。それだけに遅い日程は大阪桐蔭にとってはプラスとなったに違いない。それでも勝ち進んでいくには、葛川に頼り切ることはできず、2番手、3番手の台頭が必要だ。球威があり、新チーム結成当時はエースナンバーを背負った高西涼太(3年)や、昨年のセンバツでベンチ入りしていたサウスポー網本光佑(3年)との継投策が3連覇のカギを握りそうだ。

 昨秋の明治神宮大会覇者の仙台育英(宮城)は、圧倒的な攻撃力が魅力のチームだ。協力打線の主砲を務める上林誠知(3年)は、今秋のドラフト候補に挙がるほどの逸材。神宮大会準決勝の北照(北海道)戦では、満塁本塁打を放ち、チームを勝利に導いた。果たして、甲子園でその実力を発揮できるか。

 大会屈指の好投手、済美(愛媛)の2年生エース安楽智大は、最速152キロを誇る剛腕。スライダーのキレも抜群で、3月の練習試合で試したチェンジアップも実戦レベルにまで仕上がっている。初戦では優勝候補の一角を担う広陵(広島)相手に、甲子園という舞台でいかに本来のピッチングができるか。一方で安楽は打線でも主軸を担う。その打線は、昨秋の公式戦のチーム打率が36校中32位の2割6分7厘。冬場のトレーニングでどれだけレベルアップしているかが勝利のカギを握りそうだ。

 近畿大会準優勝の報徳学園(兵庫)は、準決勝で大阪桐蔭相手に8−0の7回コールド勝ちを収めた。決勝も京都翔英に敗れはしたものの、延長13回までもつれこんだ接戦を演じた。チームの大黒柱はプロも注目のエース乾陽平(3年)。準決勝の大阪桐蔭戦では内角を突く強気なピッチングで1安打完封と見事なピッチングを見せた。最速146キロの直球に、スライダー、カーブを織り交ぜた緩急のついたピッチングが身上の乾。新チーム発足以来、29試合に登板し、防御率1.06という驚異的な数字を残している。02年以来のセンバツ優勝に導くことができるか。

 85回を迎え、記念大会となった今大会は、果たしてどんなドラマが待ち受けているのか。22日、熱戦の火ぶたが切って落とされる。