(写真:就任3年目の秋元監督。開幕戦は多くの選手をつぎ込んだ)

(写真:就任3年目の秋元監督。前半戦に多くの選手を起用した)

 日本女子ソフトボールリーグ1部で戦う伊予銀行VERTZは、前半戦(第5節)終了時点で4勝7敗の8位タイにつけている。一昨季は2勝9敗、昨季は3勝8敗。星数は年々増えている。とはいえ2部降格、入れ替え戦の対象となる11位とはわずかな差しかない。3カ月の中断期間が明ければ後半戦(9月2日~)が開幕する。

 

 

 

「負けた試合でも勝ちゲームはありました。そこを1つ2つと取れていれば……」

 秋元理紗監督は前半戦を振り返る。指揮官の言う「勝ちゲーム」とは第2節の戸田中央総合病院Medics戦、第4節のシオノギ製薬ポポンギャルズ戦、Honda Reverta戦を指している。

 

 開幕2連勝から2連敗。勝率5割で迎えた戸田中央総合病院との試合は1-2で惜敗した。連敗を4でストップした後、シオノギ製薬に0-1で完封負け。続くHondaとのゲームは7-10と打ち合いの末敗れた。戸田中央総合病院戦、シオノギ製薬戦は、好投する先発の内海花菜を援護できなかった。一方でHonda戦は投手陣が踏ん張れず、2ケタ失点。あと少し投打がかみ合っていれば、結果は違っていたと思わせる内容だった。

 

 かといって明るい材料がないわけではない。今季が始まる前、エースの木村久美、キャプテンの山﨑あずさらが引退し、戦力ダウンは必至だと思われていた。例年以上に苦戦を強いられる可能性だってあった。それでもここまでは4勝7敗と踏ん張っている。「軸になる選手がいなくなったらなったで、新しく選手が出てくるものなんだなと感じました」と秋元監督。危機感が成長を促したかたちだ。

 

 投手陣は内海、庄司奈々、大西里帆子、山口清楓、原田悠の5枚で11試合を乗り切った。「絶対的エースがいない中で、基本的には5人全員がいつでも使えるようにつくっておきたいと考えていました」と秋元監督は語る。後半戦を見据えながらの用兵。移籍組の山口、新人の原田には経験、場数を踏ませる狙いもあった。

 

 中でも内海は防御率0.80とリーグ3位の好成績を残している。上を見てもトヨタ自動車レッドテリアーズのモニカ・アボット(0.57)、ビックカメラ高崎Bee Queenの上野由岐子(0.67)だけ。日米を代表するエースに次ぐ数字である。昨季はゼロだった勝ち星も既に2個挙げている。

 

 入社4年目のサウスポーに対して、秋元監督は「投手の柱としてやってもらいたい」と期待も大きい。今季は右打者に対しても苦手意識を感じさせない。規定投球回数に達している投手では唯一の被本塁打ゼロである。「勝負するところ、しないところのゲームプランを組み立てられるようになってきている」と秋元監督。経験を積んで投球が洗練されてきた。エースとして開花できるかは、後半戦の出来次第と言っていいだろう。

 

 打線に目を向けると、金澤美優と照喜名真李の2人が打率3割をマークしている。樋口菜美、對馬弥子、矢野輝美、正木朝貴は、打率が2割台でも3割を超える出塁率だ。

 

 チームトップの3割1分6厘の金澤は9番を任されている。「長打狙いにいきたいところも単打やフォアボールで繋いでくれている」と秋元監督。精神面での成長が見られるという。照喜名はルーキーイヤーの昨季は代走での起用がほとんどだった。今季は山﨑が抜け、片岡あいがケガでいない外野の穴を埋めている。秋元監督も「前半戦はいい仕事してくれたと思っています」と高く評価。前半戦最後の太陽誘電ソルフィーユ戦では2本のヒットで出塁し、先制と逆転のホームを踏んで勝利に貢献した。

 

(写真:今季からキャプテンを務める對馬。安定した守備で庄司の好投につなげた)

(写真:今季からキャプテンを務める對馬。安定した守備でもチームを引っ張る)

「キャプテンは對馬で良かった」。彼女を新リーダーに指名した秋元監督は胸を張る。入社3年目の對馬は若手選手とのコミュニケーションをうまく取れているという。對馬自身は「自分が引っ張るというよりもみんなに助けてもらいながら、みんなで一つのチームを作っていくような気持ちでやっています」と語っていた。「對馬を中心に矢野や加藤などがチームを支えている。バランスは良いと思います」。それは開幕戦でのベンチの雰囲気を見てもチームの一体感は見て取れた。そのチームワークは伊予銀行が誇れる武器のひとつである。

 

 後半戦に向けて、秋元監督はこう意気込む。

「常にミスがゼロという完璧な試合は難しい。でもその完璧を目指しながらやらないとミスはなくならない。ピッチャーをいかにして楽にしてあげるか。“何とかして助けてあげたい”と野手と投手の信頼関係というか気持ちの面での繋がりを出していきたいです」

 

 今季のチームスローガンは『繋』。前期の経験を後期の結果に繋げたい。9月2日、新潟県長岡市でのHonda戦を皮切りにリーグは再開する。9月からの2カ月間でリーグ戦11試合に加え、全日本総合女子選手権大会、国民体育大会をこなすタイトな日程が組まれている。苦難を乗り越え、秋には愛顔(えがお)で終わりたい。

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