プロも未体験ゾーンに突入 ~ザ・ロイヤルGC初のトーナメントが残したもの~
6月14~16日、JGTOチャレンジトーナメントがザ・ロイヤル ゴルフクラブ(GC)で開催された。同トーナメントは日本男子プロツアーの下部トーナメントで、出場するのはレギュラーツアーのシード権を持たないプロや主催者推薦を受けたアマなどだ。
初のプロトーナメント
今年、チャレンジトーナメントは計12戦が行われ、年間賞金ランキング1位の選手には翌年のレギュラーツアーシード権、2位以下の上位選手にも同前半戦シード権が与えられる。下部トーナメントとはいうもののこれから伸びていく若手、シード権を失いながらも復活をかけるベテランらが入り混じってのサバイバルな戦いは、レギュラーツアーに負けず劣らずの熱戦を生み出す。
そんなシード権獲得を目指すプロアマ144人のプレーヤーを待ち受けていたのが、全長8000ヤード超、"世界基準"を標榜するザ・ロイヤルGCだ。開催前、同コースを所有する日本カバヤ・オハヨーホールディングスの堀井秀則副代表は「ザ・ロイヤルGCで開催される初めてのプロトーナメント。プロ、そしてトップアマがどんな感想を持つのか、非常に楽しみですよ」と語っていた。
14日、トーナメント初日。1週間前に関東地方が梅雨入りしたこともあり、ザ・ロイヤルGCのある茨城県鉾田市周辺は未明まで激しい雨に見舞われていた。だが、第1組がスタートする午前7時30分には雨も止み、徐々に日が差してきた。フェアウェイ、グリーンともに時間が経過するにつれて乾き、コンディションはほぼベストだ。ただ1日中、気まぐれに吹いていた強風がプレーヤーを苦しめることとなった。
そんな中、初日午前中からリーダーボードのトップに立っていたのが杉原大河(生光学園・徳島)、18歳のアマチュア選手だ。杉原は5月のレギュラーツアー関西オープンにも出場してローアマチュア(ベストアマ)を獲得し、今回のチャレンジトーナメントは主催者推薦での出場となった。初日を3アンダーの2位タイで終えた杉原は、ザ・ロイヤルGCの感想をこう語った。
「強風の中で非常に難しいゴルフでした。コースの距離、そして風に惑わされないようにフェアウェイをキープできたのが良かったです」
18歳のアマチュアとは思えない落ち着いたプレーを見せた杉原は2日目、最終日も安定したショットで通算3オーバーの25位タイでチャレンジトーナメントを戦い終えた。難関のザ・ロイヤルGCでもローアマチュアに輝いている。
平常心と集中力
「ザ・ロイヤルGCのコースはシンプルに作りました。自然と調和した美しさを重視して、ふと見上げたときの空間が素晴らしいんです。ここで行われる初めてのプロトーナメント、みんな楽しんでくれたらいいいですね」
こう語ったのはザ・ロイヤルGCのコース監修を担当したプロゴルファー鈴木規夫だ。「楽しんでくれたら」のところでニヤリとした鈴木に、その真意を聞くと、こう答えた。
「距離の長いザ・ロイヤルGCでは飛距離は当然あった方がいい。でも、それだけじゃない。いつもの己のゴルフができるかどうかが重要。それさえできればザ・ロイヤルGCは非常に楽しいコースです。己の武器はなんなのかを常に考えて平常心でラウンドすればいい。でも距離のあるコース、そしてアンジュレーション(起伏)のあるフェアウェイ、大きく傾斜のついたグリーンを前に平常心を失うと、途端に難しくなる。ホールアウトまでいかに平常心を保ち集中できるか。それが問われるコースです」
初日、永松宏之が4アンダーの単独トップで終え、2日目はこの日、スコアを伸ばした大槻智春、額賀辰徳、鍋谷太一、堀川未来夢の4人が3アンダーでトップタイに並んだ。迎えた最終日、序盤の3ホールで額賀が3連続バーディを記録して単独トップへと躍り出た。
額賀は2006年のプロ転向当初から飛距離に定評のある"飛ばし屋"だ。これまで4度のドライビングディスタンス1位を獲得している。大会前から「ザ・ロイヤルGCに向いている」と目されていたが、後半に入って3オーバーと崩れて通算3アンダーの3位に終わった。
「前半、すごくいい感じで回れたのですが後半は大事な場面でのミスが出てしまいました……」と振り返った額賀。前半4バーディ1ボギーが一転して後半は1バーディ4ボギー。後半に入って「心が乱れた」額賀にザ・ロイヤルGCは強烈な洗礼を見舞った。
得意の距離で勝負
ザ・ロイヤルGC初開催のチャレンジトーナメントを制したのはこの日6バーディを記録してスコアを大きく伸ばした大槻だった。大槻、額賀ともに地元の茨城出身ということで、2人が入った最終組のラウンドにはレギュラーツアーのように大勢のギャラリーがついて回っていた。そのギャラリーを唸らせたのが、大槻の16番ホールの攻めだった。
16番ホールはザ・ロイヤルGC最長の705ヤードのパー5。ここで大槻は2打目、フェアウェイ中央からスプーンでグリーンエッジまで運んだ。「2打目は刻むかどうかで悩みましたが、自分の一番得意なサンドウェッジの距離を残そうと決めて、スプーンで思い切り打っていきました」と振り返った。残り40メートルの3打目を得意のサンドウェッジでピン右、残り1メートルにつけてバーディを奪った。これで一気に2位以下を突き放してトータル6アンダー、プロ初優勝を飾った。
表彰式の後、大槻に話を聞いた。
「私は隣の神州市の出身です。このコースは前身のオーシャンの時代にプレーしたことがありますが、まったく別物に生まれ変わったんですね。とにかく長い、そして手強かった。16番のようなロングもそうですが、4つあるショートホールも距離があるから簡単にはバーディがとれない。だから耐えて、我慢するゴルフが求められる。同じ組の額賀選手、前の組の堀川選手がスコアを伸ばしているのはわかりましたが、でもそれよりもコースとの戦いでした。初めての最終日最終組をこのコースで経験したのは非常にタフな体験でした。世界基準、日本最長の看板に偽りなしです」
なおこの日、ザ・ロイヤルGCのチャレンジトーナメントを制した大槻には、レギュラーツアー「長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップ」(7月6日~9日)への出場権が与えられた。
3日間にわたり、初めてのプロトーナメントを終えたザ・ロイヤルGC。最後にカバヤ・オハヨーグループ所属プロ、小田教久がこんなエピソードを披露してくれた。
「2日目を終えて、最終日の朝のことでした。クラブハウスで顔を合わせるみんなが"体がガタガタ、くたくただよ"と口にしていましたよ。レギュラーツアーに出ていたメンバーもいるから普通は2日間で体にガタがくるはずがない。それだけこのコースはタフということです。今回10位タイに入った藤卓也プロなんて"ラウンド中まるでクロスカントリー、トレーニングをしているみたいだったよ"とこぼしてました。ザ・ロイヤルGCはプロにも"厳しい"コースだと証明できたと思います」
ザ・ロイヤルGCは「ここから世界に通用するゴルファーを生み出したい」という理念を掲げている。チャレンジトーナメントで未体験ゾーンを経験したプレーヤーの今後の成長が楽しみである。鉾田の空は確実に世界へとつながっている。
(取材・文/SC編集部・西崎暢之 写真/ザ・ロイヤルGC、SC編集部 監修/二宮清純)