(写真:シーズン半ばにしてすでにヤンキース新人史上最多タイの29本塁打。ジャッジのパワーは驚異だ)

(写真:シーズン半ばにしてすでにヤンキース新人史上最多タイの29本塁打。ジャッジのパワーは驚異だ)

 2017年のMLBシーズンもまもなく前半戦を終了——。7月11日にはマイアミのマーリンズパークでオールスターゲームが行われる。多くのサプライズチーム、ニュースターが現れた上半期の中で、最も輝いたメジャーリーガーは誰だったのか。今回は前半戦の両リーグMVP、サイ・ヤング賞、新人王を独自に制定し、同時に後半戦の行方も占っていきたい。

 

 ALは本命1人 NLは混戦模様 ~MVP~

 

ア・リーグ アーロン・ジャッジ(ヤンキース/.331、29本塁打、65打点)

ナ・リーグ ポール・ゴールドシュミット(ダイアモンドバックス/.314、19本塁打、66打点)

 

 7月6日時点でア・リーグ2冠王。打率も7厘差の2位で、3冠を狙える位置につけている。ヤンキース待望のスター候補・ジャッジは今季のメジャーで最大のセンセーションになった。

 

 今ではジャッジが打席に立つたび、ヤンキースタジアムは大歓声に包まれる。身長201cm、体重128kgの堂々たる体躯から放つ豪快な打球を打撃練習から見せるため、ヤンキースはファンの開場時間を早めたほど。オールスターファン投票でもア・リーグ最多の得票を得たジャッジは、ニューヨークの新たな顔となっていきそうな予感を感じさせる。

 

 ジャッジを中心とした打線の破壊力もあって、シーズン序盤のヤンキースはハイペースで勝ち続けた。しかし、7月3日まで直近の20戦で14敗と失速し、宿敵レッドソックスに抜かれて2位に転落。今後、ジャッジはこれまで通りの打棒をキープし、チームを2015年以来のプレーオフ進出に押し上げられるかどうか。それを成し遂げれば、怪童は今シーズンが終わる頃までに全国区のスターになっているかもしれない。

 

(写真:やや地味ながら、ゴールドシュミットはリーグ最高級の好選手として確立した Photo By Gemini Keez)

(写真:やや地味ながら、ゴールドシュミットはリーグ最高級の好選手として確立した Photo By Gemini Keez)

 ナ・リーグでは、ゴールドシュミット以外にも、ロッキーズのノーラン・アレナド(.298、15本塁打、63打点)、ドジャースのコディ・ベリンジャー(.258、24本塁打、56打点)、ナショナルズのダニエル・マーフィー(.340、14本塁打、60打点)、ライアン・ジマーマン(.332、19本塁打、62打点)、ブライス・ハーパー(.323、20本塁打、64打点)といった選手たちがプレーオフ圏内にいるチームで活躍している。低迷中のレッズに所属しているという点で不利だが、ジョーイ・ボット(.316、24本塁打、62打点)の数字も超一流だ。

 

 ここではバランスの良い成績、一塁の守備力、チーム内での重要度を買ってゴールドシュミットを選んだ。しかし、他の候補との差は紙一重。誰が受賞するかはチーム成績によるところも大きくなりそうだ。

 

 ALはセール優勢  NLは二大エースの一騎打ち ~サイ・ヤング賞~

 

(写真:レッドソックスの好調はセールの働きなしにはあり得ない(写真はホワイトソックス所属時) Photo By Gemini Keez)

(写真:レッドソックスの好調はセールの働きなしにはあり得ない(写真はホワイトソックス所属時) Photo By Gemini Keez)

ア・リーグ クリス・セール(レッドソックス/11勝4敗、防御率2.75)

ナ・リーグ マックス・シャーザー(ナショナルズ/10勝5敗、防御率1.94)

 

 ボストン移籍1年目のセールは、ここまで期待通り、いや期待以上の数字を残してきた。勝敗、防御率だけでなく、奪三振率、相手打者のOPSも極めて高レベル。7イニング以上で2失点以下のゲームが9試合もあり、先発時の平均イニングも7回を超えていることのチームに対する好影響は計り知れない。

 

 本来であれば、メジャー最高勝率で快走するアストロズのエース、ダラス・カイケル(9勝0敗、防御率1.67)もサイ・ヤング賞候補筆頭になってしかるべきだった。しかし、今季2度目のDL入りを経験しており、シーズンを通じて多くのイニングを積み重ねるのは難しそうなのが残念だ。

 

 その他、カイケル離脱後のアストロズを支えるランス・マッカラーズ・ジュニア(7勝2敗、防御率3.05)、トレード期限の目玉となりそうなロイヤルズのジェイソン・バルガス(12勝3敗、防御率2.62)、16先発中15戦で6イニング以上を投げているタイガースのマイケル・フルマー(8勝6敗、防御率3.20)らも素晴らしいシーズンを過ごしている。

 

(写真:32歳で自己最高のシーズンを過ごすシャーザーは球宴先発の可能性も Photo By Gemini Keez)

(写真:32歳で自己最高のシーズンを過ごすシャーザーは球宴先発の可能性も Photo By Gemini Keez)

 ナ・リーグの方では、シャーザー、クレイトン・カーショウ(ドジャース/13勝2敗、防御率2.19)というメジャーを代表する2大エースの一騎打ちの様相が漂う。シャーザーはメジャートップの防御率、WHIPを残し、120回2/3で163奪三振と支配力を発揮。現役最高の投手と評判高いカーショウも例年通りにエリート級の成績を収めており、後半戦で逆転の可能性も十分。それぞれ地区首位にいる強豪チームのスーパーエースたちは、今後も超ハイレベルのサイ・ヤング賞争いを繰り広げそうだ。

 

 

 

 

 

 ALはほぼ当確 NLはベリンジャーの復調次第 ~新人王~

 

ア・リーグ ジャッジ

ナ・リーグ ベリンジャー

 

(写真:MVP&新人王候補のジャッジは地元でも派手に売り出されており、様々な雑誌で表紙を飾っている)

(写真:MVP&新人王候補のジャッジは地元でも派手に売り出されており、様々な雑誌で表紙を飾っている)

 ジャッジがMVP、新人王の同時受賞を果たすとすれば、1975年のフレッド・リン、2001年のイチロー以来3人目となる。インパクト、貢献度は他のルーキーを大きく引き離しており、ジャッジの新人王の受賞はすでに当確。ただ、オリオールズのトレイ・マンシーニ(.309、14本塁打、43打点)、レッドソックスのアンドリュー・ベニテンディ(.286、12本塁打、50打点)も例年であれば十分に受賞に価する優れた成績をマークしている。

 

 4月25日にメジャー昇格したベリンジャーは、2カ月後の6月25日までになんと24本塁打を放ってファンの度肝を抜いた。その間、ドジャースもハイペースで勝って首位を快走中。21歳の一塁手は、故障離脱中のエイドリアン・ゴンサレスの穴を埋めて余りある働きをみせている。

 

 もっとも、その大振りゆえに、ベリンジャーはいずれスランプにはまるか、相手チームが対処法を見つけるとの声も根強い。実際に6月26日以降、10試合連続で本塁打はなく、33打数5安打と停滞気味。ジャッジと並ぶ西のセンセーションが、後半戦では必要なアジャストメントを施せるかにも注目が集まる。

 

(数字はすべて7月6日のゲーム終了時点)

 

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。最新刊に『イチローがいた幸せ』(悟空出版)。
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