15日、ボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチが島津アリーナ京都で行われた。王者の山中慎介(帝拳)は挑戦者の同級1位ルイス・ネリ(メキシコ)に4回2分29秒TKO負けを喫し、13度目の防衛に失敗した。あと1つと迫っていた具志堅用高(元WBA世界ライトフライ級)が持つ日本人世界王者の連続防衛記録に並ぶことはできなかった。山中はプロ初黒星。通算戦績は30戦27勝(19KO)2分け1敗となった。

 

 原点の地・京都で舞ったタオル。山中はリング上で勝ち名乗りを挙げることはできなかった。“神の左”は不発。強打の挑戦者に為す術なく敗れた。

 

 日本人最多タイとなる世界王座13連続防衛を決める場所に選んだのは、ボクシング人生をスタートさせた京都だった。節目のV10もここ京都で掴み取っていた。13度目なる王者として臨む世界戦。指名挑戦者のネリが相手だ。ここまで23戦全勝(17KO)と勢いに乗る22歳のメキシカン。山中とはちょうどひとまわり下になる。

 

 序盤から好戦的なチャレンジャーに付き合うように山中は近い距離で試合を展開した。大振りではあるが、左右から強烈なパンチが飛んでくる。山中も退かずにパンチを当てていこうとした。ラウンドを追うごとに両者のパンチがヒットする回数が増えた。

 

 大きくグラつくような場面はなかったものの、山中は多くのパンチを浴びた。公開採点が発表される直前の4ラウンド。3ラウンド終了時点では挑戦者優位が予想された。そして、公開採点を誰もが聞くことはないまま試合は決まった。

 

 4ラウンド目も変わらず積極的に距離を詰めてくるネリ。勢いそのままに畳み掛ける。左、右とブローがチャンピオンを襲う。ラウンド残り50秒を切ったところで、強烈な左が山中の顔面を直撃した。被弾した山中はロープ際に追い込まれる。それでも倒れないのはチャンピオンの意地か。ロープを背にしながらも反撃のパンチを出す。クリンチに逃げることもあまりせず、打ち返しはするものの、殴られ続ける時間が増えた。

 

 このラウンド、残り約30秒――。耐え切れるか、逃げ切れるか。しかし、その答えはNOだった。橙色のタオルがチャンピオン陣営から投げ込まれた。レフェリーが2人の間に割って入り、大和心トレーナーはすぐに山中に駆け寄った。それは約6年守り抜いてきた緑のベルトを失うことを意味した。

 

 リング上で涙した山中。プロになって30戦目で初めて味わう黒星の味である。山中は距離感を最後までコントロールできなかった印象を受けた。攻め手を緩めなかった新チャンピオンの強さが勝ったのか。西の都で王座は移動した。

 

(文/杉浦泰介)