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(写真:8月からadidasと契約を結んだプロトレイルランナー奥宮俊祐。大自然を肌で感じられるのがアウトドアスポーツの魅力のひとつ)

 クライミング、トレイルランニングなどに代表されるアウトドアスポーツ。スポーツの語源は“遊び”だが、地球というフィールドは、まさに最大の遊び場だ。その遊び道具こそが、アディダスのアウトドアシリーズadidas TERREXの製品である。アウトドアフィールドで己の限界に挑むアスリートのため、アディダスは最高のテクノロジーを駆使して、日々モノづくりに励んでいる。

 

 

 そもそもアディダスとアウトドアの歴史は深い。1934年、創業者のアドルフ・ダスラーが自らと妻のアルプストレッキングのためにレザーブーツを作ったことが始まりだ。78年に世界的登山家ラインホルト・メスナー(イタリア)のために計量トレッキングブーツを開発。同年に達成されたメスナーの人類初無酸素補給エベレスト登頂に貢献した。

 

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(写真:林氏<右>の説明に耳を傾ける二宮清純)

 92年にアディダス アドベンチャーシリーズ、2000年にはアディダス アウトドアシリーズとしてブランド展開をしてきた。その技術や知見は現在のTERREXまで脈々と受け継がれてきた。シューズ、アクセサリーなど頭のてっぺんから足のつま先までを補うギアをユーザーに提供してきた。これまでにヨーロッパ市場の流通事業者やメディア向けに行われているアウトドア用品総合展示イベントでOutDoor INDUSTRY AWARDなどを受賞し、業界からも高い評価を得ている。

 

 それは東京オリンピックで正式競技に選ばれたスポーツクライミングでの活躍も期待される野中生萌、藤井快らをはじめ、現在は自然の山壁を相手にしている安間佐千ら世界的クライマーたちと契約していることからも明らかだ。今年8月からはプロトレイルランナーの奥宮俊祐とも契約した。

 

 安全かつ軽い理想のシューズ

 

1708adidas1 プロフェッショナルの声も参考にしながら、TERREXは日々進化を遂げていく。9月からはトレイルランニングシューズAGRAVIC GORE-TEX®の秋冬モデル(写真)が発売される。AGRAVIC GORE-TEX®はアウトソールには自動車タイヤメーカーのコンチネンタル社が開発した「コンチネンタルラバー」が使われている。これにより、優れたグリップ力がもたらされる。

 

 アディダスジャパンのマーケティング事業本部ハートビートスポーツ/アウトドアビジネスユニット・マーチャンダイジングマネージャーを務める林克洋氏は、シューズ開発に至った経緯をこう説明する。

「コンチネンタル社はマウンテンバイクのタイヤでも高いシェアを誇っています。マウンテンバイクのタイヤはすごい速さで回転しながら、土の地面を捉えている。それを見ていたアディダスの開発メンバーが、“これをトレイルランニングシューズのアウトソールにすれば、ものすごくグリップ力の高い靴ができるのでは”と考えたんです。AGRAVIC GORE-TEX®はスタッドの高さや配置はマウンテンバイクのタイヤをヒントにしながら、トレイルランニングシューズのアウトソールに最適化し、落とし込んだものです」

 

 山野を走るトレイルランニング。舗装されていない道を相手にする上で、グリップ力は道路やトラックを走る以上に重要である。「特に山道での上り下りの局面で大事になってきます。上りでは、グリップ力が利かない靴だと一歩ずつ足が滑ってしまう。下りに関して言えば、グリップ力がないと必要以上に慎重に足を接地するようになるのでスピードがコントロールできません。それらが積もり積もると足への疲労やタイムにも影響してきます」と林氏。安定感はこのギアのキーワードと言えるだろう。

 

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(写真:木々や岩の接触から足を保護するため、特につま先部分は頑丈なつくりとなっている)

 アウトドアフィールドで走れば、木や岩などに接触することも少なくない。ランナーたちの足を守るため、アッパー部分には頑丈さも必要な要素だ。とはいえ、パーツが増えてシューズの重量が上がることは望ましくない。そこでTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)という素材を使用し、熱圧着で強度を出したい箇所を硬くする。通常であれば、革一枚多く張らなければならないが、これにより軽量化も担保できる。安全性と軽量性のバランスが絶妙に保たれているのだ。

 

 ミッドソールにはBOOST™フォームを搭載。優れたクッション性と反発力を兼備しており、アディダスのランニングシューズでもお馴染みのテクノロジーである。BOOST™フォームには、もうひとつの特徴があると林氏は説明する。

「BOOST™フォームの利点は反発力とクッション性の他に劣化が少ないというところにあります。空気を入れて膨らます素材ではないので、クッション性は長い間保たれます。最後まで足を助けてくれるのが特徴です」

 

 足を助ける――。秋冬モデルではアッパー部分にGORE-TEX®というフィルムを貼っている。メッシュ素材に比べれば、通気性は劣るが撥水性では格段の違いを見せる。秋冬の山道では足が濡れることで、思うように動かなくなるリスクの方が高い。それを踏まえてGORE-TEX®を採用。こうして安全かつ軽い理想的なシューズが生まれたのである。

 

 想像力を働かせて遊ぶフィールド

 

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(写真:林氏<右>もイベントなどを通じて国内でのアウトドアスポーツの盛り上がりを感じるという)

 アウトドア人口は増加傾向にある。中でも顕著なのはクライミングだろう。08年には国内で100に満たなかったクライミングジムの数は現在5倍近くに増えているという。都内のジムを覗けば、キャッキャと楽しむ子どもたちの声も聞こえてくる。「公園でジャングルジムが減ってきていることも理由にあると思います。子どもたちもクライミングに連れて行くと大喜びで登っていますね」と林氏。下にマットが敷いているため、安全性もある。老若男女問わず楽しめるスポーツだということも強みだろう。

 

 欧米でも人気のトレイルランニング。国内でも年間400レース開催されており、決してにぎわっていないわけではない。自らのペースで楽しむトレイルランナーもいる。ランニングから、登山からと入口は様々でも自然を感じて走ることのできるトレイルランニングに惹きつけられる人も少なくない。

 

 アディダスも精力的にイベントを行うなど草の根活動に貢献している。今年4月より「ADIDAS TERREX TRAIL CARAVAN」を始動。日本国内の人気トレイルランニングイベントを巡り、新製品の展示や試走を行っている。そこで持ち帰った意見を、製品開発にも生かしていく。クライミングではボルダリングイベントの「ADIDAS ROCKSTARS TOKYO」を開催し、トップ選手を招聘するなど大会を盛り上げている。

 

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(写真:AGRAVIC GORE-TEX®をはじめ、adidasの持つテクノロジーを生かした製品づくりをこの先も進めていく)

 今後の展望について、林氏に訊いた。

「アウトドアは日本でも大きなマーケットとなっていて、既にビッグプレーヤーのブランドがある。そこでの差別化という点においては、adidas TERREXはアウトドアスポーツ、アウトドアアスリートのためのブランドだということです。そしてアウトドアスポーツという切り口の中で、人々をどれだけそのフィールドに連れてこられるかが、マーケットで成功する上で重要なこと。自然の中で走ったり、登ったりすることは根源的な欲求です。日本はアウトドアフィールドが豊富な国。自然の中でどう楽しむかはアスリート自身の想像力次第です。彼らが想像力を最大限に働かせて、フィールドを楽しむ時に必要とされるギアをadidas TERREXは提供していきます」

 

 adidas TERREXのブランドコンセプトは「LIVE WITHOUT LIMIT ~この地球で自由に遊ぶ~」である。工夫ひとつで山や川などのアウトドアフィールドが、大人も子どもも楽しめる遊び場になる。adidas TERREXの提供するギアが、それをサポートする。大人も子どもも、自然を舞台にもっと遊ぼうではないか。


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