<アスリート、ザ・ロイヤルGCに挑む>中野浩一(元競輪選手)「”滑走路”の16番ホールでリベンジなるか?」
「世界へ発進! 脱日本式ゴルフのすすめ」ではザ・ロイヤル ゴルフクラブ(ザ・ロイヤルGC・茨城県鉾田市)を舞台に、ゴルフの新たな楽しみを提案しています。
今回は全長8000ヤードを超す世界基準のロングコースに元アスリートのゴルフ愛好家がチャレンジしました。挑んだのは元競輪選手の中野浩一さんです。
世界選手権10連覇で知られる競輪界のレジェンドは"世界基準"にどう挑み、どう楽しんだのでしょうか。早速、レポートしましょう。
ゴルフ歴は40年以上
中野さんがザ・ロイヤルGCを訪れたのは8月某日。オールスター競輪を目前に控え、競輪界はいわゆる繁忙期でした。中野さんは引退後も競輪の解説者を務めています。そんな忙しい時期にゴルフをしていて大丈夫なんでしょうか? 「大丈夫です。現役時代にはレースの前検(競争参加選手の招集日)前にプレーしたことも何度もありますから。今も年間のプレー日数は60日くらい。ほぼ毎週行っているということですね」。どうやら中野さんのゴルフ好きは筋金入りのようです。
中野さんとゴルフの出会いは高校卒業直後にまで遡ります。
「高校を卒業したとき父に連れられて初めてコースに出たんです。そのラウンドですごくゴルフが面白く感じられました。将来の進路としてプロゴルファーもいいなァ、と思ったくらいです。まあそれは漠然とした夢だったので仕事は競輪、ゴルフは完全に趣味としてずっと続けてきました。ゴルフ歴? 高校卒業以来だから、もう40年以上になりますね」
1955年生まれの中野さんはこの11月で62歳になります。だが、体つきは現役時代とまったく変わらず、太腿からふくらはぎの筋肉は今もムキムキです。「92年に引退してからトレーニングなんてまったくしてないんですよ」と言いながら、現役17年で総額13億円超の賞金を稼いだ筋肉はダテではありません。
「うーん、その賞金はどこ行っちゃったんでしょうかね」と笑う中野さんですが、筋肉の貯金はまだまだ残っているようです。
「でも、ゴルフは筋力で勝負が決まらないんですよ。僕もベストドライブは270ヤードを記録したこともありますが、でも飛ばすのだけがゴルフのうまいヘタじゃない。右に曲がったり、左に飛んだりと出入りが激しいのが僕のゴルフ。ゴルフ歴は長いけど、決してうまくはないと自覚してます。でも筋力、体力で決まるスポーツじゃないから若い人でも年配の人でも、そして男性でも女性でも一緒に楽しむことができる。それがゴルフの一番の魅力ですね」
さて中野さんがザ・ロイヤルGCでプレーするのはこの日が2回目でした。以前、プレーしたときに「長いコースだったわ」とヘトヘトになったそうですが、「でも、また来るぞ、と思いました。僕は競輪選手としてずっとライバルと戦ってきました。だから趣味のゴルフでもそういう負けん気が出るんですよ。ザ・ロイヤルGCのコースにやられっぱなしではいられません。特にロングホールの16番とパー3の17番、今日はその2つをどう攻略してやろうか、楽しみですよ」
「ラフに打ち込むオレが悪い」
さて中野さんがリベンジをと乗り込んだ16番ホール、そして17番ホールのプレーを振り返りましょう。
まず16番ホール。ここはザ・ロイヤルGC最長の705ヤード・パー5のシグニチャーコースです。ラウンドに同行したコース監修の鈴木規夫プロが「まるで滑走路のようでしょう」と説明したようにティーグラウンドから見える景色はただただ広大のひと言です。
中野さんはティーショットと2打目はフェアウェイをキープしました。だが、3打目を左のラフに打ち込んでしまいました。このラフは長く深い草で覆われていてかなりの難所となっています。中野さんはここから4打目を打って4オン。だが、馬の背状になっているグリーンに苦戦して結局、「うーん、ボギーか……」と、今回も16番ホールへのリベンジは成りませんでした。
さて気を取り直して向かった17番ホールのティーグラウンド。ちなみに今回のラウンドは前出の鈴木プロの「せっかくだったら全ホールフルバックティで8000ヤードを体験しましょう」という提案でフルバックティを使っています。
この17番ホールは247ヤードのパー3で、グリーン手前に池とビーチバンカーがあり、非常に美しいデザインです。「でもその池とバンカーがくせ者なんですよ。パー3だからといって1オンを狙ったら絶対に池ポチャかバンカー。だから手前から攻めていきますよ」と中野さん。だが、ここではフェアウェイをとらえることができず、ティーショットは右のラフへ飛んでいきました。
長い草脚のこのラフはボールを見つけるのも一苦労ですが、中野さんは「ラフが悪いんじゃないし、コースを作った人が悪いわけでもない。ここに打ち込むオレが悪い!」と、ひと言。このホールは池ポチャもあり、ダブルボギーでした。
世界基準のロングコースで全18ホールを周り終えた中野さん。気になるスコアは?
「え、スコア? もう天文学的な数字ですよ。93かな。でもいいんです。ザ・ロイヤルGCはいつもパー90のつもりでプレーしているんです。すべてのホールで1オーバー、プラス18で90ですよね。それくらいの気持ちでいないと楽しめません。いつかザ・ロイヤルGCのどのホールでもいいからパーをとるのが夢ですね」
--最後にザ・ロイヤルGCをプレーした感想をお願いします。
「難しい、そして楽しいコースです。ここは長いコースなので"クラブを振らなきゃ"と常に意識しなくちゃいけない。それで"おお、こんなに飛ぶんだ"という発見があるコースです。あとクラブがきちんと仕事をしている、それが実感できますね。また来たいな、ではなくて"絶対に来るぞ、待ってろよ"という気持ちを駆り立ててくれるコースでした。さっきパーをとるのが夢と言いましたが、それが16番の705ヤードだったら最高でしょうね。飛距離を稼ぎながらもフェアウェイをキープして、それでピンに寄せられれば……」
中野さんの気持ちは早くも次回のザ・ロイヤルGCでのプレーへと飛んでいるようです。
<中野浩一(なかの・こういち)プロフィール>元競輪選手
1955年11月14日、福岡県出身。75年、日本競輪学校を卒業(35期生)し、同年デビュー。76年、第18回競輪祭で新人王を獲得。以後、グランプリ1勝、G1競争11勝、歴代最多の賞金王6回獲得などトップサイクリストとして日本競輪界に君臨した。また77年から世界選手権で前人未踏の10連覇を達成し、総理大臣顕彰受賞。92年に引退。生涯成績1236出走666勝。獲得賞金13億1916万2077円。06年4月、競輪出身者として初の紫綬褒章を受章した。現在は公益財団法人JKA顧問、日本自転車競技連盟強化委員長などを務め競輪解説者、スポーツコメンテーター、タレントとマルチに活躍中。ゴルフは高校卒業時より始めてプレー歴は40年。ベストスコアは72(プレスカントリークラブ)、得意なクラブは「ブレないからパター(笑)」。
(文・まとめ/SC編集部・西崎暢之 写真/ザ・ロイヤルGC、SC編集部 取材・監修/二宮清純)