「ミスター社会人野球」と言えば、3度のオリンピックに出場した杉浦正則の代名詞だ。だが、打者となると、この男だろう。今年社会人23年目を迎えた40歳・西郷泰之(Honda)。これまで都市対抗野球には補強選手を含めて18度出場し、6度の日本一に輝いた。その間、放った本塁打は大会史上最多タイの14本。新記録達成まであと1本に迫った西郷に、これまでの野球人生を振り返ってもらった。
二宮: 社会人野球は2002年に金属バットから木製バットにかわりました。これで随分とホームランが減りましたよね。金属の時代には、打撃戦が多かった印象があります。
西郷: 自分が経験した試合では、一番多くて25点ということがありましたね。確か25−19で勝ったんです。23−21というのもありました。野球というよりは、ラグビーみたいな感じでしたね。

二宮: 金属は打球も速かったでしょうね。
西郷 僕がファーストを守っている時、一度だけバッターが打った打球に反応できなかったことがあるんです。グラブを出した時には、既に打球が通り過ぎていました。

二宮: 木製になって、ホッとしたところもあったのでは?
西郷: はい、すごく守りやすくなりました。金属の時は本当に怖くて、「勘弁してくれ」と思っていましたから(笑)。

二宮: 西郷さんは補強選手も含めると、これまで都市対抗には18度出場しています。そのうち6度優勝。やはり同じ優勝でも自分のチームの時と補強とでは、喜びは違いますか?
西郷: 違いますね。確かに補強で優勝しても嬉しいのは嬉しいんです。でも、プレッシャーもすごいんですよ。僕が補強で試合に出場するということは、それまでチーム内でレギュラーだった選手が出場できないということですからね。相当なプレッシャーの中で戦っていますから、優勝できた時にはほっとします。

二宮: 補強は助っ人のような役割ですから、結果を出さなければいけないというプレッシャーがきついでしょうね。
西郷: はい。結果を出さないと、「何しに来たんだよ」ということになりますからね。「補強」ではなく「補弱」って言われてしまうんですよ(笑)。

二宮: そんなプレッシャーの中で、西郷さんは14本中、5本を補強選手として放っています。プレッシャーに強い?
西郷: いえいえ、もういつも必死です(笑)。死にもの狂いでバットを振っています。

<5月20日発売の小学館『ビッグコミックオリジナル』(2013年6月5日号)に西郷泰之選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください>