(写真:カンファレンスには富樫<前列左から4番目>、篠山<前列右から3番目>ら有力選手が参加。

 11日、男子バスケットボール「B.LEAGUE」の2017-18シーズン、ティップオフカンファレンスが都内のホテルで行われた。大河正明チェアマンのほか、B1リーグに所属する18チームの代表者が出席。2年目を迎える決意を述べた。

 

『BREAK THE BORDER』をスローガンに掲げ、2016年に発足したB.LEAGUE。大河チェアマンは昨年のカンファレンスで「あらゆる壁や境界を壊して、バスケットボール文化を根付かせていきます」と力強く宣言した。2016−17シーズンのB1・B2の年間総入場者数は226万2409人。その前年のNBL、bj両リーグの総数に比較して143%の増加を記録した。
 

 これを受け、大河チェアマンは「初年度の計画は成功した」と胸を張る。そして2年目のスローガンとして『BUILD UP』を掲げた。カンファレンスで大河チェアマンは「B.LEAGUEをさらに強く、骨太に。初年度の成功を更なる高みへと作り上げていく。そのために5つの施策を準備しています」と口にした。

 

(写真:2年目に向けた5つの施策を熱弁する大河チェアマン)

 1つ目はBIRTH。B.LEAGUEのLINEスタンプのリリースやオフィシャル・カルチャーブランド『RUN THE FLOOR』を発足させるなど、まだまだ新しいファンを生み出していくための工夫を凝らしていく姿勢を見せた。

 

 2つ目は、UPGRADE。より魅力的なリーグにするために、これまで好評だった応援アプリを進化させた。また、スカパーのBリーグセットでB1リーグの全試合放送を決定。バスケットボールの世界にのめり込む機会を増やしている。
 
 心に残る試合の舞台を整えることにこそ、プロの価値がある。3つ目はIMPACTである。オールスターゲームを熊本県立総合体育館で来年1月14日に行うことが決定。チャンピオンシップ(CS)ファイナルは横浜アリーナで開催することが決まった。

 

 B.LEAGUEをより身近に、そしてより深く。4つ目と5つ目にはLIFEとDEEPを掲げた。B.LEAGUEアナリストとして、元プロバスケットボール選手でNBAアナリストを務める佐々木クリス氏を任命し、バスケットの魅力をより多くの人々に伝えることを目論んでいる。

 

 リーグ発展のための5つの柱を高々と明示した。2年目の開幕を前に大河チェアマンは、「我々は限界を超えるためにチャレンジしてきました。しかし、本当の勝負はここからだと思っています」と力強く宣言した。

 

 その後は、B1リーグ全18チームの代表者が一斉に登壇。29日の開幕に向けての意気込みを語った。開幕カードが6月26日という早い段階で発表されたこともあり、各チームの照準は既に対戦相手に向いていた。

 

 なんと言っても初代王者の栃木ブレックス対シーホース三河というカードに注目が集まる。昨シーズン第3戦までもつれたCSセミファイナルのリマッチだ。田臥勇太に代わるチームの顔として出席した栃木の橋本晃佑は、「追われる側ではあるが、2連覇を目指せるのは栃木だけ。チャレンジ精神で2連覇を目指します」と抱負を述べた。

 

(写真:「去年の悔しい思いを忘れず2連勝を目指す。今年は早い展開のバスケットを披露したい」と開幕カードに向け闘志を燃やす比江島)

 対する三河はエースの比江島慎が出席。「さっそくリベンジマッチができる。開幕2連勝しなければ今シーズンは始まらない。すべての攻撃が田臥さんから始まるのでそこをしっかりと抑えたいです」と、こちらは去年の借りを返すべく鼻息は荒い。

 

 6月の開幕カード発表会見で大河チェアマンは「チャンピオンチームが、どこと戦うのがふさわしいかを考えた。はじめから当たるのは若干もったいない気もしたが、“BRAKE THE BORDER”でこういう対戦カードになりました」と述べた。1年目の熱気を再現する好カードは、まさにそれを“BUILD UP”させていくシーズンの幕開けに相応しい。

 

 新しい風が吹き荒れるB.LEAGUEにおいて、少しばかり毛色の違うチームが存在する。日本のバスケットボール界を長く引っ張ってきた五十嵐圭が所属する新潟アルビレックスBBだ。チームの平均年齢は30.5歳。25歳以下の選手はひとりもいない。20代の多いリーグの中では珍しい陣容と言える。カンファレンス参加選手のなかで最年長である37歳の五十嵐は「昨シーズン、B.LEAGUEの開幕を故郷・新潟のクラブで迎えられて嬉しかったです。今シーズンはCSに出場することでなんとか恩返しをしたいんです」と語った。

 

(写真:チーム最年長37歳の五十嵐<左>。ベテランならではの存在感で、表情には自信がみなぎる)

 五十嵐は落ち着き払った態度で自らのチームを分析した。

「チームの仕上がりはまだ全然なのですが、焦りはまったくありません。昨シーズンは外国人に依存しすぎていましたが、輪島射矢選手や城宝匡史選手が加わり、得点力が向上しました。いずれも30歳以上のベテランですが、コンディションをうまく調整できれば必ずやってくれます」

 

 他チームの選手が威勢よく仕上がりの良さをアピールする中、淡々と自己分析する姿が一際印象に残った。開幕に向けて完璧に仕上げるだけが全てではない。シーズントータルでいかにコンディションを整えるか。ベテランが多いチームにはそれに合わせた調整法があるということなのだろう。静かな語り口の一言一言に、内に秘めた強い自信と決意を垣間見た気がした。

 

 今季、富山グラウジーズから新潟に加わった城宝は、bjリーグ元年からプレーしている35歳のシューターだ。大阪エヴェッサでbjリーグ初代王者に輝いた実績も持っている。五十嵐を筆頭に経験豊富なベテランが揃う。

 

 今年のカンファレンスでは、ファンの考えるクラブイメージ調査が発表され、新潟アルビレックスBBは「昭和の匠ここに集結」であった。ファンもそのことを誇りに感じているのだ。若手がひしめくB.LEAGUEにおいて、新潟アルビレックスBBがどのような戦いぶりを展開するのか。ひとつ違った視点から眺めてみるのもおもしろいのではないだろうか。

 

 大河チェアマンは「1年目、我々は大きな成功を収めました。しかしもっともっと高いところを目指します。B.LEAGUEをプロ野球、Jリーグに次ぐ存在に成長させます」と締めた。大河チェアマンの言う通り、本当の勝負はこれからなのだろう。しかし目玉カードの開幕戦然り、横浜アリーナでのファイナル開催決定など、すでに観る者の心を高揚させる政策を数多く打ち出していることは事実である。産声をあげたばかりのB.LEAGUEが、栃木ブレックス対シーホース三河で火蓋が切られる2シーズン目でどうBUILD UPされるのか。18日後に迫った開幕が早くも待ち遠しい。

 

(文/交告承已、写真/杉浦泰介)