現地時間5日、カナダ・モントリオールで世界体操競技選手権大会男子個人総合決勝が行われた。白井健三(日本体育大)は86.431点で3位に入り、自身としては同種目初の銅メダルを獲得した。1位はシャオ・ルオテンが86.933点で、2位はリン・チャオパンが86.448点で、中国勢のワンツーフィニッシュ。個人種目6連覇中だった内村航平(リンガーハット)は負傷で予選を途中棄権していた。

 

「オールラウンダーにならなきゃ東京五輪のエースになれない」

 4年前、スペシャリストだった高校2年生が発した力強い言葉。白井は21歳となった今、その道を着々と突き進んでいる。

 

 見慣れぬ風景がそこにはあった。白井は個人総合で初の世界体操。予選4位で決勝へと進んだ。しかし、決勝の舞台には“絶対王者”の名を欲しいままにしていた内村の姿はなかった。予選の跳馬で足首を負傷。途中棄権を余儀なくされた。

 

 オリンピックを含めれば2009年から世界にトップに君臨し続けた内村の不在に王座争いは一層激化した。リオデジャネイロ五輪銀のオレグ・ベルニャエフ(ウクライナ)、15年世界体操銀のマンリケ・ラルデュエト(キューバ)に加え、中国勢、ロシア勢が白井とメダルを争うライバルとなる。

 

 予選を突破した24人で行われた決勝。白井の第1ローテーションは得意の床運動(ゆか)だ。世界体操で2度頂点に立ったこともあるように、彼にとっては稼ぎどころとなる。Dスコア(難度点)7.2点の演技構成をミスなくまとめた。唯一の15点台(15.733点)を叩き出し、好スタートを切った。

 

 あん馬、つり輪でいずれも全体12位の成績だったが、もうひとつの得意種目である跳馬で盛り返す。15点台(15.000点)で全体トップの得点。平行棒は全体7位、鉄棒は全体6位だったが大きなミスなく3位に入った。表彰台のてっぺんは08年北京五輪ぶりに中国勢に明け渡したものの、日本勢として世界体操11大会連続のメダル獲得を成し遂げた。

 

 内村は予選の途中で会場を去るとき、白井の背中をパンと叩いた。尊敬する師匠からの“メッセージ”を意気に感じないわけがない。その一方で背負う重圧は計り知れない。今大会で味わった日本の“エース”としての経験は東京五輪のエースを目指す白井にとっては何にも代え難いものになったはずだ。

 

 ひねり王子から個人総合の世界王者へーー。王位継承まで、ゆかと跳馬以外の種目を磨く必要がある。とはいえ白井には種目別決勝が残っている。まずはゆかと跳馬で2個の金メダルを日本に持ち帰りたい。

 

(文/杉浦泰介)