7対1と6点のリードがあるにもかかわらず、9回裏、福岡ソフトバンク監督の工藤公康は迷うことなくデニス・サファテを締めくくりのマウンドに送った。

 


 9月16日、埼玉西武の本拠地メットライフドーム。サファテは3安打を浴び2点を失ったが、最後はエルネスト・メヒアを打ち取り、胴上げ投手となった。


 4点以上の点差があったため、セーブはつかない。それでも指揮官が抑えのエースをマウンドに送ったのは、およそ半数の63試合に登板し、NPB記録を5つも更新する51セーブをマークしている。その労に報いるためだ。


 74勝2敗。勝率にすると9割7分4厘。これ、何の数字かおわかりか? 今季、ソフトバンクが6回をリードして終えた試合の戦績である。


 クローザーのサファテを筆頭に、岩嵜翔、森唯斗、嘉弥真新也、五十嵐亮太、リバン・モイネロ……。2年ぶりのV奪還の最大の原動力は彼らリリーフ陣だった。


 翻って完投数は、リーグ最少の、わずか4。「オレらは投げてなんぼ」(五十嵐亮太)というブルペンの奮闘が2位西武を14ゲームも引き離す要因となった。


 時代はワーク・シェアリングである。「先発が完投勝ちすれば喜んでいるのはひとりだけ。だが、4人の継投で勝てば先発には勝ち星が、2人のセットアッパーにはホールドが、クローザーにはセーブがつく。4人が幸せになれる。ひいてはチームに一体感が生まれてくる」とは侍ジャパンの投手コーチを務めた権藤博の口ぐせだが、それを地で行く優勝だった。


 ソフトバンクの優勝から遅れること2日、セ・リーグでは広島が阪神を下し、37年ぶりの連覇を成し遂げた。


 9月18日、甲子園。2対2で迎えた8回表、1死一、二塁からサビエル・バティスタの決勝タイムリーが飛び出した。


 ソフトバンクが先行逃げ切りなら、広島は“まくり”がお家芸だ。84勝のうち、逆転勝ちが実に41。その勝負強さは滅多に自軍の選手を褒めない監督の緒方孝市が、「諦めないんですよ、うちの選手は」と自画自賛するほどだ。


 横浜DeNAのアレックス・ラミレス監督は「広島相手に目を閉じてはいけない。まばたきの間に3点くらい入っている」と語っていた。


 このように全く異なるチームカラーを持つ両王者の日本シリーズでの激突を望む声は少なくない。とはいえ、何が起こるかわからないのがCSである。プロ野球は、いよいよ佳境に入る。

(※数字は9月20日時点のものです)

 

<この原稿は2017年10月20日号『漫画ゴラク』に掲載されたものです>

 


◎バックナンバーはこちらから