中国新聞社が広島の本拠地マツダスタジアムで行ったセ・リーグMVPを予想するアンケートによると、1位は外野手の丸佳浩で46%を占めた。2位はリーグ2位の15勝(3敗)をあげている薮田和樹で、22%だった。

 


 妥当な数字だろう。私もMVP候補の一番手に丸を推す。


 打率3割8厘(5位)、23本塁打(8位)、92打点(3位)、13盗塁(11位)、171安打(1位)、109得点(1位)――。


 3番打者として非の打ち所のない成績だ。石井琢朗打撃コーチも「打線の軸は丸」と語っていた。


 先に示した成績もさることながら、丸の最大の特徴は選球眼の良さである。今季もリーグ4位となる83の四球を選んでいる。2014、15年はセ・リーグの“四球王”だ。


 それについて丸はこう語る。
「もちろん、最初から四球を取りにいくわけではありません。打ちにいくべき球と、打ちにいってはいけない球をきちんと整理して(打席に)入る。その結果として、打ちにいく球がこなければ、四球でいいという考えです」


 柔らかいバッティングを売り物にする丸だが、意外なことに体は硬い。とりわけ下半身の関節が硬いため、これまでは低めの変化球に体勢を崩されることが少なくなかった。誘い球には乗らない――。これを徹底することで数字がついてくるようになったのである。


 選球眼といえば、通算868本塁打の王貞治の右に出る者はいない。通算2390四球はNPBのアンタッチャブル・レコードだ。


 その王が語っていた。
「ストライクゾーンの四隅に決まる難しいボールは誰だって打てない。甘いボールを、いかに見逃さずに打つか。バッティングとは、そういうものですよ」


 丸は万能型の打者である。自らチャンスをつくることも広げることもできる。得点機では自らのバットで打者を迎え入れる。今や“赤ヘル打線”の顔である。(数字は2017年シーズン終了現在)

 

<この原稿は2017年10月16日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 


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