5日、J1第32節の鹿島アントラーズ対浦和レッズが茨城・カシマスタジアムで行われ、首位を走る鹿島が1対0で浦和に勝利した。19日に浦和がAFCチャンピオンズリーグ決勝第1戦に臨むため日程を繰り上げて行われた試合。鹿島が後半35分にMFレアンドロが決めた1点を守り切った。これにより2位の川崎フロンターレが18日にガンバ大阪に敗れると、鹿島の優勝が決まる。

 

 西、絶妙クロスでアシスト(カシマスタジアム)

鹿島アントラーズ 1-0 浦和レッズ

【得点】

[鹿] レアンドロ(80分)

 

 タイトルホルダーの鹿島らしさを見せつけた試合となった。残り3節で勝ち点差は4。2位の川崎に対し、ここで勝てば絶対的に優位に立てる。そんな時でも鹿島は硬くならず、“いつも通り”を徹底できていた。

 

 開始5分、右サイドから浦和のDF遠藤航がクロスを上げ、ゴール中央でFW興梠慎三が頭で合わせるがバーの上を通過した。幸先よくオープニングシュートを放った浦和だったが、前半でチャンスらしいチャンスはこの1本のみ。浦和の方がボールを持つ時間は長かったが、効率よくチャンスを作ったのは鹿島だった。

 

 8分、ペナルティーエリア右の角付近で鹿島のFK。キッカーのMF遠藤康は中にクロスを上げるふりをして得意の左足でゴール右を狙う。だが、惜しくもシュートはポストに嫌われた。17分にはMFレオシルバが右サイドで1人かわし、ゴール中央のレアンドロへラストパス。レアンドロは左足を振り抜くがDFにシュートブロックされた。

 

 18分にはレオシルバのスルーパスをペナルティーエリア左で受けたFW金崎夢生が左足でシュートを放つものの、GK西川周作に阻まれた。ゴールを奪うまでには至らないが鹿島はリズムよく攻撃し、浦和守備陣を翻弄した。

 

 鹿島は後半に入ると、前半ほどシュートチャンスを作れなかった。すると大岩剛監督が交代カードを切り、流れを変えようと試みる。33分、FW土居聖真に代えてFW鈴木優磨を投入。この交代がゴールの呼び水となった。

 

 その2分後、右サイドでDF西大伍がボールを持つ。ペナルティーエリア内では金崎と鈴木が交差して相手マークを引きはがそうと動く。さらに一番外からレアンドロが走り込む。慌ててMF柏木陽介が戻るがマークにつき切れていなかった。西はそれを見逃さず、クロスを供給。ニアには金崎が走り込みマーカーを引き付け、ゴール中央では鈴木がおとり役となった。ボールはファーサイドで待ち構えていたレアンドロの右足にピタリと合った。シュートは相手GKの西川の股下をすり抜け、鹿島が待望の先制点をあげた。

 

 金崎がニア、鈴木が中央で潰れたことで、レアンドロがフリーでシュートを打てた。直接的には得点に絡まなかったものの、鈴木の投入が大きかったと言えよう。鈴木はその後も前線からのプレスを精力的にかけ続けた。

 

 こうなると常勝軍団は面白いように自分たちのペースで時計の針を進める。ボールをキープし、無理に仕掛けなかった。バックパスもうまく使い、タイムアップの笛を待った。

 

 並のチームならば、1対0という僅差ではバタついてしまうこともあるだろう。それでハラハラドキドキの展開になることが多い。だが、鹿島は慌てず騒がず、やるべきことをきっちりとこなすことができる。リーグ連覇へ向けて、大きな勝ち点3を手にした。

 

 試合後、貴重な先制点をあげたレアンドロは得点場面を「右サイドから崩していいボールが来た。僕はしっかりと決めるだけでした」と振り返る。「勝ち点3を取れたことが僕にとって喜ばしい。全員の目標が達成できた。引き続き、残りの試合も勝って優勝できればと思います」と抱負を述べた。

 

 チームを勝利に導いた大岩監督はこう試合を総括した。

「非常にお互い締まった内容の素晴らしいゲームだった。守備も攻撃も自分たちからアクションを起こそうという話をした。その通り前線からアグレッシブにいった結果、主導権を握る時間が多かった」

 

 指揮官が語ったように主導権を握っていたのは鹿島だった。たとえ相手にボールを持たれていても、“持たせている”とさえ感じさせる内容だった。勝ち方を知り尽くしているチームがなせる業なのだろう。

 

 この日の勝利で鹿島は勝ち点を70にまで伸ばした。2位の川崎Fとの差を暫定ではあるが7に広げた。18日に川崎FがG大阪に負ければ優勝。川崎Fが引け分け以上の結果でも、鹿島が26日にホームで開催される柏レイソル戦に勝利すれば連覇達成となる。視界は良好だ。

 

(文/大木雄貴)