4日、YBCルヴァンカップ決勝のセレッソ大阪対川崎フロンターレが埼玉スタジアムで行われた。2対0でC大阪が勝利し、クラブ初のタイトルを獲得した。試合は前半1分にFW杉本健勇の得点でC大阪が先制した。さらに後半アディショナルタイムにMFソウザの追加点でリードを2点に広げたC大阪が逃げ切った。

 

 MVPは先制弾の杉本(埼玉スタジアム)

セレッソ大阪 2-0 川崎フロンターレ

【得点】

[セ] 杉本健勇(1分)、ソウザ(90+2分)

 

 どちらが勝ってもクラブ史上初のタイトル獲得となる対戦カード。互いに慎重に入るかと思われたが、前半1分に早くもスコアが動いた。C大阪が左サイドのスローインからFW柿谷曜一朗のヘディングでゴール前にボールを送った。これを川崎FのDFエドゥアルドが痛恨のクリアーミスを犯し、ボールを後ろへ逸らしてしまう。こぼれ球に素早く反応したのが杉本。GKとの1対1を落ち着いて右足インサイドでゴール右隅に決めて、あっさりと先制点を奪った。大舞台でエースが早々に結果を残した。

 

 好機をきっちりモノにしたC大阪だが、これ以降は川崎Fに圧倒的にボールを支配された。それでもDF陣が踏ん張りゴール前をしっかりと固めた。16分にはFW小林悠、30分にはMF三好康児にミドルを放たれるもゴールを割らせなかった。43分には細かなパス交換からペナルティーエリア右サイドを破られてMF中村憲剛に強烈なシュートを許すがゴールネットは揺らさせなかった。             

 

 C大阪は川崎Fに得意のパスワークを披露され続け、苦戦した。前半終了時のボール支配率はわずか31%。それでも1点リードで試合を折り返す。

 

 後半3分、C大阪はDFエウシーニョに左サイドを突破されグラウンダーのクロスを入れられた。これをペナルティーエリア中央で小林に右足で合わせられたが、幸運にもシュートはジャストミートせずGKキム・ジンヒョンがセーブした。11分にはMF家長昭博にまたも左サイドを突破され、クロスを上げられる。小林が豪快にオーバーヘッドでシュートを放つもゴール左に外れた。

 

 川崎Fはボール回しに人数を割き過ぎ、ゴール中央には小林1人しかおらず、攻撃に迫力が出せなかった。C大阪は焦れることなくカウンターのチャンスをうかがっていた。

 

 試合終了間際になると川崎Fは得意のパスワークを捨ててパワープレーに切り替えた。守備を捨ててでも前線に人数を割いた。そこをC大阪は逃さなかった。

 

 アディショナルタイム、自陣からのクリアーボールをMF清武弘嗣がハーフウェイライン右サイド付近で拾いゴール前に運ぶ。チャンスと見たMF水沼宏太とソウザが全速力でゴール前に流れ込む。ペナルティーエリア手前で3対2と数的有利の状況を作り、右サイドから清武、水沼とソウザと繋ぐ。ソウザはキックフェイントでGKをかわし、冷静に左足インサイドでゴール右に流し込んで試合にダメを押した。

 

 試合終了のホイッスルが鳴るとC大阪の選手、スタッフ陣が輪になって抱き合った。貴重な先制ゴールを決めた杉本はゴール裏のサポーターの方に向かい雄叫びを上げた。各々が喜びを爆発させ、初優勝の味を噛みしめた。

 

 杉本は試合後、タフな戦いをこう振り返った。

「今までのどんな試合よりも先制点が大事だとみんなで話していた。先に川崎に取られると勢いに乗られてどんどんいいプレーをされてしまう。技術の高い選手が多いですから、ボールを回されても焦れずに我慢して失点しなければ、絶対チャンスが来ると思っていた。ある程度はプラン通りだった。最後の場面でみんな体を張れていた」

 

 先制点の場面を「“来たっ!”と思った。まさかあそこでミスするとは。思い切り打った」と語った。杉本は代表招集の関係などでルヴァンカップ出場はこの決勝戦のみ。「みんなに(この舞台に)連れてきてもらった」と口にし、こう続けた。

 

「僕は決勝だけ出た。申し訳ないというか、しっかり責任を果たして頑張らないといけないと思っていた。負けたら、(他のメンバーに)顔を見せられない。そういう思いも自分の中にあった。出られなかった選手は相当悔しいと思う。だから今日は必ず勝って、チームメイトに良い報告をしたかった」

 

 これまでC大阪は綺麗なサッカーを展開するものの、結果を出せなかった。ひ弱なチームを戦う集団に変貌させたのが今季から指揮を執るユン・ジョンファン監督だ。「この場所にたどりつくのには平らな道ではなかった。全選手、本当に素晴らしかった。選手にありがとうと言いたい。今日はルヴァンカップに出場していない選手を起用したが、今まで出ていた選手たちの分まで走ってくれた」とピッチで戦ったメンバーを労った。

 

 これまでC大阪はタレントがいながら不安定な戦いを繰り返してきた。苦しくても粘り強く勝利を手繰り寄せる今日の戦い方を忘れなければ、クラブの未来はもっと明るくなるはずだ。

 

(文/大木雄貴)