3日、J1昇格プレーオフファイナル、J2リーグ3位の名古屋グランパス対同4位のアビスパ福岡が愛知・豊田スタジアムで行われ、0対0で引き分けた。プレーオフは引き分けの場合、J2リーグ上位のチームが勝ち進むため、名古屋がJ1昇格を決めた。

 

 福岡、パワープレーも奏功せず(豊田スタジアム)

名古屋グランパス 0-0 アビスパ福岡

 

 J1昇格のラスト1枠をかけた一戦。攻撃の名古屋、堅守の福岡の対戦だったが、立ち上がりは福岡が攻勢を仕掛けた。前半3分、準決勝の対東京ヴェルディ戦で豪快なミドルを突き刺した福岡のMF山瀬功治がペナルティーアーク付近から左足でゴールを狙う。これは惜しくもGK武田洋平にセーブされた。

 

 12分、ホームの名古屋も決定機を作った。ペナルティーエリア手前右サイドでボールを持ったMF田口泰士がFWシモビッチとのワンツーから右足を振り抜いたが惜しくもゴール左にそれた。

 

 その1分後だった。名古屋の右CKをキッカーのMFガブリエル・シャビエルがゴール中央へ。このボールに田口が頭で合わせてゴールネットを揺らした。しかし、ポジション争いの際にシモビッチがGK杉山力裕にファウルを犯したと判定され、ノーゴールとなった。

 

 19分、今度は福岡が反撃に出る。ペナルティーエリア手前でこぼれ球に反応した山瀬が今度は利き足の右足を振り抜く。強烈なミドルはバーを直撃。引き分けでは昇格できないため、何が何でも1点を奪いたい福岡。少々遠くても隙あらばシュートを放った。

 

 しかし、名古屋は時間が経つにつれて福岡のプレッシャーに慣れてきた。細かいパスワークから少しずつ流れを引き寄せる。42分、左サイドでボールを持ったウィングバックの和泉竜司がFW佐藤寿人にパスをあててリターンをもらうと、DF2人をカットインでかわして右足でシュートを放った。このボールは惜しくもゴール右へとそれていった。

 

 後半に入ると、両軍は中盤で激しく潰し合い、互いに決定機を作らせない。スコアレスのまま時計は進んでいくと徐々に福岡はパワープレーに移行していく。前線のFWウェリントンにロングボールを放り込むが、名古屋もDFワシントンを中心にボールを跳ね返した。

 

 攻撃が信条の風間八宏監督だったが、後半アディショナルタイムには最前線のシモビッチに代えてDFイム・スンギョムを投入し、守りを固めた。このまま試合は終了。名古屋が激闘を制し、見事に1年でJ1昇格を決めた。

 

 試合後、風間監督は感謝の気持ちを述べた。

「(良い意味で)とんでもないスタジアム。一体となってずっと後押しをしてくれた。この時を待ちわびていました。サポーター、選手、スタッフ、みんなのおかげです」。1年を戦い抜いた選手たちには「この選手たちは成長が早い。まだまだ伸びる」と称賛した。

 

 キャプテンの佐藤もサポーターに向かって「ありがとう!」と叫んだ。今日の一戦を「本来のサッカーとは程遠かった」と振り返り、こう続けた。

「(サポーターが)選手を最後まで走らせてくれた。名古屋に来ることができてよかった。ここのみんなで、J1でも風を起こしましょう」

 

 Jリーグ開幕当初のオリジナル10の1つであり、規模的にはビッグクラブと言われる名古屋。まさかの降格から約1年。選手たちは風間新監督の下、一丸となり攻撃サッカーに特化してきた。今日はスコアレスだったものの、来季はJ1の舞台で自慢の攻撃力を見せつけてくれることだろう。

 

(文/大木雄貴)