(写真:「得点でチームを引っ張れたが、課題もあった」と厳しめに今季を振り返った小林。)

 5日、横浜アリーナでJリーグアウォーズ2017が行われ、各賞が発表された。MVPにはFW小林悠(川崎フロンターレ)が選ばれ、ベストイレブンと得点王と合わせ、個人タイトル“3冠”獲得となった。MVPは昨年のMF中村憲剛に続き、川崎Fから2年連続で選出された。

 

 ベストイレブンには優勝クラブの川崎FからDFエウシーニョ(初)、DF車屋紳太郎(初)、中村(2年連続7度目)、小林(2年連続2度目)と最多の4名が選出された。2位の鹿島アントラーズからはDF昌子源(2年連続2度目)、DF西大伍(初)の2名。3位のセレッソ大阪からはMF山口蛍(2度目)、FW杉本健勇(初)の2名。その他、柏レイソルのGK中村航輔、ガンバ大阪のMF井手口陽介、浦和レッズのFW興梠慎三がいずれも初選出となった。

 

 大一番で人生初のハットトリックを達成し、川崎FをJの頂に導いた小林が今季のJリーグMVPに輝いた。逆転優勝を決めた最終節の大宮アルディージャ戦で大爆発。卓越したシュート技術、絶妙なポジショニングが光った今季の小林の働きぶりを考えれば、文句なしの受賞だろう。怪我が多いプロ人生、まず感謝の気持ちは生活面を支える妻に向けて発した。

「怪我の多い僕と一緒に(困難を)乗り越えてくれた奥さんに“ありがとう”と言いたいです」

 

 小林は今季からチームキャプテンを任された。今まで川崎Fの象徴・中村が担ってきた重責を引き継いだ。春先のキャンプでチームメイトには「頼りないけど、フロンターレを勝たせたいという気持ちは誰にも負けないからついてきてほしい」と伝えた。チームメイトは背番号11を信じ、ボールを集めた。チームを勝たせるために、小林はゴールネットを揺らし続けた。積み重ねた23のゴールがチームと自身に初戴冠をもたらしたのだ。

 

 小林はMVPとベストイレブンと得点王の個人タイトルを3つ受賞した。得点王受賞の感想を「自分で獲ったという感覚がない。自分にチームメイトがたくさんボールを集めてくれたおかげだと思う。本当に感謝したいです」と述べた。ここ一番での得点の多さについては「苦しい場面で決められたのは自信になりました」と、はにかんだ。今季はFW大久保嘉人がFC東京に移籍したが、彼の穴を埋めて余りある活躍だった。

 

 今季のベストイレブンは川崎Fから最多の5名が選出された。全体的に若手が多い中、37歳のベテラン中村は「みんな若いですし、現役日本代表もいるけど、37歳でもできることを示していきたい。年は関係ない」と語った。今年、日本代表に初選出された車屋は「まだまだチームメイトに助けてもらっている。もっと自立した選手にならないといけない。攻撃面をもっとよくしていきたい」と謙虚だった。

 

 川崎Fと最後まで優勝争いをした鹿島からは昌子と西が選ばれた。登壇した昌子は晴れやかな舞台でも悔しさを露わにした。

「今シーズン、フルタイム出場したのは鹿島で僕ひとりなので、より(優勝を逃した)責任を感じる。(来季以降)チームを優勝に導ける選手になれるように頑張ります」

 

 川崎Fがクラブ史上初タイトルを獲得した今季のJリーグ。このリーグ制覇をステップボードにさらにクラブの地力を伸ばすことができるか。今年の優勝だけで満足している選手は誰一人としていない。連覇を逃した鹿島、10年ぶりにアジアチャンピオンズリーグを制した浦和、YBCルヴァンカップで初タイトルを手にしたC大阪らライバルも、ただ指をくわえたままではいない。来季のJリーグの優勝争いはより一層熱くなるだろう。

 

<2017 Jリーグアウォーズ受賞者一覧>

 

○最優秀選手賞

FW小林悠(川崎フロンターレ)

 

○ベストイレブン

GK中村航輔(柏レイソル)

DF昌子源(鹿島アントラーズ)、西大伍(鹿島アントラーズ)、エウシーニョ(川崎フロンターレ)、車屋紳太郎(川崎フロンターレ)

MF中村憲剛(川崎フロンターレ)、井手口陽介(ガンバ大阪)、山口蛍(セレッソ大阪)、)

FW興梠慎三(浦和レッズ)、小林悠(川崎フロンターレ)、杉本健勇(セレッソ大阪)

 

○得点王

FW小林悠(川崎フロンターレ)23得点 ※初

 

○優勝監督賞<新設>

鬼木達(川崎フロンターレ)

 

○優秀監督賞(J1)<新設>

ユン・ジョンファン(セレッソ大阪)

 

○優秀監督賞(J2)<新設>

チョウ・キジェ(湘南ベルマーレ)

 

○優秀監督賞(J3)<新設>

杉山弘一(ブラウブリッツ秋田)

 

○最優秀ゴール賞

MF関根貴大(元浦和、現FCインゴルシュタット/ドイツ)第17節浦和対広島(埼玉)90+2分

 

○最優秀主審賞

西村雄一 ※9年連続9度目

 

○最優秀副審賞

相樂亨 ※9度目

 

○フェアプレー個人賞

DF中澤佑二(横浜F・マリノス) 

DF水本裕貴(サンフレッチェ広島)

FW柿谷曜一朗(セレッソ大阪)

 

○フェアプレー賞高円宮杯

サンフレッチェ広島 ※6年連続7回目の受賞、歴代最多

 

○フェアプレー賞(J1)

ベガルタ仙台

セレッソ大阪

FC東京

サガン鳥栖

川崎フロンターレ

ガンバ大阪

ジュビロ磐田

 

○フェアプレー賞(J2)

大分トリニータ

松本山雅FC

愛媛FC

東京ヴェルディ

ファジアーノ岡山

モンテディオ山形

ツエーゲン金沢

 

○フェアプレー賞(J3)

ブラウブリッツ秋田

アスルクラロ沼津

Y.S.C.C.横浜

セレッソ大阪U-23

グルージャ盛岡

AC長野パルセイロ

福島ユナイテッドFC

 

○最優秀育成クラブ

FC東京

 

○功労選手賞

市川大祐

大島秀夫

 

(文・写真/大木雄貴)