千葉ロッテへ育成選手として進んだ富山GRNサンダーバーズの和田康士朗です。ドラフト前に6球団から調査書が届いていましたが、なかなか指名されず育成1位で呼ばれたときには、ホッとしたと同時に悔しさもありました。BCリーグの他の選手が支配下で指名されたこともあって……。でも今はNPBのプロ野球選手としてスタートラインに立てた喜びとやる気に満ちています。

 

 大人に混じりクラブチームで成長

 ドラフト指名の後から「異色の経歴を持った選手」として、いろいろな取材を受けました。僕は高校時代に野球部に入らず、最初は陸上部。そして地元のクラブチームを経て、BCリーグ入りですから、「異色」と言われるのも納得です。

 

 野球を始めたのは小学校4年生のとき。中学に進んで野球部に入って地区選抜に選ばれました。でも中学2年で股関節を負傷。しかも5月に左、1月に右と立て続けに故障してしまって……。ケガが治ったころには選抜チームのレギュラーはほぼ固まっていたし、周囲の選手とのレベルの差を感じて、「高校野球では通用しないな」と思って野球をやめました。

 

 高校では陸上部に入って野球からはすっかり離れていたんですが、テレビで埼玉県の地方大会の中継を見たとき、山村国際と花咲徳栄の試合をやってたんです。そしたら小学校、中学校と一緒に野球をやっていた友達が山村国際のベンチに居るのが映ったんです。1年でベンチ入りして、それで声出しとかしてる姿がうらやましくて、しかもその試合、山村国際が勝ったんですよ。そのときに「またやりたい!」と野球熱が再燃しました。

 

 ただ僕の高校(小川高)の野球部は部員も少なくて、「レベルの高い野球をやりたい」と父や周囲の人に相談しました。それで父の知人が在籍していた都幾川(ときがわ)倶楽部硬式野球団に入団できることになったんです。

 

 このクラブチームは甲子園に出た強豪校出身者や大学、社会人経験者などすごい選手が揃っていました。練習は土日だけでしたが、年上ばかりでレベルの高いチームでやり甲斐がありましたね。僕はずっと軟式でここで初めて硬球に触れて、それで木製バットも初でした。硬球を金属バットで打ったことがなかったので、逆に違和感がなくすぐに慣れました。

 

 野球を再開してみたらとても楽しく、高3で進路を考えるようになったときに「さらに上に」と思い始めました。前年に都幾川からBCの武蔵ヒートベアーズに入った先輩がいて、その人に話を聞いたり、試合を見たときに「独立リーグもありだな」と。

 

 実はBCのトライアウトの前に四国アイランドリーグPLUSのトライアウトも受けたんですよ。そこで1次は通過していたので、BCのときは結構、気楽に受けられました。打席に入るときには「若いから三振してもいいからとにかく振ろう」と思ってて、それが富山の吉岡雄二監督の目に止まったようです。

 

 富山に入ってからも「フルスイング」にこだわって、その中で変化球の対応や三振を減らすことに努めてきました。前期はまだまだへたくそでしたが、後期になると球も見えるようになりましたね。まだまだミスショットが多いので、プロ(NPB)ではそこを修正していきたいです。

 

 そういえばドラフト指名を受けた後、ロッテの方から「うちの補強ポイントはバットを振れる選手だった」と言っていただいたので、富山でもスタイルを変えずやってきて良かったなと思いました。

 

 早く支配下選手になって活躍するのが夢ですが、まずは体力をつけて練習についていけるようにしたいですね。ロッテには高卒ルーキーの安田尚憲君がいます。ひとつ年下ですけど、いいところはどんどんと吸収したいですね。とにかくプロでもフルスイング。憧れの柳田悠岐選手のように振りまくりたいです。将来的にはトリプルスリーが狙える選手になりたいですね。

 

 BCリーグ、富山で過ごした1年で大きく成長することができました。ファン、スポンサーの皆さんのおかげだと感謝しています。これからも応援よろしくお願いします。

 

<和田康士朗(わだ・こうしろう)プロフィール>
1999年1月14日、埼玉県出身。小学4年生で野球を始め、東松山市立北中で軟式野球部に所属。地区選抜に選ばれたが中2で2度、股関節を故障。ケガは完治したものの周囲の選手とのレベルの差を感じて、小川高進学後は陸上部に入部。専門は走り幅跳びで自己ベストは6m45を記録した。だが小中の同級生が野球部で活躍する姿をテレビで目にして野球熱が再燃。父の伝手で都幾川(ときがわ)倶楽部硬式野球団に入団。高校2年時にベンチ入りを果たし、高3時はライトやセンターのレギュラーとしてスタメンを務め、クラブチーム埼玉大会優勝。高校卒業後、BCリーグ・富山に入団。持ち前の俊足とフルスイングから放つ強打をいかして1年目からレフトのレギュラーに定着した。68試合に出場して2割7分1厘。1本塁打、14打点、14盗塁。17年秋、千葉ロッテから育成1位指名を受けて入団。背番号は122。身長185センチ・体重72キロ。左投左打。


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