新年といって、特別な感慨をもよおすトシでもないが、たぶん今年はこれまで以上に大谷翔平の動向を気にしながら過ごすことになるんだろうなあ。

 

「ハーイ。マイネーム イズ ショウヘイ オオタニ」と、「タ」にしっかりとアクセントをおいて、軽やかに入団会見を始めた、あのエンゼルスの大谷である。

 

 投手として、メジャーに通用することは、ほぼ間違いない。ダルビッシュ有や田中将大が通用して、大谷が通用しない理由をさがすほうが困難といっていいだろう。

 

 問題は二刀流として、どうなるかだ。

 

 伝えられるところによると、エンゼルスは二刀流としての大谷を獲得したので、その起用法も検討中らしい。まずは、それが本気であることを祈る。北海道日本ハム時代も、誰よりも栗山英樹監督が本気だったから二刀流が実現した。

 

 MLBでも通用するスイング

 

 メジャーでは昨年、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)、ジャン・カルロ・スタントン(マーリンズ)という2人のホームラン王が誕生した。アメリカンリーグはジャッジが52本。ナショナルリーグはスタントンが59本である(スタントンは、今季、ヤンキースに移籍)。
 
 2人とも、これぞまさにメジャーリーグという、怪物級のパワーヒッターだ。

 

 もちろん、現時点で大谷はパワーの点で彼らに劣っているだろう。しかし、ホームランの軌道という意味では、決して負けていないのではないか。彼がこれまで見せてきたいくつかの大ホームランを思い出しながら、そう思う。

 

 パワーよりもスイングの力で、アメリカのホームラン王に負けない大ホームランを打ってほしい。

 

 では、昨年のWBCで話題になったメジャーの動くボールに対応できるのか。これは今や日本人打者の永遠の課題のようになっている。

 

 たとえば有名なところではカブスの名将ジョー・マドン監督が「日本は、(略)足を高く上げ、地面に着くまでの時間が長いとアジャストが難しくなる」と指摘した(「日刊スポーツ」2017年12月28日付)。

 この点から大谷を見てみると、右足をスッと上げてスッと着地させて、打ちに行く。たとえば、山田哲人(東京ヤクルト)や坂本勇人(巨人)のように「高く上げ」る感じではない。

 

 左右の違いはあるが、往年のアレックス・ロドリゲスの足の上げ方に似ているような気がする。

 

 つまり、メジャーのボールにも十分対応できる打者なのだ。

 

 だからこそ、打者としていかに数多く出場できるかがカギになる。出続ければ、いずれ結果は出る。

 

 10勝、3割、20本塁打くらいいってほしいものだ。

 

 2018年への期待

 

 ついでに、今年、期待することを書いておこう。

 

 まず、近藤健介(日本ハム)の4割達成。

 

 昨年は故障離脱があって、規定打席に足りなかった。57試合出場で、打率4割1分3厘である。ちなみに231打席立って、167打数69安打だ。そもそも100打席以上立って4割を超えたのは、はじめてだとか。

 

 打席を見ていると、全打席ヒットになりそうに見える。でなければ四球。つまり、感覚的には10割打者だから、4割1分を超える結果が出せるのだろう。

 

 日本野球の最高打率は、1986年のランディ・バース(阪神)の3割8分9厘である。

 

 4割打者を見てみたいものだ。

 

 またまた日本ハムだが、清宮幸太郎にももちろん期待する。1年目からそこそこ打つだけのスイングはしていると思う。打率は想像がつかないが、10本以上ホームランを打てるのではないか。

 

 チームで言えば、おそらく、横浜DeNAの躍進に期待がかかるだろう。なにしろ、昨年のCSの戦いぶりは見事だったから。

 

 その一方で、広島の3連覇という期待もある。

 

 その広島と横浜のCSは、横浜が一敗のあと4連勝して勝ち上がった。最終第5戦など9—3で横浜の圧勝。広島からすれば惨敗である。こんなことが起きるのかと茫然としたものだが、このCS最終戦についての面白い文章を見つけた。

 

<あの日の広島の異様な空気が忘れられない。この街で試合が行われているのに、そんなもの行われていないような雰囲気だった。誰もがそこにある不都合な真実からススススス~ッと目を反らしていた>(Athlete2017年12月号「俺のブレ球、君のドヤ顔」清水浩司)

 

 この感覚、よくわかる。横浜には勝てそうにないな、もう見ないことにしよう。なかったことにしよう……そんな心境はたしかに私自身にも働いていたと思うが、清水さんは街全体がそうだったと証言しているのだ。こうも書く。

 

<「どうしてまたも短期決戦で敗れたのか?」「一度流れがマイナスに傾くと立て直せず崩れてしまう原因は何か?」といった問題の検証をした方がいいと思うのだが、そういう話はあまり聞かれない。(略)どうやら人は見たくないものは見ないようにする生き物らしく>

 

 ね。これは名文でしょう。

 

 絶対的なクローザー

 

 だから、ここは私なりに、少しは検証してみよう。横浜戦は8月には3連続サヨナラ負けを喫するなど、苦手意識が芽生えていたのはたしかだ。それに加えて横浜が勢いに乗って攻めてきた。

 

 実は横浜の勢いは、日本シリーズでも変わらなかった。では、広島は崩れてしまい、福岡ソフトバンクは崩れなかった理由は何か。

 

 私はデニス・サファテの存在だったと思う。すなわち、絶対的なクローザーである。

 

 その実、8月の3連続サヨナラ負けは当然ながら、広島はクローザーが打たれている。一方、横浜にも山﨑康晃という、かなり絶対的に近いクローザーがいる。少なくとも広島は打ちあぐねていた。

 

 圧倒的に傾いた流れさえもくい止める、サファテのような絶対的クローザー――。そのあたりに、広島3連覇のカギがあるのではないか。

 

 今年の期待をさらに続けてみましょうか。巨人で言えば、畠世周は飛躍するのではないか。きれいなフォームで角度がある。現在の日本球界の大エースとなった菊池雄星(埼玉西武)と菅野智之(巨人)がさらに実力を上積みできるのか、あるいは去年あたりがピークなのか、という視点もありますね。

 

 それから、阪神のセットアッパー石崎剛も気になる。サイド気味の腕の振りから楽々150キロを超えるボールをくり出す。彼、化けるかもしれません。監督の起用法次第という側面もあるだろうけど。なにせ、こうやって期待を数え上げるというのは楽しいものだ。

 

 ともあれ、私はやはり、大谷の特大ホームランを見てみたい。

 

上田哲之(うえだてつゆき)プロフィール

1955年、広島に生まれる。5歳のとき、広島市民球場で見た興津立雄のバッティングフォームに感動して以来の野球ファン。石神井ベースボールクラブ会長兼投手。現在は書籍編集者。


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