4月の開幕に向けて四国アイランドリーグPlusは長いシーズンオフの真っ最中だ。選手たちは四国や故郷で自主練に励んでいる。昨季、リーグホームラン王に輝いた香川オリーブガイナーズのクリスは、今オフに長打力に磨きをかけて連続キングを狙う。「4番」としてチームを牽引する3年目の覚悟と決意を聞いた。

 

 練習から本塁打狙い

 ホームラン王に輝いたことは非常に喜ばしいことでしたが、目標が二桁ホームランだったので9本という数字には満足していません。むしろ悔しさの方が強かったです。

 

 ただ四国アイランドリーグに入って2年目の昨季、自分自身の成長が感じられたシーズンでした。

 

 前期はホームラン2本と正直、自分でもパッとしない成績でしたが後期を迎えるまでのインターバルで西田真二監督から「練習でもホームランを打ちなさい」と言われました。もう「どんどん打て」と。ホームラン狙いを意識して練習するようになって変わったのは、バットに当たったときにどうスイングすればスタンドまで持っていけるか、そういう体の使い方を覚えられたことですね。ボールのコース、高さによってそれぞれホームランを打つイメージが身につきました。

 

 そのおかげで後期は7本とホームランを量産できて、8月12日には高知ファイティングドッグズ戦で逆転サヨナラホームランを打つなど主軸としての働きができたかな、と思っています。

 

 4番という打順には特にプレッシャーを感じることはなく、4番にいることが快感ですね。西田監督からは「4番が打たないとチームは勝てない」と言われていますが、その重圧も気持ちいい。

 

 監督からは「ランナーがいたらどん詰まりでも何でもいいから打点を稼げ。少々のボール球でも振れ。ランナーがいないときにはスタンドに持っていける甘い1球を狙い打て」と言われています。このオフ、そして開幕までにみっちりと練習をして身につけたいと思っています。

 

 僕は父が日本人、母がメキシコ人のハーフです。兵庫県で育ち小学校2年生から野球を始めました。ずっとキャッチャーをしていて、ヤングリーグ神戸須磨クラブに進んでも中学1年まではキャッチャーでした。ところが、中2からはサードやファースト、内野手に転向したんです。そのときチームのエースが戸田隆矢(広島)で、当時から140キロのストレートとキレのあるスライダーを投げていました。それが捕球できずにキャッチャーミットを取り上げられた格好です……。

 

 高校時代(滝川第二)は同じ兵庫県に桜井俊貴(巨人)がいて、何度も対戦しました。高校時代は彼を得意にしていてボコボコに打っていたんですよ。それが去年の秋、フェニックスリーグで対戦したときには三振だった。向こうも大学、プロを経験して成長してるんだなと感じて、こっちも頑張らないといけないなと気持ちを新たにしました。

 

 大学時代(中央学院大)はほとんど試合に出ることがなかったのですが、香川に入ってから自分は伸びたと思っています。野球選手は高校時代に伸びる人もいれば、大学で伸びる人もいる。そういう意味で僕は大器晩成型なのか、昨シーズンからグッと伸びたと自分でも感じています。

 

 今季の目標は当然、連続ホームラン王ですが目標本数は20本。さらに打点王との2冠を狙っています。アイランドリーグの記録は18本(09年、高知フランシスコ・カラバイヨ)だからそれを超えたいですね。あと守備ではサードを守れるようにオフの間に練習しています。

 

 子供のときに甲子園球場で見た阪神戦の興奮を今でも覚えているんですが、あのとき「代打の神様」と呼ばれた八木裕選手が勝負強くてすごくカッコよかったんです。自分もNPBに進んで、年間を通してホームランの打てる勝負強いバッターになりたいですね。

 

 香川、そして四国の皆さん、これからも応援よろしくお願いします。

 

<クリス プロフィール>
1993年7月19日、兵庫県出身。本名・稲垣将幸。小学2年で野球を始めて、中学時代はヤングリーグ神戸須磨クラブに所属した。ポジションはキャッチャー、中2から内野手に転向。高校は滝川第二に進学、卒業後は中央学院大に進み公式戦出場はほとんどなかったものの卒業後、2016年、四国アイランドリーグPlus・香川オリーブガイナーズに入団した。2年目の17年、チームの主軸を打つようになって覚醒。9本塁打でリーグホームラン王に輝いた。打率2割7分6厘、29打点。後期MVPとベストナインを受賞。身長187センチ、体重98キロ。右投右打。


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