(写真:キャプテンの流<最前列>を中心に2連覇を勝ち取ったサントリーのメンバー)

 13日、日本ラグビーフットボール選手権決勝を兼ねたトップリーグ総合順位決定トーナメント決勝が東京・秩父宮ラグビー場で行われた。昨季2冠のサントリーサンゴリアス(レッドカンファレンス1位)が一昨季2冠のパナソニック ワイルドナイツ(ホワイトカンファレンス1位)を12-8で下した。サントリーはトップリーグは4度目、日本選手権は8度目の優勝。2年連続2冠を達成した。序盤から激しいボールの奪い合いを見せ、サントリーが12-5とリードして試合を折り返す。サントリーは後半無得点ながら、パナソニックの反撃をPG1本で凌いだ。

 

 サントリーvs.パナソニック。2年連続で同一カードとなったトップリーグの2強により決勝戦は手に汗握る白熱した展開となった。

 

(写真:序盤から白熱した攻防を見せた両チームに大きな声援が送られた)

 ここ10年でサントリーが3度、パナソニック(前身の三洋電機時代も含む)が5度の優勝誇る。所属選手も互いにジャパンの主力が揃っており、オーストラリア代表で多くのキャップ数を刻んだワールドクラスの選手も擁するタレント軍団でもある。

 

 昨季トップリーグ、日本選手権を無敗で制したサントリーは、レッドカンファレンスを12勝1敗で1位通過。準決勝ではヤマハ発動機ジュビロ(ホワイトカンファレンス2位)から7トライを奪い、49-7と完勝して決勝へとコマを進めた。

 

 一方のパナソニックはホワイトカンファレンスを無敗で突破した。サントリーについた今季唯一の黒星もパナソニックによるものだ。トヨタ自動車ヴェルブリッツ(レッドカンファレンス2位)を17-11で破って勝ち上がってきた。

 

(写真:沢木監督が「今年一番叱った選手」という中村は先制トライを挙げた)

 試合は序盤から動いた。サントリー自慢のアタッキングラグビーが炸裂した。4分、右サイドでボールを持ったSOマット・ギタウがキックパス。裏のスペースへ転がし、跳ね上がったボールをキャッチしたのはCTB中村亮土だ。中村はスピードに乗ると、パナソニックのディフェンスをかいくぐり、インゴールへ飛び込む。ギタウがコンバージョンキックも決め、サントリーは7点を先制した。

 

 昨季のリベンジに燃えるパナソニックもすぐさま反撃する。攻撃を重ね、ジワリジワリと敵陣深くへと押し込む。右サイドでブレイクダウン(ボール争奪戦)の中、LOヒーナン・ダニエルがうまくボールを拾って、そのままインゴールへとねじ込んだ。CTB松田力也によるコンバージョンキックは左に外れ、同点に追い付くことができなかった。

 

 さらにパナソニックにアクシデントが訪れる。5分に足を負傷したSOベリック・バーンズ。一度はプレーを再開したが、準決勝もケガで欠場していたバーンズはピッチに立ち続けることはできなかった。10分に山沢拓也と交代。ワラビーズ(ラグビーオーストラリア代表の愛称)で51キャップを誇る司令塔の離脱を余儀なくされた。

 

 21分にバーンズに代わって入った山沢がPGを外し、逆転のチャンスを逸する。30分にはFLデービッド・ポーコックが脳震盪の疑いのため、HIA(試合中の脳震盪の検査)で戦線から離れた。ワラビーズで66キャップを刻んだボール奪取能力に優れるポーコックを一時欠いて戦わなければならなくなった。

 

(写真:スペースを巧く使うだけでなく身体を張ってチームに貢献したギタウ)

 ワラビーズの大物はサントリーにもいる。103キャップのギタウは31分のPGこそポストに当てて外したが、すぐさまプレーで取り返した。33分、ギタウは飛ばしパスでWTB江見翔太にアシスト。大外で待ち構えていた江見は「FWが相手を真ん中に寄せてくれていたスペースをついた。ボールを弾かれるのが怖かったのでうまくブロックしながらいきました」と、CTB笹倉康誉のチャージをかわし、山沢を弾き飛ばすようなかたちでトライを奪った。

 

 ギタウがスペースを巧く使い得点を演出。リードを7点差に戻し、前半は12-5で終了した。まだまだどちらに主導権が転ぶかわからない。そんな緊張感を漂わせたまま、後半がスタートした。

 

(写真:後半は24分には1列を一気に代えてパナソニックの反撃を止めた)

 後半に入ると、パナソニックがボールをキープ。幾度もサントリー陣に迫った。山田章仁、福岡堅樹の両ウイングによる突破。LOサム・ワイクス、FL布巻峻介らFW陣もボールを前に運んだ。どちらかと言えば攻撃のイメージが強いサントリーだが、LO真壁伸弥、No.8ショーン・マクマーンらが身体を張って凌ぐ。

 

 追うパナソニックは16分に山沢のPGで、1トライで逆転できる点差まで詰めた。その後も押し気味に試合を進める。だが、インゴール目前まで迫りながら、なかなかトライを獲り切れない。時間ばかりが過ぎていった。

 

(写真:ノーサイドの瞬間、勝者は歓喜に沸き、敗者は悲嘆に暮れた)

 後半も40分が経過し、場内にホーンが鳴り響く。パナソニックは逆転のラストチャンスにかける。敵陣深くでラインアウトを獲得。モールを組んでゴールに迫ったが、ボールをキープできずサントリーに奪われる。選手たちが覆い被さり、ボールが出てこないと見るや、レフェリーが笛を吹いて試合を止めた。歓喜に沸くサントリーフィフティーン。この瞬間、2年連続2冠がサントリーの手に渡った。

 

 サントリーの沢木敬介監督は「今シーズンのベストゲームだった」と胸を張る。「どこよりもハードワークしてきたと自信を持って臨んだ。我慢強く、素晴らしいパフォーマンスだったと思います」と選手たちを称えた。

 

(写真:攻守で躍動した松島。現在のサントリーには欠かせぬ存在だ)

 キャプテン2年目の流は「苦しい状況でどちらに転ぶかわからない試合だった」と振り返る。勝敗を分けたのは「気持ちの部分」と口にする。苦しい時間や劣勢の場面をサントリーでは「プライド・タイム」と呼ぶ。それを試合中に発することで、気持ちのギアをさらに上げる。流によれば、この日のゲームでは選手たちから口々に発せられたという。

 

 2強の激しいつば競り合いは、肉体的にも精神的にもタフさを見せつけた昨季王者に軍配が上がった。

 

(文・写真/杉浦泰介)