(写真:キャプテンの大澤<手前>をはじめ、選手・監督は手応えを口にした)

 30日、アイスホッケー女子日本代表(スマイルジャパン)の平昌五輪壮行試合「スマイルジャパン ブリヂストン ブリザックチャレンジ」が東京・ダイドードリンコアイスアリーナで行われた。世界ランキング9位のスマイルジャパンは同8位のチェコ女子代表と対戦。スマイルジャパンは開始早々にFW久保英恵(SEIBUプリンセスラビッツ)とFW高涼風(道路建設ペリグリン)のゴールでリードを奪う。第1ピリオドを3-0で終えると、第2ピリオドで1点を加点。チェコに1点を返されたものの、第3ピリオドは無失点に抑えて4-1で勝利した。スマイルジャパンの平昌五輪初戦は10日、世界ランキング5位のスウェーデン女子代表と対戦する。

 

 平昌五輪に向けて国内の最終調整となる壮行試合4戦。スマイルジャパンは4連勝で終え、目標のメダル獲得へ弾みをつけた。

 

(写真:先制点は練習で取り組んでいたかたちから生まれた)

 28日の試合では完封勝ちを収めたものの、決定力不足の課題が浮き彫りになったスマイルジャパン。2日前の鬱憤を晴らすように序盤から飛ばした。開始から1分も経たぬうちにゴールを奪う。左サイドからのFW床秦留可(SEIBUプリンセス)のパスに久保が合わせて先制に成功した。追加点が入ったのは1分17秒、FW獅子内美帆(トヨタシグナス)のシュートのこぼれ球に高が詰めた。

 

 第1ピリオドはスマイルジャパンのペースで進んだ。敵陣でプレーする時間が多く、12分45秒にはDF堀珠花(トヨタシグナス)が追加点を挙げた。2度あったマイナーペナルティー(2分間の一時退場)によるキルプレー(数的不利の状況)も無失点に抑えた。シュートはチェコの3本に対し19本と圧倒した。

 

 続く第2ピリオドもスマイルジャパンが優位に試合を運ぶ。DF床亜矢可(SEIBUプリンセスラビッツ)のミドルシュートに始まり、キャプテンのFW大澤ちほ(道路建設ペリグリン)がスピードを生かした鋭い突破から相手のファウルを誘う。いずれも得点にこそ繋がらなかったが、それぞれが持ち味を発揮した。

 

 6分8秒にFW中村亜実(SEIBUプリンセスラビッツ)のゴールで4点差にリードを広げた。しかし6分38秒にFW寺島奈穂(Daishin)がマイナーペナルティーを犯してしまう。キルプレーの時間帯に今度はDF竹内愛奈(Daishin)もマイナーペナルティー。2人少ない状況に陥った。すると、その時間帯にチェコが反撃。GK藤本那菜(ボルテックス札幌)を中心に凌ぎ切りたかったが、スコアを許した。

 

(写真:浮田<15>は両軍最多の10本のシュートを放った)

 3点差に詰められたスマイルジャパン。第3ピリオドは互いに無得点で終了した。スコアは4-1。終わってみればスマイルジャパンのフィールドプレーヤー全員がシュートを放った。50本以上のシュートで3得点は寂しい気もするが、一発で仕留めるよりもスクリーンしたプレーヤーがコースを変えたり、リバウンドを狙う戦法を選んでる以上は仕方のない部分もあるだろう。

 

 国内の最終調整試合4戦を終えて、山中武司監督は「いろいろなかたちの勝ち方ができた」と語る。世界ランキング7位のドイツ女子代表とは6-0、3-1だった。初戦は第2ピリオドのゴールラッシュで完勝。2戦目は第1ピリオドに反則犯すなど相手にペースを許し、先制を許した。それでも第2ピリオド以降、立て直して逆転勝ちを収めた。対戦相手がチェコに変わった3戦目は、決定力不足に苦しんだものの、守備陣が奮闘して1-0の完封。この日の4戦目は序盤に得点を重ね、試合を優位に進めた。

 

 ドイツもチェコも平昌五輪には出ないとはいえ、中1日の日程を含め本番に向けていい調整となった。「4試合ともいろいろなパターンを経験し、確認することができた」とFW米山知奈(道路建設ペリグリン)が話せば、キャプテンの大澤は「すべてのシチュエーションで勝ち切れた」と、悲願の表彰台へ手応えを掴んだようだ。

 

(写真:機動力のあるホッケーで世界に挑むスマイルジャパン)

 目標のメダル獲得は決して容易いものではない。予選ラウンドは下位グループのB組に入り、スウェーデン、スイス女子代表と格上と対戦する。加えて多くのホームアドバンテージを得るであろう韓国女子代表と北朝鮮女子代表の合同チームともぶつかる。ここで2位以内にならなければ決勝トーナメントには進めない。

 

 4年前のソチ五輪でもスマイルジャパンはメダル獲得を目標に掲げていた。前回もキャプテンだった大澤は「(当時とは)環境も状況も違う。オリンピックに出るチームだったのが、今はメダル争いをできるチーム」と言い切る。守備の要である床亜矢可も前回との違いを口にする。「ソチオリンピックは出場権獲得から1年でメダルに目標を上げました。今回はソチで負けてから本気で目指した4年でした」

 

 1勝もできなかったソチ五輪からの4年間で成長した自信がある。2大会連続のオリンピック出場となる米山は「守りも堅くなって攻めのアイデアも増えてきた。4年前よりも自信を持って戦える」と胸を張る。「私たちらしく笑顔で終われたらと思っています」とは大澤。スマイルジャパンの代名詞である笑顔が、平昌のリンクで咲き誇る。そのための準備はしてきたつもりだ。彼女たちの4年間の答えが2月10日からの決戦で示される

 

(文・写真/杉浦泰介)