16日、平昌五輪フィギュアスケート男子シングルショートプログラムが行われた。日本勢は羽生結弦(ANA)が1位、宇野昌磨(トヨタ自動車)が3位、田中刑事(倉敷芸術科学大大学院)が20位で、それぞれ17日に行われるフリースケーティング進出を決めた。

 

 日本勢で最初に登場したのは22番滑走(第4組)の田中だ。直前の6分間練習で4回転ジャンプの感触は良かった。ゲイリー・ムーア『Memories』が流れ田中の演技が始まった。

 

 最初に予定していた4回転サルコウは回転不足により転倒。しかし、「最初の失敗を引きずらないように心掛けた」とここから持ち直す。続く3回転フリップ、3回転トゥループの連続ジャンプを見事に決めた。フライングキャメルスピン、足替えのシットスピンとスピードを落とすことなく滑る。そして、最後のジャンプ、トリプルアクセルをピタリと決め技術点40.30、演技構成点40.75、減点1のトータル80.05点の20位で明日のフリーに進出を決めた。田中は「今回の失敗を受け止めて、フリーは4回転を3つ入れているので頑張りたい」と抱負を口にした。

 

 日本勢2番目の登場は25番滑走(第5組)、ソチ五輪王者の羽生だ。右足首の故障で約4カ月も実戦から遠ざかっている。復帰の舞台がこの平昌五輪だ。6分間練習でも着氷する右足の感触を確かめるために時間を使った。

 

 練習を終え再度、羽生がリンクに登場すると会場は大歓声に包まれた。3度世界記録を出した勝負曲のショパン『ピアノ曲バラード第1曲』が流れると、瞑っていた目をゆっくりを開き、滑り出した。徐々に加速し、最初の4回転サルコウを見事に決めて波に乗る。フライングキャメル、ドーナツ、足替えシットと3つのスピンのあとは、曲に合わせて優雅に舞った。そして、トリプルアクセルも難なく決めると、続く4回転トゥループ、3回転トゥループの連続ジャンプも見事成功。着氷の瞬間、ガッツポーズを作ったようにも見えた。

 

 最後まで王者の風格を見せつけ、美しく強い羽生の復活を印象付けた。日本のエースが叩き出した技術点は63.18、演技構成点48.50、減点なし。111.68点で文句なしの1位通過だ。圧巻の演技で会場を魅了した。

 

 リンクを後にした羽生は自身の演技をこう振り返った。

「特に不満なく、疑問に思うエレメンツもなく、嬉しく思います。滑走順、サポートメンバー、ファン含め自分は恵まれているなと思います。僕はオリンピックを知っている。(前回のソチ五輪の)フリーでのミスがあり、この4年で強くなった。明日はリベンジ」

 完璧な演技を追い求めるエースの演技に注目だ。

 

 海外勢2人を挟んだ28番滑走(第5組)で宇野がリンクに登場。会場の雰囲気に飲まれることなく自分の演技に集中した。曲はビバルディ『四季』協奏曲第4番『冬』。世界で初めて自身が成功させた4回転フリップを決めると、フライングキャメルスピン、ステップシークエンスでつなぎ、4回転トゥループ、3回転トゥループの連続ジャンプ。綺麗に着氷し、このあとのトリプルアクセルは本人曰く「回り過ぎた」ためバランスを崩したがなんとかこらえて減点はなし。

 

 演技が終わると大きくガッツポーズを作った。「完ぺきではないが今のコンディションで満足いったのでガッツポーズが出た」と宇野。技術点58.13、演技構成点46.04の104.17点。3位でフリースケーティングに駒を進めた。

 

 明日は羽生、宇野が何色のメダルを胸に飾るか、田中はどこまで順位を上げられるのか。注目ポイントが多い男子フリースケーティングとなる。

 

(文/大木雄貴)