スーパーバンタム級・松本、王座奪取ならず ~ボクシング世界戦~
「完敗だった」
大橋秀行会長は控室で肩を落とす。隣に座る松本の顔は腫れ上がり、被弾したパンチのダメージを窺わせた。
24歳での世界王座奪取。同じ聖地・後楽園ホールで戴冠劇を期待していた。28年前の自分とダブる点が多く、前日の調印式の席でも「いろいろ偶然が重なっているので明日は勝つ雰囲気」とコメントしていた。
KO率8割6分4厘の松本に対し、ローマンは4割に満たない。戦績で見れば松本に強打の印象を与えるが、リング上の差し合いではローマンが上回った。ボディを軸に攻める王者に松本はリズムを掴めなかった。
松本がパンチを当ててもローマンは返してくる。互いにグラつくほどの一打はなくともローマン優勢を感じさせるまま時間は過ぎていった。すると松本の顔面への被弾が目立つようになる。
ローマンの足が止まりスタミナ切れかと思われるラウンドもあったが松本はラッシュを仕掛けるまでには至らない。それどころかラウンド終盤にはきっちり盛り返す。ほぼ攻め手を緩めることはなかった。
ゴングが鳴り、それぞれのコーナーに戻る。勝者は火を見るより明らかだった。ローマンは「試合を支配できた」と勝利を確信していた。ジャッジは1人が118-110、2人が119ー109で王者を支持した。ユナニマスディシジョンでローマンが圧勝。初防衛に成功した。
オレンジの法被を着た松本の応援団が客席を染めた。しかし観衆のほとんどが望んだであろう王者交代は起きなかった。ランキング11位からの“革命”ならず。大橋会長に続く横浜高校出身の世界王者にはなれなかった。
「今日は相手のペースでやられてしまった」と松本。プロデビューから2つ目の黒星を喫した。6年2カ月で掴んだ世界挑戦のチャンスだったが掴み取ることはできなかった。「もっと練習しないとダメ。今までが甘かった」と再起を誓った。
(文・写真/杉浦泰介)


