(写真:V4を勝ち取り、歓喜に沸く北國銀行)

「ANA CUP第42回日本ハンドボールリーグプレーオフ」が25日、東京・駒沢体育館で行われた。女子決勝はレギュラーシーズン1位の北國銀行Honey Beeが同2位の広島メイプルレッズを23-21で破り、4年連続5度目の優勝を達成した。男子は同1位の大崎電気OSAKI OSOLが同2位のトヨタ車体BRAVE KINGSを30-26で下した。大崎電気は3年連続5度目の制覇。女子の最高殊勲選手賞(MVP)はチーム最多タイの5得点を挙げたライトバック(RB)角南唯が選ばれた。男子のMVPは両軍最多の7ゴールのレフトバック(LB)信太弘樹が輝いた。

 

 接戦を制した北國銀行がV4を成し遂げた。

 

(写真:最優秀ディフェンダー塩田<5>を中心に堅い守りが武器)

 レギュラーシーズンを22勝1分け1敗と他を圧倒した北國銀行だが、唯一の黒星を喫したのが広島だ。レギュラーシーズンの対戦成績は1勝1分け1敗と五分。エースのセンターバック(CB)李美京は韓国出身。197ゴールで得点王に輝いたレギュラーシーズンMVPだ。日本代表のゴールキーパー(GK)寺田三友紀、LB塩田沙代、ピヴォット(PV)永田美香を擁し、リーグ最少失点を誇る北國銀行は堅守で対抗する。

 

 先制したのは広島。1分20秒に李美京が中央から右に流れ、逆サイドのゴールに叩き込む。2年連続プレーオフ決勝に進んだ広島は13年ぶりの優勝に向け、エースが口火を切り、上々の滑り出しを見せた。2分後にはレフトウイング(LW)石川紗衣が追加点を挙げる。一方、4連覇を目指す北國銀行は4分以上無得点。4分2秒に決まった角田のゴールでスコアがようやく動いた。

 

(写真:要所要所で寺田の好セーブが光った)

 荷川取義浩監督が「伝統的にアグレッシブで、運動量で守る」という北國銀行。キャプテンの塩田がそれを体現するかの如く、身体を張ったプレーを見せる。しかし、序盤はファウルになる場面が目立つ。開始早々に警告を受けていた塩田が、5分2秒には2回目の警告2分間の一時退場を命じられる。北國銀行は守備の要を欠く時間を強いられる。

 

 それでも北國銀行の蜂たちは、広島ゴール目がけて襲い掛かる。1-3の場面から3連続得点で逆転に成功。その最初のゴールは数的不利の時間帯である。徐々にリズムを掴んでいき、CB横嶋彩とLB河田知美の攻撃陣も得点に絡んでいく。前半は10-9と1点リードで終了した。

 

(写真:塩田<5>のインターセプトからカウンターで追加点)

 後半に入っても拮抗した状態は続く。一進一退の攻防の中で試合が動いたのは残り時間2分を切ろうかというところだ。21-20と北國銀行1点リード。ディフェンスの場面で塩田が広島のボールに食らいつく。守備の要によるパスカットからのカウンターで得点を加え、点差を広げた。勝利を大きく手繰り寄せるビッグプレー。ここで最後尾の寺田が「まだまだ!」と檄を飛ばす。

 

 前キャプテンによる叱咤には理由がある。5年前のプレーオフ決勝で後半に3点をリードしながら5得点を奪われて逆転負けを喫したからだ。「絶対締めないといけないと思ったので怒りました」。気を引き締め直した北國銀行は2点リードを守り、逃げ切った。これで日本リーグは4連覇。今シーズンは全日本社会人選手権、国民体育大会と合わせて3冠達成だ。

 

(写真:4年間のファイナルで一番拮抗した試合を制した北國銀行)

 荷川取監督は「60分間我慢して僅差をモノにした。集中力を切らさずやった結果」と選手たちを称えた。キャプテンの塩田は「監督からは『1個1個を丁寧に』と言われました。それを自分たちは徹した」と胸を張った。

 

(文・写真/杉浦泰介)