いよいよ3月30日からプロ野球が開幕します。今年もキャンプやオープン戦を通じて、将来が楽しみな若手選手がグッと伸びてきました。今回は広島などで活躍した川口和久さんに話を伺いました。広島待望の若手サウスポー高橋昂也投手のピッチングは往年の名サウスポーの目にどう映ったのでしょうか。

 

 結果ではなくて内容

 高橋昂也投手はキャンプで緒方孝市監督から「キャンプ監督賞」をもらうなど2年目を非常に順調に過ごしています。オープン戦も2試合に投げて自責点0ですから、広島ファンの皆さんが期待するのもよく分かります。彼のような若いピッチャーの活躍を見たいと願うのはプロ野球ファンなら当然ですね。

 

 高橋投手をキャンプ、オープン戦で見ていて思ったのは、まだ球が高いということ。低めのコントロールを磨かないと1軍の一流バッターは抑えられない。2軍では少々高くても勢いのあるボールを投げておけば抑えられますが、1軍では無理です。対戦数が少ないうちは抑えられても、2度目、3度目となれば絶対に一流バッターは高めをミスショットしませんからね。

 

 開幕1軍は当確の高橋投手は今季、序盤は勉強と研究の時間ですね。1軍で打たれたら「どうして打たれたのか」を勉強し、抑えたら「なぜ抑えられたのか」をさらに研究する。そうやっていろいろなものを吸収して一流のピッチャーに成長してもらいたい。

 

 1軍で成功するかどうか、それは対応力があるかどうかです。打たれるのは仕方ないけど、次にまた同じ失敗をしてはプロ失格です。打たれたらその都度、対応していく。バッターも対応してくるから、プロというのは対応力と対応力の勝負です。

 

 今季、高橋投手のピッチングで注目したいのは、キャッチャーの要求するボールを1イニングで何割ちゃんと投げられるかということです。ブルペンはピッチャーからサインを出して「ストレート投げます」「次、カーブ放ります」と投げられるけど、実戦のマウンドはキャッチャーに主導権があります。広島なら會澤翼捕手らの要求に、どれだけの精度と確率で応えられるか。抑えたからという結果ではなくて、キャッチャーの要求どおりに投げられたかどうか。若手ピッチャーの成長と進歩をそういう視点から見るのも面白いものですよ。

 

 高橋投手は大きくゆったりしたフォームが魅力で、それで変化球もスライダー、フォークと良い物を持っている。低めの制球力をつけるのが課題だと言いましたが、でも小さなフォームにはなってほしくない。制球力を磨きながら、スピードも両立させてほしい。

 

 サウスポー不足といわれる広島にとって高橋投手は待望の孝行息子です。今季、1軍で鍛えられてどこまで大きく伸びるのか非常に楽しみですね。

 

<川口和久(かわぐち・かずひさ)>
1959年7月8日、鳥取県鳥取市出身。鳥取城北高を卒業後、デュプロを経て、81年にドラフト1位で広島に入団。入団3年目に15勝マークすると、86年から91年までの6年連続で2ケタ勝利を挙げ、最多奪三振を3度(87年、89年、91年)受賞した。左腕エースとして活躍し、チームを3度のリーグ優勝に導いた。94年オフに球団史上初のFA権を行使して巨人に移籍。95年にプロ野球史上14人目(当時)となる2000奪三振を達成。98年限りで現役を引退すると、野球解説者の道に進む。09年、10年に巨人の春季キャンプで臨時投手コーチを務めた後、11年に投手総合コーチに就任。4年間で3度のリーグ優勝に導いた。現在は野球解説者として活躍する。通算成績は139勝135敗2092奪三振。身長183センチ、体重75キロ。左投両打。


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