第841回 西武・伊藤が示した独立Lの新たな可能性
2005年に産声を上げた日本初のプロ野球独立リーグ「四国アイランドリーグplus」は、この春、14年目のシーズンを迎える。この13年間で53人の選手をドラフトでNPBに送り出した。育成リーグとしては上々の成果だろう。
周知のようにアイランドリーグの創設者は西武などで活躍し、オリックスの監督も務めた石毛宏典だ。開幕戦でのスピーチは、今も私の耳の奥に残っている。「花壇ができました。100名のタネを持った若者が花を咲かせようと今日から努力します。皆様方の水と肥料が必要です」
アイランドリーグ発足当初は冷ややかな声が多数を占めていた。四国にやってくる選手たちのほとんどは、いわばアマチュアの“落ちこぼれ”で、NPBのスカウトの評価も概ね低かった。
しかし「花壇」さえ整えば、芽を出す「タネ」もある。その代表的な成功例が侍ジャパンのメンバーにも選出された高知出身の角中勝也(千葉ロッテ)と香川出身の又吉克樹(中日)である。
その又吉の侍ジャパン入りに触発されて四国行きを決めた選手がいる。昨年のドラフトで埼玉西武から3位指名を受け、入団した徳島出身の伊藤翔だ。横芝敬愛高時代、千葉ではそれなりに名の知られた投手だったが、高3夏の県大会は3回戦止まり。ドラフトにはかからなかった。なぜ大学や社会人ではなかったのか。
本人は語っている。「プロへ行くのに大学に進学したら4年、社会人でも3年は待たなければならない。だけど独立リーグなら1年目からドラフトで指名されるチャンスがある。そこが魅力でした」
創設初年度から指導者として育成に携わっている香川監督の西田真二によれば「これほどの選手がなぜドラフトにかからなかったのか不思議」。そして、こう続ける。「高卒ながら完成度が極めて高かった。タイプで言えば中日の浅尾拓也。彼が早いうちにプロで活躍すれば、最短1年でNPB入りできる独立リーグ入りを目指す選手はさらに増えるでしょう」
伊藤はオープン戦で防御率1.17と結果を残し、開幕1軍入りを決めた。このニュースを私は出張先の四国で聞いたが、約120人のアイランドリーガーには大きな励みとなったに違いない。後発のBCリーグには約250人の選手がいる。伊藤には「独立リーグの星」を目指してもらいたい。
<この原稿は18年3月28日付『スポーツニッポン』に掲載されています>