日本サッカー協会はロシアワールドカップまであと2カ月に迫った段階でヴァイッド・ハリルホジッチ監督の解任に踏み切った。

 

 昨年8月31日にオーストラリア代表に勝ってアジア最終予選突破を決めて以降は結果も内容も低調なゲームが続いていた。勝てなかった3月のマリ戦、ウクライナ戦を終え、田嶋幸三会長が決断を下した。

「選手とのコミュニケーションや信頼関係が多少薄れてきて、今までのことを総合的に評価してこの結論に至った」と説明している。とはいえ、解任に向けた前触れが何かあったわけではない。筋道立てた「プロセス」が抜け落ちていた。この点に筆者は強い危惧を覚えずにはいられない。

 

 ハリルホジッチ監督を評価するのは本来、技術委員会の役割である。

 評価しているのであれば「続投」だし、もし評価していないとするならばノルマを設けるべきだったと思っている。後者の立場であるならば昨年12月の東アジアE-1選手権でライバルの韓国を相手に1対4と完敗しており、今回のベルギー遠征を前に「次の試合で判断させていただく」と本人に通達していればどうだったか。

 

 おそらく指揮官はテストに踏み切らず、勝利により固執したはず。技術委員会としてもハリルホジッチ監督で本番を戦えるかどうかを見極めることができたと思うのだが……。もし解任に踏み切ったとしても、そのプロセスを踏んでいれば“後任”の準備もいささか早く始められたのではないだろうか。しかしいずれにせよ、ハリルホジッチ監督に対する技術委員会の評価がはっきり見えてこなかった。だからこそこの解任劇には違和感が拭えなかった。

 

 そして筋道から言えば、新しい監督は技術委員会に人選させるべきであった。

 技術委員会の役割は(1)フル代表をはじめ代表強化や育成の指針を示す(2)監督を選定する(3)監督、代表チームをサポート及び評価する(4)指導者を養成する、などなど。言わば強化の中枢部である。

 

 ハリルホジッチ監督に対する評価を踏まえてどんなサッカーをすべきか、そのうえでこの緊急事態を乗り切るために誰に託せばいいのか――。それもまた「プロセス」だ。“緊急事態だから”と言ってその手順を踏まないのは、技術委員会を軽視する行為と受け取られてもおかしくない。

 

 サポートだけが彼らの仕事ではない。むしろ重要なのは、評価すること。日本サッカーを客観的かつ専門的かつ継続的に評価できてこそ、日本サッカーのロードマップを提示することができると言える。

 

 西野朗技術委員長の監督としての実績は申し分ない。ただ「西野さんが監督になるんだからそれでいいでしょ」で済ませていい話ではない。プロセスなき解任と後任選びに、日本サッカーの問題点がある。

 

 新技術委員長にはロンドン五輪代表監督の関塚隆氏が就任した。これを機に、技術委員会の在り方をもう1度見直してもらいたい。

 

 きちんとロードマップを提示でき、きちんと評価できる技術委員会にしなければ日本サッカーに未来はないと思っている。

 

 強化には「プロセス」が大切である。日本協会はその点をしっかりと噛みしめるべきではないだろうか。


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