今季の独立リーグ日本一を決定する「日本独立リーグ・グランドチャンピオンシップ2013」が19日、開幕する。対戦するのは元北海道日本ハムの木田優夫を擁し、BCリーグを2年ぶりに制した石川ミリオンスターズと、こちらも2年ぶりに四国アイランドリーグplusの年間王者に輝いた徳島インディゴソックス。両者はいずれもリーグチャンピオンシップを3連勝で勝ち上がっており、勢いがある。ハイレベルな戦いが期待できそうだ。同チャンピオンシップでの石川と徳島の対決は2年前に続いて2度目。一昨年は石川が徳島を3連勝で下し、BCリーグ勢で初の日本一に輝いた。石川がその再現をみせるのか、それとも徳島が雪辱を果たすのか――。“もう1つの日本シリーズ”に臨む両チームの戦力を分析する。
石川ミリオンスターズ
★今季成績(北陸地区)
前期 19勝14敗3分 勝率.576(1位)
後期 15勝21敗0分 勝率.417(3位)
北陸地区チャンピオンシップ 2勝1敗1分(対福井)
リーグチャンピオンシップ 3勝0敗(対新潟)

 “勝利の方程式”へつなげるか!? 命運握る投手陣

 最大のカギを握るのは、やはり投手陣と言っていいだろう。チームの大黒柱である南和彰(神港学園高−福井工業大−巨人−カルガリー−バイパーズ)を中心に上條優太(八千代東高)、高孝(神戸国際大附高−愛知工業大)が先発、中継ぎとフル稼働し、7回までに1点でもリードして、マルティネス(マリナーズ−ハワイスターズ)、木田優夫(日大明誠高−巨人−オリックス−タイガース−オリックス−ドジャース−マリナーズ−東京ヤクルト−北海道日本ハム)の“勝利の方程式”につなぐことができれば、自ずと勝利の道は拓ける。また、中川貢輔(金沢市工高)、松山傑(横浜商科大附高−北海道日本ハム−横浜DeNA)らが、南、上條、高の負担を軽減させるピッチングができるかどうかも重要なポイントとなる。

 入団6年目を迎え、32歳とリーグでは大ベテランと言っても過言ではない南だが、今季も奪三振数はリーグ2位の112個と、剛腕ぶりは健在だ。さらに防御率2.47と安定感も兼ね備えており、不動のエースとしてチームからの信頼は厚い。今季は30試合に投げ、リーグ2位の12勝(9敗)を挙げた。

 ランナーを出しても、失点しても、すぐに気持ちを切り替えることのできるメンタル面でのタフさは、プレッシャーのかかる短期決戦の強さにもつながっている。昨季までのプレーオフ(地区、リーグ、独立リーグの3つのチャンピオンシップ)では、通算20試合に登板し、8勝2敗4セーブをマークしている。今回と同じ徳島インディゴソックスと対戦したリーグ初の独立リーグ日本一となった2011年の独立リーグチャンピオンシップでは、2試合に先発。第1戦は8回7安打2失点、優勝を決めた第3戦では8回2/3を5安打1失点でチームを勝利に導いている。

 今季のプレーオフでも3試合に先発し、2勝(0敗)を挙げている。その2勝は新潟とのリーグチャンピオンシップでの勝利。第1戦、第3戦に先発し、いずれも最多勝、最優秀防御率の2冠に輝いた寺田哲也(作新学院高−作新学院大)との投げ合いを制しての価値ある白星だった。特に優勝を決めた第3戦では7回5安打無四球で無失点に抑える快投で、勝利を呼び込む立役者となった。舞台が大きければ大きいほど、力を発揮するのが南なのだ。 

 その南に次ぐ先発は、今季一番の成長を見せた2年目のサウスポー上條優太(八千代東高)だ。高校まで外野手だった上條は、投手としての素質を見込まれて入団したものの、投手1年目の昨季は、投げれば四球を出すというコントロールに難のあるピッチングで、登板は8試合にとどまり、0勝1敗、防御率9,00。いつクビを宣告をされてもおかしくはなかった。その上條が、今季は大きく飛躍した。下半身の使い方を覚え、さらにその下半身を強化したことで、ムダな力みのない、ゆったりとした腕の振りから、最速144キロの伸びのあるストレートを主体とするピッチングをマスターした。後期には先発ローテーション入りを果たし、5勝をマーク。防御率は寺田の1.35に次ぐリーグ2位の1.75と抜群の安定感でチームに貢献した。

 プレーオフでも2試合に先発。リーグ優勝に王手をかけた新潟とのリーグチャンピオンシップ第2戦では5回2/3を投げ、毎回のようにランナーを背負いながら、結果的には最少の1失点に抑える粘投で先発としての役割を十分に果たしてみせた。その上條が徳島とのチャンピオンシップではホームで迎える開幕戦で先発する可能性は十分に考えられる。スライダー、フォーク、スプリットなど変化球も多彩で、コーナーを低めに突く、丁寧なピッチングで粘りが身上の上條。初めて対戦する徳島にとっては、やっかいなピッチャーとなりそうだ。

 打線での注目は、シーズンを通して好調をキープし、打率3割2分9厘(リーグ6位)、38打点(同7位)をマークした3年目の富永裕也(星稜高−大阪体育大)だ。下半身でしっかりとバランスが取れたバッティングは、昨季までのような体勢のブレがなく、たとえタイミングがずれても、前に泳がせられても、バットに当てることができ、差し込まれても振り抜くことができる。

 だが、プレーオフでは富永との勝負を避ける場面が多く、石川は苦戦を強いられた。それでも福井との地区チャンピオンシップでは0勝1敗1分と追い込まれた第3戦で2番・タカがチームを救うサヨナラホームラン。新潟とのリーグチャンピオンシップでは3番・サンチェスの決勝点となる先制2ランで先勝。続く第2戦ではそのサンチェスが敬遠されて1死満塁となった場面で、4番・バルディス、5番・富永が連続タイムリーを放つなど、日替わりでヒーローが誕生している。どこでヒーローが出て来るかわからないだけに、相手投手にとっては、気を緩めることができない。

 さて、今季の石川にはいい意味での“嫌らしさ”がある。石川は後期、15勝21敗と、6つの借金を背負ったまま北陸地区の最下位に終わった。その最たる原因となったのが、新潟アルビレックスBCである。後期の対戦成績は0勝4敗。前期を合わせると6連敗を喫していた。実は新潟に苦戦しているのは、今季だけの話ではない。昨季の後期も同じ北陸地区の福井、富山サンダーバーズと3チームそろって0勝6敗と全敗を喫したのである。

 無論、石川と新潟とのリーグチャンピオンシップは、新潟が圧倒的に優位だと考えられていた。ところが、ふたを開けてみれば、その予想は完全に覆された。石川が無傷の3連勝で、新潟からリーグチャンピオンの座を奪還したのだ。しかも最後の3試合目は3−0での完封勝ち。打率、打点ともにリーグトップの新潟打線を完全に封じた見事な試合だった。

 優勝した前期においても、終盤まで首位を走っていたのは富山だった。ところが、富山は優勝マジックを点灯させながら、4連敗を喫し、2位に陥落。そして、その4連敗のきっかけとなったのが石川戦での2連敗だった。富山とは対照的に石川は富山戦での2連勝で勢いを増し、トップに躍り出ると、そのまま優勝してしまったのだ。

 言い方は悪いが、“いいとこ取り”である。しかし、それができるのは、“勝ち時”を知っているからに他ならない。監督就任4年目を迎え、リーグ優勝3回、11年にはリーグ初の独立リーグ日本一達成に導いた森慎二監督、入団6年目のベテランエース南、そして日米あわせて8球団を渡り歩いてきた木田と、BCリーグ、野球を熟知した彼らの成せる業なのか――。2年前、無傷の3連勝で破った徳島相手にも、“勝ち時”を見逃してはならない。


徳島インディゴソックス
★今季成績
前期 20勝17敗3分 勝率.541(2位)
後期 24勝9敗7分 勝率.727(1位)
リーグチャンピオンシップ 3勝0敗(対香川)

 盤石な勝利の方程式&切れ目ない打線

「最近のアイランドリーグの歴史を振り返ってみても、完成度が高い」
 そう対戦した他球団の監督、コーチが評する今季の徳島は成熟したチームだ。在籍2〜4年目の選手たちが主力となり、ここに広島からの派遣選手や外国人助っ人が加わって、シーズンを通じて安定した戦いぶりをみせた。特に後期は夏場に10連勝。7割を超える驚異的なペースで勝ち星を重ねると、リーグチャンピオンシップでは前期覇者の香川に3連勝と圧倒した。

 強さの要因は投打のバランスの良さだ。投手陣では先発にリーグチャンピオンシップの初戦で7回1失点と好投した岩根成海(私立出雲西高−帝京大)、2年連続で2ケタ勝利をあげた山口直紘(桜丘高−明治大(休学中)−千葉熱血MAKING)に、広島から派遣されている小松剛(室戸高−法政大)と3本柱が揃う。特に岩根は緩急を使って、コーナーに投げ分けるピッチングが冴え、後期だけで7勝をあげた。おそらく初戦の先発が濃厚だろう。
(写真:リーグチャンピオンシップでは先発、中継ぎとフル回転した小松)

 勝ちパターンの方程式も盤石だ。防御率0.81と安定感を誇った入野貴大(岡豊高−プロ育成専門学校−愛媛)がセットアッパー。セーブ王(21セーブ)に輝いたオナシス・シレット(サンマルティンデポレ高−ドミニカカープアカデミー)が最後を締める。NPB入りを目指す入野はボールのキレはもちろんスタミナがあり、リーグチャンピオンシップ後にはみやざきフェニックス・リーグに参加して3連投とアピールした。終盤のイニングまたぎも辞さない構えで、7回以降リードする展開に持ち込めば、高い確率で勝ちが見込める。石川はリーグ2位となる109盗塁を決めており、キャッチャー小野知久(倉敷商高−IPU環太平洋大−和歌山箕島球友会−香川)とのバッテリーで相手の足には注意したい。

 打線は4番の大谷龍次(樟南高−日立製作所厚木−千葉ロッテ)を軸に切れ目がない。昨季途中から就任した長内孝コーチの熱心な指導もあり、ファーストストライクから積極的にバットを振ってくる。機動力も使える吉村旬平(光明相模原高)、東弘明(八日市南高)の1、2番コンビが出塁し、3番・大谷真徳(世田谷学園高−立正大)と4番・大谷龍の“W大谷”で還すのが得点パターンだ。特に大谷真はリーグチャンピオンシップでは3試合連続でタイムリーを放ってMVPに輝き、波に乗っている。下位打線にもポイントゲッターの松嶋亮太(浜田高−大分大)、一発長打が魅力の小野が控え、石川投手陣を苦しめそうだ。
(写真:リーグ2位の打率.332と1年を通じて好調だった大谷真)

 石川には2年前のグランドチャンピオンシップでは1勝もできず、アイランドリーグ勢で初めて独立リーグ日本一の座を逃した。昨年もアイランドリーグ王者の香川は新潟に3タテを喫し、優勝をさらわれている。それだけに「BCリーグをストップし、日本一を奪回するのは徳島しかいない」と島田監督の意気込みは強い。前回は徳島にとって球団初の大舞台だったが、今回は岩根、東、大谷龍、大谷真、松嶋ら2年前の戦いを経験したメンバーが7名も残っている点は強みだ。

 今年で7年目を迎えるグランドチャンピオンシップでは初戦を制したチームが過去5回、日本一に輝いている。2011年も石川がホームで連勝して流れをつかみ、徳島に乗り込んで一気に決着をつけた。今回も石川で第1戦、第2戦を行う日程のため、徳島としては是が非でも敵地での初戦をとりたい。“倍返し”が流行語になった2013年、独立リーグの世界でも、そんな言葉がピッタリのエンディングを飾りたいところだ。

<グランドチャンピオンシップ概要>

【試合日程】
★BCリーグラウンド
10月19日(土) 第1戦 石川−徳島 金沢市民野球場 18時15分
10月20日(日) 第2戦 石川−徳島 金沢市民野球場 18時15分
※雨天などで順延の場合、予備日程で実施(10月21日〜22日 金沢市民野球場 18時15分)

★四国アイランドリーグPlusラウンド
10月26日(土) 第3戦 徳島−石川 JAバンク徳島スタジアム 17時
10月27日(日) 第4戦 徳島−石川 JAバンク徳島スタジアム 17時
10月28日(月) 第5戦 徳島−石川 JAバンク徳島スタジアム 17時
※雨天などで順延の場合、第5戦終了時で決着がつかない場合、予備日程で実施(10月29日 アグリあなんスタジアム 18時 10月30日〜31日 JAバンク徳島スタジアム 17時)。

【チケット】
<BCLラウンド>大人:1,500円 小・中学生:500円 未就学児:無料
<四国ILplusラウンド>大人:1,500円 小・中学生・未就学児:無料

【ルール】
・3戦先勝したチームが優勝とする。
・全5戦を終了した時点でいずれかのチームの勝敗が3勝に満たない場合は、対戦成績で勝数の上回っているチームが優勝。対戦成績が同じ場合は、予備日にて追加で1試合を行ない、勝ったチームの優勝とする。
・雨天等により予備日を含む全ての日程を消化できなかった場合は、対戦成績で勝数の上回っているチームが優勝。対戦成績が同じ場合は両チーム優勝とする。
・9回裏を終了して同点の場合は延長戦を行う。延長戦は原則として決着がつくまで行う。ただし、球場使用時間の制限などで引き分けとなる場合がある。
・予告先発は採用しない。

<アイランドリーグ選抜、斗山相手に初勝利 〜フェニックス・リーグ〜>

 みやざきフェニックス・リーグに参戦中の四国アイランドリーグPlus選抜チームは18日、韓国プロ野球の斗山ベアーズと対戦して、6−4で勝利した。リーグ選抜は2点を先制されたものの、5回に宗雪将司(香川)の2点打などで逆転に成功する。6回にも高田泰輔のタイムリーが飛び出して3点を追加。相手の反撃を継投でかわして逃げ切った。リーグ選抜は今リーグで初勝利。成績は1勝6敗1分となった。19日には北海道日本ハムと生目の杜第2野球場で対戦する。

 生田目(香川)、2打席連続犠飛(生目の杜第2野球場)
アイランドリーグ選抜 6 = 000033000
斗山ベアーズ     4 = 101002000
[ア] 篠原(香)−雄晴(高)−伴(愛)−吉川(高)−金森(愛)
[斗] イ・ヨンホ−ジョン・ヒョクジン−パク・ミンジョン