ロシアW杯開幕までおよそ2週間となりました。今月18日、日本代表の西野朗監督はガーナ代表との壮行試合メンバーを発表しました。このメンバーで本番に臨むわけではないですが、選ばれた彼らがベースとなるのは間違いなさそうです。

 

 メンバーを見た率直な感想は期間が短いということもあり「随分、置きに行ったなぁ」という感じがします(笑)。実績のあり計算ができる選手が入りました。もう少し、若手を入れるのかなとも思いましたが、固めてきたなという印象です。

 

 監督交代は“BIG3”に追い風

 

 昨年8月のW杯アジア最終予選サウジアラビア戦以来、本田圭佑、香川真司、岡崎慎司の3人が揃いましいた。彼らにとって今回の監督交代劇は追い風になっていますね。とはいえ本田は所属先のパチューカで好調をアピールできていましたし、選ばれて当然でしょう。

 

 乾貴士、香川真司、岡崎慎司らはケガを抱えて合流したようです。彼らはフィジカルコンタクトの激しい海外リーグでプレーしています。経験値が高い選手たちなので西野監督も最終メンバーに入れたいのでしょう。この期間で故障をしっかり治して欲しいです。

 

 一方で、3月のベルギー遠征で評価を高めた中島翔哉が選外となりました。彼は試合途中から流れを変えられるカードになり得ると思いましたが、まだ西野ジャパンはフォーメーションが定まっていないこともあり外れたのでしょうね。

 

 フォーメーションといえば、西野監督は長谷部誠をリベロに置く3バックを試しているようです。ただ、ウィングバックが攻撃参加した時の裏のスペースを誰がカバーするのか。これをはっきりさせないと相手に狙われるリスクが非常に高くなってしまいます。選択肢を増やすのは良いことですが、安定感を追求するなら僕は4バックのままが有効だと思います。DFラインはすごく繊細です。急造で3バックに着手するより、慣れた4バックで戦った方がスムーズなのではないかなと考えています。

 

 4バックと3バック。簡単に言えばピッチの横幅68メートルを4人で割るのか、3人で割るのか。3人だと1人の守る範囲が広がるわけです。そこで世界レベルのスピード、技術を持った選手たちと戦えるのか。振り回されてマークのズレが生じることが一番怖いですね。この短期間でどこまで完成度を上げられるか、楽しみでもあり少し不安なところです。

 

 イニエスタはジーコになれるのか

 

 Jリーグに目を移すと、大きなニュースがありました。現役スペイン代表でバルセロナFCに所属していたアンドレス・イニエスタがヴィッセル神戸に加入しました。3年契約、年俸が約32億円の大型契約です。すごいことになりましたねぇ(笑)。

 

 正当な評価として32億円という数字が出てきて僕は良かったと思いました。“日本でもこれだけの年俸が出るんだ”というのが当たり前になれば、選手の発奮材料にもなります。子供たちにも、“将来、数十億円を稼げる選手になるんだ”という気持ちを持ってほしいです。

 

 また、神戸の三木谷浩史会長はイニエスタにはユース年代の育成メソッド作成にもかかわって欲しいみたいです。“サッカーとはこういうものだ”というのを伝えてくれることに期待しているのでしょう。

 

 かつてジーコが鹿島アントラーズで行ったことをイニエスタにも求めているはずです。これを機に神戸も常勝軍団になれるのか。非常に楽しみです。これだけのスーパースターがJリーグに入れば、国内のみならず世界の眼も日本に向きます。イニエスタ効果はかなり大きいと思いますね。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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