メジャーリーグ機構(MLB)は現地時間16日付で、日本野球機構(NPB)と協議していた新たなポスティングシステムが合意に達したと発表した。新しいシステムでは選手の移籍を認めたNPB球団が、2000万ドル(約20億円)を上限に入札金額を設定。その金額で入札した全チームと交渉可能になる。ポスティングは11月1日〜翌2月1日までに実施し、交渉期間は入札が選手側に公示された翌日から30日間。合意を受け、動向が注目されていた東北楽天の田中将大は、球団に新システムを利用してMLBへ移籍したい意向を伝えた。
 入札金額を抑えたいMLB側と、複数球団と交渉して選手の待遇を高めたい日本プロ野球選手会側の意向が反映された新制度だ。

 98年に導入された同システムでは、NPB球団がMLB移籍を認めた選手に対し、獲得を希望する球団が金額を設定して入札。最高金額を提示した球団に独占交渉権が認められてきた。

 近年は日本のトップ選手が海外FA権を取得する前に、同システムを活用して移籍するケースが増加。06年には松坂大輔(当時西武)に対し、ボストン・レッドソックスが約5111万ドル(当時レートで約60億円)、11年にはダルビッシュ有(同北海道日本ハム)に、テキサス・レンジャーズが約5170万ドル(同約40億円)で交渉権を獲得し、MLB側では入札金の高騰が問題視されていた。

 一方、移籍を希望する選手側もとっても同システムにはデメリットがあった。交渉相手が1球団に限られているため、年俸面では安く抑えられるかたちとなり、10年の岩隈久志(当時東北楽天)、11年の中島裕之(同埼玉西武)では交渉が決裂し、移籍に至らなかった。こうした状況下で昨年、MLB側は同システムの継続を希望しなかったため、新たな制度設計が必要になっていた。

 当初、新システムには最高入札額を提示した球団が交渉権を得る点は変更せず、落札額のみ、最高額と2番目の入札額の中間程度に抑える案がまとまりかけた。選手会は、希望する複数球団との交渉はできない制度ながら、田中のMLB移籍が取り沙汰される状況を踏まえ、2年間の期間限定との条件をつけて新システムを了承。しかし、結局は入札金の高騰が免れないMLB側から反発が出て白紙に戻っていた。

 今回、合意したシステムは、入札金の上限が設定されたため、NPB球団としてはメリットが薄い。特に渦中の田中を抱える楽天は、従来のシステムなら1億ドル(約103億円)でMLB球団が入札する可能性も報じられていただけに、身入りが極端に少なくなる。とはいえ、24勝0敗という驚異的な成績を残し、初の日本一に貢献したエースの希望を却下するわけにもいかないだろう。球団は田中へ残留を要請した上で、移籍を容認するかどうかは結論を持ち越した。

 大黒柱を失う可能性のある楽天にとっても、獲得を希望するMLB球団にとっても、早期に決着をつけなければ次の段階に進めない。楽天球団が、田中の思いにどう応えるのか。その決断に日米が注目している。