31日、Jリーグは事務局で総会と理事会を開き、第5代チェアマンに村井満氏(元リクルート執行役員)を選出した。任期は2016年3月まで。また、理事には小宮山悟氏(野球評論家)、有森裕子氏(女子マラソン五輪銀メダリスト)らサッカーとは異なるスポーツの識者も選任。特任理事として、宮本恒靖氏(元日本代表)、山本浩氏(元NHKアナウンサー)を選出した。会見では村井チェアマンや新任理事が抱負を語った。
(写真:村井チェアマンは「Jリーグに寄せられる期待は大きい」と語る)
 今季で開幕21年目となるJリーグが、新体制で船出した。村井チェアマンは「ひとりでも多くの方々にスタジアムに来ていただくことが私のテーマ」と意気込んだ。

 また、リーグづくりを進める中で、村井氏はフェアプレーをキーワードに掲げた。
「世界のサッカーシーンで、本当にフェアなプレーをするのはJリーグなんだというブランディングをはっきりさせたい。ピッチ上のフェアプレー。ファイナンシャルフェアプレーでは、絶対に給料の遅配などはしない。もしくは社会的な八百長などは日本にはない。世界のどこにいっても、日本のJリーグはフェアで見習うべきだと思ってもらえるようにしたい。そういったところを思い切り、私は磨ける余地があるのではないかなと思う」

 サッカーとは異なる分野から人材を集めたことについては、「(リーグ活性化の)難易度は増している中で、それをブレイクスルーしていくために、リーグのボードメンバーにプロフェッショナルを集めることが重要だった」と説明した。小宮山氏は日本のプロ野球とメジャーリーグでプレーし、有森氏はプロマラソンランナーとして様々な土地を巡ってきた。そういった他分野の見識を組み入れることで、サッカーのみならず、日本の総合スポーツ文化広げていくJの理念を実現する。野球評論家の小宮山氏が「日本のサッカー界にとってプラスになるような意見を言いたい」と語れば、陸上出身の有森氏は「2020年(五輪・パラリンピック)もある。日本にこれからスポーツがどれだけ大事になっていくかということを広めていけたらと思っている」と抱負を述べた。
(写真:有森氏は理事就任について「非常に光栄。つたない経験だが、少しでも役に立てていけるように」と述べる)

 もちろん、サッカー界からの声を軽視するわけではない。その証とも言えるのが、宮本氏の存在だ。17年間の現役生活で、宮本氏は15年間、Jリーグでプレーした。W杯にも2大会出場し、国内と世界の実情を選手として経験している。昨年はFIFAマスターで多角的にサッカーを学んだ。

「僕は本当にJリーグによって成長させてもらったというふうに思っている。今は、それを還元する立場にある。具体的には日程の問題、いろいろな問題に対して、選手側に立った意見を出していければいい。
 たくさんの選手が海外に行ってプレーしている状況は素晴らしいことだと思う。しかし、やはり国内リーグがこれからもずっと繁栄していくことは非常に大事。Jリーグのブランドがもう一度高まるようなことに貢献していきたい」
(写真:「いろいろ経験してきたことを自分の中で融合して、理事会で発言していきたい」と語る宮本氏)

 現役を引退して間もない宮本氏は、選手とリーグの橋渡し役に最適な人材だと言える。現場の声をうまく拾い、具現化していくことは、リーグのクオリティ向上にもつながるだろう。また村井チェアマンは宮本氏と山本氏の特任理事2名に「サッカーそのものをもっと広めていってもらいたい」という役割も期待した。

「Jリーグがこの20年間で大変な発展を遂げている。数多くのJリーガーが世界で活躍し、ブラジルW杯でもその活躍が期待される。一方、Jリーグはどんどん次なる選手を育て、リーグそのものの活性化を推し進めたい」

 村井チェアマンは今後の抱負をこう語った。15年にはシーズン制度が変更される。また、J3の発足でJクラブ数がさらに拡大していくことは確実だ。希望と不安が混在する中で、“Jリーグ丸”がどのような航海をしていくのか。新船長の舵さばきが注目される。

今回選出された理事・監事・特任理事は以下の通り。()内は所属。

【チェアマン】
村井満(Jリーグ)

【専務理事】
中野幸夫(Jリーグ)

【常務理事】
大河正明(Jリーグ)
中西大介(Jリーグ)

【理事(非常勤)】
有森裕子(株式会社RIGHTS.代表取締役社長)※
井畑滋(株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー代表取締役社長)
上西康文(白百合女子大学事務局長)
岡野雅夫(大阪サッカークラブ株式会社代表取締役社長)
上川徹(日本サッカー協会理事)
亀井文雄(株式会社愛媛FC代表取締役社長)
木村正明(株式会社ファジアーノ岡山スポーツクラブ代表取締役)※
小宮山悟(野球評論家)※
武田信平(株式会社川崎フロンターレ代表取締役社長)
原博実(日本サッカー協会専務理事)
原田宗彦(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)※
福島義広(株式会社名古屋グランパスエイト代表取締役社長)
村松邦子(株式会社ウェルネス・システム研究所代表取締役)※

【監事】
味村隆司(株式会社日本国際映画著作権協会代表取締役)
吉田修己(吉田公認会計士事務所)

【特任理事】
宮本恒靖(元プロサッカー選手)※
山本博(法政大学教授)※

※は新任

(写真・文/鈴木友多)