結果に対する評価は難しい。1億総評論家と化すサッカーW杯ともなれば、なおさらだ。3日未明、カーテン越しに外をのぞくと、ほとんどのマンションの窓から薄灯りがこぼれていた。そこでは歓声と悲鳴にまじって、無数のウンチクが飛びかっていたはずである。

 

 ロシアW杯、ベスト16に進出したチームの中で、FIFAランキング61位の日本は、開催国ロシアの70位に次いで下から2番目だった。しかもアジアでは唯一。その意味では大健闘である。

 

 一方で4戦したものの、勝ったのは初戦のコロンビア戦だけ。「それも所詮、10人が相手の」と冷ややかに言われると、カチンとはくるものの、それは厳然とした事実であり、直視するしかない。

 

 避けなければならないのは、この4年間の検証と分析も終わらないうちに、次期監督が、いつの間にか決まってしまうことである。この国には「水に流す」という言葉があるが、流していいものと悪いものがある。それを仕分けするために設けられたのが技術委員会ではなかったか。であるならば、その報告を待ってからでも監督選びは遅くないように思われる。

 

 いや、争奪戦に出遅れてはいけない、と息巻く者もいる。しかし、「急いては事を仕損じる」との格言もある。ハビエル・アギーレに対する“身体検査”は万全だったのか。同じ過ちを繰り返してはならない。

 

 ポスト西野は日本人がいいのか外国人がいいのか。個人的にはどちらでもいいと考えている。大事なのは、その人物のサッカー観と日本代表との親和性だろう。それを踏まえれば、「外国人監督ファースト」の時代は終わったのではないか、と考える。そこをネグると「間違いだらけの監督選び」に陥ってしまう。

 

 若い頃に憧れたジャーナリストがいる。「間違いだらけのクルマ選び」というベストセラーで一世を風靡した徳大寺有恒だ。その博覧強記ぶりに魅了された者が多くいる一方で「欧州車びいき」と陰口を叩く者もいた。しかし徳大寺は、どこ吹く風だった。「外国車に乗るということはその味を買うことだろうと思う。機能を買うなら多くの国産車がそれを果たしてくれるし、経済的でもある。しかし、味は買えない」。ここまで言われれば、しぶしぶながらも納得する。ここまで言われれば…。問題は、どんな「味」を買うかだ。

 

 

<この原稿は18年7月11日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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