(写真:各チームの代表者が勢揃い。開幕に向けて意気込みを語った)

 20日、ジャパンラグビー・トップリーグは都内ホテルで2018-19シーズンに向けたプレスカンファレンスを開催した。今シーズンは31日の開幕戦を皮切りに各チーム7試合戦う。リーグは今シーズンも2カンファレンス制を導入。レッドとホワイトの上位4チームずつがトップリーグ優勝を懸けたトーナメントに進める。また今シーズンはカップ戦(トップリーグカップ)を行い、16チームが4プールに分かれて予選を戦う。

 

 自国開催のW杯を翌年に控え、16年目のトップリーグが開幕する。3年前のイングランドW杯でジャパンが躍進し、一時はラグビーブーム再燃も期待されたが、それを持続できなかった。

 

「極めて重要なシーズン」と高島正之チェアマンは位置付け、目標の総入場者数を過去最多の「50万人」を掲げた。これまでの最高は15-16シーズンの49万1715人。W杯が近付く中、ここ2シーズン越えられていない壁だ。今シーズンのリーグ戦はジャパンの強化が優先となり7試合制の短期決戦となったが、カップ戦を新たに加えて全体の試合数減をカバーする。

 

 開幕節は優勝候補同士の対決となった。2連覇中のサントリーサンゴリアスと昨シーズンベスト4のトヨタ自動車ヴェルブリッツ。プレスカンファレンスではサントリーの流大とトヨタ自動車の姫野和樹の両主将が登壇した。

 

 帝京大学の1学年先輩にあたる流は勝つために必要なことを問われると「姫野を止めること」と答えた。昨シーズンルーキーながら主将を務めた姫野は持ち前の馬力でチームを牽引した。ジャパン入りも果たした躍進の象徴である。「勢いをつけさせないようにしたい」と流は語った。

 

(写真:共に若くしてキャプテンを任され、飛躍的に成長した姫野と流)

 3チーム目の3連覇なるか。サントリーは進化を止めない。ジョージ・スミスらが抜けた穴は小さくないが、帝京大から堀越康介と尾崎晟也、明治大学からは梶村祐介など有望な若手が加わった。「ルーキーも素晴らしい。確約されたポジションはひとつもない。チームとしての力は上がっていると思います」。流は底上げに手応えを感じている。

 

 ジャパンの選手を多く抱えるサントリー。今シーズンは対象となった選手は試合に出場できないプロテクト節(第7節)が設けられる。沢木敬介監督は「ジャパンがいなくなって精度がガクッと下がるようではチームもそこまで。ウチはそうならないようにしっかり鍛えているつもりです」ときっぱりと言う。

 

 今シーズンはアタッキングラグビーに磨きをかける。「アタッキングラグビーという軸はあるがいろいろなパターンがある。そういう戦いを試していきたい」と指揮官。開幕戦は豊田スタジアムで行われ、アウェイという状況だが沢木監督は「闘争心やハングリーさを引き出してくれると思います」と歓迎する。

 

 7シーズンぶりにベスト4に入ったトヨタ自動車も多くの選手が入れ替わった。新たに加わった13人のうち8人が大卒ルーキー。就任2年目のジェイク・ホワイト監督はルーキー5人のスタメン抜擢も匂わせた。昨シーズンは1年目の姫野を主将に据えるなど若手起用に積極的だ。

 

 若き主将・姫野はチームの変化を喜ぶ。

「新加入の選手たちは良いエナジーを与えてくれている。僕が期待するのは帝京大学で一緒だった吉田杏。切磋琢磨をしてきた弟みたいな存在です。これからも切磋琢磨をしてトヨタの新たな歴史をつくりたい」

 

 フィジカルを生かしたパワフルなFW陣が強みのトヨタ自動車。茂野海人が今シーズンからプレー可能となり、マレ・サウも加入でBKの戦力が厚みを増した。「今年はスピードのあるBKがいるので、そこで取り切れる。BKとFWが一連となったアタックができれば勝てる」と姫野。トップリーグ初制覇に向けて、まずは王者を下して勢いに乗りたい。

 

 トップリーグ初昇格の日野レッドドルフィンズも注目のチームに挙げられる。創部50年目。今シーズンからチーム名から企業名を外した。細谷直監督は「“新しい時代のリーディングチームになっていくぞ”というメッセージ。だからこそ結果にこだわりたい」と鼻息が荒い。移籍2年目で主将に就任した村田毅は「僕らが街の誇りとなるために戦う」と意気込む。

 

(写真:「この舞台に立つことを心待ちにしてきた」と語る村田)

 16年からトップリーグの経験豊富な選手を積極的に補強してきた。今シーズンも13人を獲得。イングランドW杯を経験した木津武士、ニュージーランド代表キャップを持つオーガスティン・プルが加わった。細谷監督が昨シーズンと比べて「競争力が断然違う」と語れば、村田も頷く。「外から来た選手も“貢献しよう”という思いがあり、社員選手たちも自分たち出てやろうと強い気持ちを持って競争し合っている。去年より格段に良い」と自信を覗かせた。

 

 日野の強みは我慢強いディフェンスとセットプレー。特にセットプレーは木津、パウリアシ・マヌの加入でパワーアップ。細谷監督は「スクラム強度が上がったことで安定した」と胸を張る。セットプレーの安定がBKにチャンスを与える。村田は注目の選手のひとりに「誰もが認めるフィニッシャー」という新人の竹澤正祥を挙げた。

 

 RTP(リターン・トゥー・ポジション)――。昨シーズンからこの言葉をキーワードに、倒れてから起き上がりポジションに戻るまでの時間を極力短くした。細谷監督はトップリーグ昇格に繋げた意識改革のアップデートを図る。
「トップリーグにくればどのチームもやっていることです。今シーズンはプラスワンワーク。その一手が打てるかどうかに勝てる要素が詰まっている」

 

 目標はベスト8。そのためにはサントリー、トヨタ自動車のレッドカンファレンスで上位4チームに入る必要がある。「トップリーグに上がったことで皆が厳しさを持てるようになりました。環境が人を変える。意識のレベルはひとつ上がっていると思います」と村田。トップリーグ初挑戦のスタートは宗像サニックスブルースと対戦する。細谷監督は「1勝の重みは大きい。単なる7分の1じゃない」と、この一戦に懸けている。日野旋風を起こせるか。開幕戦がカギを握る。

 

 トップリーグ16年目の進化はどうなるか。高島チェアマンは「16年の間に進化し、レベルが上がってきた」と胸を張る一方で、「運営面のレベルが上がらないといけない」と課題を口にする。W杯に向けて、いかにリーグを盛り上げるか。真価が問われるシーズンとなりそうだ。

 

(文・写真/杉浦泰介、取材/長友海咲輝)