16日、世界バドミントン連盟(BWF)公認のワールドツアー「ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン2018」各種目決勝が東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで行われた。男子シングルスは桃田賢斗(NTT東日本)がコシット・フェトラダブ(タイ)をストレートで下した。桃田はジャパンオープン初優勝。同種目日本勢の優勝も初だった。女子ダブルスはBWF世界ランキング1位の福島由紀&廣田彩花組(岐阜トリッキーパンダース)が同2位のチェン・チンチェン&ジァ・イーファン(中国)を破り、同大会初優勝。女子シングルスは奥原希望(日本ユニシス)がキャロリーナ・マリン(スペイン)に1-2で敗れ、3大会ぶりの優勝はならなかった。マリンは大会連覇を達成した。

 

 その他の種目は男子ダブルスはマルクス・F・ギデオン&ケビン・S・スカムルヨ組(インドネシア)、混合ダブルスはジェン・シーウェイ&ファン・ヤチョン組(中国)が制した。ギデオン&スカムルヨ組は大会連覇。ジェン・シーウェイ&ファン・ヤチョン組は同ペアとして初優勝を果たした。

 

 憧れの舞台で初優勝

 

 優勝が決まった瞬間、ヒザをついて歓喜の想いを表した桃田。全戦ストレート勝ちだったが、タフな相手との試合が続いた。準々決勝は北京&ロンドンオリンピック金メダリストのリン・ダン(中国)、準決勝は昨年の世界選手権を制したBWF世界ランキング1位のビクター・アクセルセン(デンマーク)が相手だった。

 

「疲労はピーク。気持ちの勝負だった」と桃田。決勝の相手は同世代のフェトラダブだ。フェトラタブは「大きな大会での決勝進出は初」というが、1回戦で今年の世界選手権銀メダリストのシー・ユーチー(中国)、準々決勝ではリオデジャネイロオリンピック金メダリストのチェン・ロン(中国)を撃破するなど勢いに乗っている。

 

 第1ゲーム目から桃田は巧みなラケットワークで相手を前後左右に揺さぶる。守ってもシャトルを拾い続け、ダイナミックな強打が持ち味のフェトラダブにペースを握らせなかった。21-14、約23分で先手を取った。

 

 続く第2ゲームも桃田が制した。中盤までは競ったものの、14-11から7連続得点で試合を決めた。傍目には圧勝したように見えたが、「後半はキツくて、“あと何点”と数えていました」という。そのため勝利の瞬間は「やっと終わった嬉しさと達成感」で、ヒザをついて喜ぶ大きなアクションとなった。

 

 ジャパンオープンは小さい頃から憧れていた舞台だった。「世界選手権よりも獲りたいタイトル」。初優勝が見えてきたサービスの場面では緊張で手が震えることもあったという。3年ぶりの出場となった今大会には「特別な気持ち。成長した姿を見てもらえるチャンス」との想いもあった。

 

 2020年東京オリンピックで競技会場となる武蔵野の森総合スポーツプラザ。「この会場で優勝できたことはオリンピックに向けて、すごく自信になりました。相性も良く、良い感覚でプレーできた」と2年後への手応えを掴んだ。

 

 好調続く日本

 

 ジャパンオープン初優勝の桃田に続いたのは、BWF世界ランキング10傑に5組揃える女子ダブルスだ。ランキングトップの福島&廣田ペアが、ライバルの中国ペアに快勝した。

 

 チェン・チンチェン&ジァ・イーファンはいずれも21歳と若いペアだ。インドネシア・ジャカルタで行われた今年のアジア競技大会金メダリスト。昨年の世界選手権も制している強者だ。福島&廣田ペアもアジア大会の個人戦(女子ダブルス)準決勝、昨年の世界選手権で敗れており、雪辱に燃えていた。「リベンジの気持ちでコートに入った」(福島)。

 

 前衛に廣田、後衛に福島というのが得意なかたちだが、相手ペアもそう易々とポジション取りを許してはくれない。対策を練られることはある程度織り込み済みだ。「相手も自分を前にさせないようにしているのかなと感じました。でも後ろに回されても、長いラリーになっても我慢すれば相手をミスしたり、どこかスピードを上げてチャンスをつくれると思っていたので、あまり焦ることなくやれました」と廣田。粘り強く戦った。

 

 今大会の会場は各選手から「シャトルが飛ばない」との声が聞かれた。ラリーになりやすく日本勢には有利と言われている。それは「我慢勝負は得意」という福島&廣田ペアにとってもだ。廣田が「レシーブから振ってもアウトにならないと思ったので、思い切って振ることができた」と口にしたように、ペースをうまく握れた。第1ゲームは21-15、第2ゲームは21-12で勝ち切った。

 

 世界選手権2年連続銀メダルの福島&廣田組はジャパンオープン初制覇。廣田は「ワクワクしていた大会。ホームゲームなので優勝したいという気持ちが大きかった」と語る。チェン・チンチェン&ジァ・イーファン組は今後もライバルとなる存在。負けが続けば苦手意識が生まれてしまう。オリンピック会場で勝ったこともプラス材料だ。

 

 この日、日本勢最後の出番となった奥原は世界女王マリンに挑んだが、力負け。同世代の桃田、廣田に続けなかった。 それでも「マリン選手とは昨年の世界選手権以来。スピード感がボンヤリしていたので、今日戦えたということは今後の対戦に向けて良い経験になりました」と収穫を口にした。

 

 37回を数えるジャパンオープンの歴史で日本勢の複数種目制覇は初。3種目で決勝進出を果たすなど、躍進続ける日本バドミントン界の勢いを感じさせた。大会最終日には6000人を超える観客が集め、東京オリンピックに向けた関心の高さも見受けられた。

 

(文・写真/杉浦泰介)