滝登りでもするかのように、3連覇に向け快進撃を続ける広島カープ。カープファンの興味は既にポストシーズンゲームでの戦い方に移っている。
9月17日現在、広島は75勝51敗2分け。128試合全てに出場しているのはセカンドの菊池涼介とショートの田中広輔の2人だけだ。
我が世の春を謳歌するカープファンだが、頭の痛い問題もある。順調に試合に出続ければ、菊池は来年、田中は再来年に国内FA権を取得する。
菊池は東京、田中は神奈川の出身。「関東のチームに移籍するのでは」と気をもむ声は少なくない。もっといえば、“不動の3番”丸佳浩は8月に国内FA権を取得した。
チームとしてはポスト・タナキクマルを探す一方で若返りにも着手しなければならない。そこでドラフトの目玉として急浮上してきたのが報徳学園のショート小園海斗である。
小園は宮崎で開催されたU-18アジア選手権の日本代表にも選ばれた。
この夏、小園は一回りも二回りも成長した姿を見せた。甲子園初戦の聖光学院戦では大会記録に並ぶ1試合3本の二塁打を放った。
レフト方向に伸びる打球。ファーストベース到達まで4秒を切る俊足。下半身の充実がパワーとスピードの伸長につながっているように映った。
3回戦の愛工大名電戦ではプロのショートストップ顔負けの守備を披露した。ポジショニング、グラブさばき、肩の強さ。どれをとっても超高校級である。
小園の将来性に二重丸を付けるのが菊池を発掘したことで知られる松本有史スカウトだ。1年生の時からマークしてきたが、順調に成長しているという。
まずは守備から。
「打球のコースに入るスピードが上がり、リズムも良くなっていた。送球も、よりスナップのきいたボールを投げられるようになってきましたね」
打撃はどうか。
「以前はバットが遠回りしていましたが、それが解消されて内側から最短距離でボールをとらえることができるようになった。後ろが小さくて前が大きい、いわゆるフォロースルーの大きなスイングがしっかりできています」
売り物の足は?
「聖光学院戦での3本の二塁打、どれも二塁到達のタイムが7秒台。これはプロでもトップレベル。とりわけ一、二塁間でトップスピードに乗るのが早い」
ベタ褒めである。二遊間が手薄なチームなら、ルーキーイヤーからスタメンで出られる可能性がある、と松本は言う。
カープからすれば、喉から手が出るほど欲しい逸材だが、それは他球団も同じ。ドラフト会議では、複数球団から1位指名を受ける可能性が高い。
言うまでもなく、ショートは難易度の高いポジションである。近年、高卒ルーキーで1年目から活躍した選手といえば元中日の立浪和義くらいである。彼はショートとして1年目から110試合に出場し、新人王とゴールデングラブ賞を受賞している。小園は“ポスト立浪”になれるのか。
<この原稿は2018年9月23日号『サンデー毎日』を一部再構成したものです>
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