2007年にスタートし、今年8年目を迎えたベースボール・チャレンジ・リーグ(BCリーグ)は9日、群馬ダイヤモンドペガサスと巨人(ファーム)との試合(NPBチャレンジKOMATSUシリーズ)で幕を開ける。今シーズンは6球団中3球団(群馬、信濃グランセローズ、富山サンダーバーズ)で新監督が就任。さらにNPBで活躍したアレックス・ラミレス(群馬)、高須洋介(新潟アルビレックスBC)がプレーイングコーチとして加入した。レベルの高い、見応えのある試合が期待できると同時に、各チーム力がアップし、混戦模様となりそうだ。
 実績十分の石川、新戦力に期待の福井 〜北陸地区〜

 昨季2年ぶりにリーグ優勝、そして独立リーグの頂点に立ったのが石川ミリオンスターズだ。その原動力となったのが安定した投手陣。今季で7年目となるベテラン南和彰(神港学園高−福井工業大−巨人−カルガリーパイパース)、昨季リーグ2位の防御率1.75をマークしてブレイクした上條優太(八千代東高)、そして45歳となった今もなお進化を目指す木田優夫(日大明誠高−巨人−オリックス−タイガース、オリックス−ドジャース−マリナーズ−東京ヤクルト−北海道日本ハム)の3人が、今季も柱となる。大学時代にはノーヒットノーランを達成した長谷川潤(成立学園高−金沢学院大)や、196センチ長身でサイドから角度のある球を投げるチャールズ・ネイディング(米国)などの新加入選手が即戦力として期待通りの力を発揮できれば、さらに強固な投手力が築けそうだ。

 一方、野手には迫留駿(日本航空第二高−京都フルカウンツ−高知ファイティングドッグス)、板橋秀憲(佐野日大高−日本大−FedEx)と長打力のある左打者が加わり、昨季チームトップの10本塁打を放ったヘサス・バルデスの抜けた穴を埋める。既存のメンバーには小倉信之(国士舘高−国士舘大−茨城ゴールデンゴールズ−FedEx)、谷口貴之(遊学館高−06BULLS)をはじめとする俊足がそろっており、機動力と長打力を兼ね備えたバランスのいい打線が期待できそうだ。

 4年連続でプレーオフに進出しているものの、未だ頂点に立ったことのないのが福井ミラクルエレファンツだ。今季は球団初の前期優勝に向けて、開幕ダッシュを狙う。
11名の新加入選手の中で、首脳陣から即戦力として期待されているのが、右腕の石野公一郎(佼成学園高−東京経済大)。183センチの長身から繰り出す最速148キロの直球を武器とする本格派で、昨秋は首都大学2部リーグで4勝0敗、防御率0.81の好成績を残し、MVPに輝いた。ツーシーム、スライダー、フォークと変化球も多彩だ。

 20歳の藤岡雅俊(桐蔭学園高−中央大<中退>)は将来的にはNPB入りが期待されているほどの逸材。最速146キロの直球は球速以上に伸びがあり、フォークのキレもいい。実戦でのスタミナが当面の課題だが、1年目でどこまで成長するかに注目したい。また、群馬から移籍した清水信寿(豊田西高−中京大−エイデン愛工OB BLITZ−三重スリーアローズ)は140キロ台後半の直球が武器の本格派。昨季はリーグ5位の12セーブを挙げ、2年連続で2ケタセーブをマーク。福井でも絶対的守護神としての活躍が期待される。野手では50メートル5秒7の森亮太(三好高−至学館大)、同5秒8の内之倉敦士(智弁学園高−日本経済大−紀州レンジャーズ−信濃グランセローズ)と俊足2人が加わった。足を使った攻撃で得点チャンスを数多くつくりたい。

 既存ではコーチを兼任する藤井宏海(福井高−ロッテ−三菱自動車岡崎)や、昨季は後期だけで5勝を挙げて地区優勝に貢献した関口貴之(小豆島高−東北福祉大−吸収三菱自動車)、中継ぎとして15試合を投げ、防御率1.80と安定感抜群だった松田翔太(金沢学院東高−広島<育成>−石川)も健在だ。野手ではチーム一の打率(2割9分8厘)、打点(28)をマークした森田克也(愛知啓成高−愛知学院大)が打線の中心となる。

 10年から4シーズン、優勝から遠ざかっているのが富山サンダーバーズだ。だが、昨季は新潟に次ぐリーグ2位の防御率(3.02)をマークし、投手力は確実にアップしている。特に成長著しかったのは、高塩将樹(藤沢翔陵高−神奈川大−横浜金港クラブ)。1年間先発ローテーションを守り続け、チームトップの9勝を挙げた。今季は真のエースとなれるかに注目したい。シーズン途中の加入ながら主戦として活躍した秦裕二(智弁学園高−横浜)、最速151キロの剛腕守護神・大竹秀義(春日部共栄高−信濃)も健在。元横浜DeNAで新加入の190センチ長身右腕・安斉雄虎(向上高)は即戦力として期待される。

 打線は昨季、盗塁王(36)に輝き、打率もリーグ5位の3割3分をマークした野原祐也が柱となる。07年には首位打者(4割1分2厘)とともに本塁打王(14本)に輝いている野原だけに、今季は長打力にも期待したい。また、昨季は新人ながら56試合に出場し、打率3割6厘、23打点をマークした大江戸健斗(遊学館高−大東文化大)はさらなる飛躍を遂げられるか。

 新潟、投打の穴を埋められるか!? 〜上信越地区〜

 2年連続で前後期ともに勝率7割台と圧倒的な強さを誇り、通期ではリーグ歴代最多となる52勝をマークした新潟アルビレックスBC。当然、リーグ連覇は確実だと思われていた。だが、リーグチャンピオンシップでレギュラーシーズンでは6勝2敗と大きく勝ち越し、後期においては4戦全勝していた石川に3連敗を喫し、連覇の夢を断たれた。その雪辱を誓う新潟のチームスローガンは「最強」だ。

 昨季、リーグトップの防御率2.39を誇った新潟の投手陣。2位の富山が3.02ということを見ても、新潟の投手陣がいかに強固だったかがわかる。だが、2年連続最多勝利(12年=14勝、13年=15勝)、昨年は最優秀防御率(1.35)も獲得し、絶対的エースとして君臨してきた寺田哲也が四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズに移籍した。この大きな穴をどう埋めるのかがカギを握る。先発の一角を担い、10勝4敗、防御率2.01の好成績を残した佐藤弘輝も退団しており、就任2年目、ギャオスこと、内藤尚行監督の手腕が問われそうだ。

 野手では勝負強さとパンチ力を兼ね備え、昨季はリードオフマンとして活躍した福岡良州が退団。それだけに昨季はケガでシーズン途中から戦線離脱した、12年の盗塁王(37)・野呂大樹(堀越高−平成国際大)の復活がカギを握る。また、プレーイングコーチとして加入した高須洋介(金沢高−青山学院大−近鉄−東北楽天)の堅実なプレーがチームに浸透すれば、守備力の向上も期待できる。

 6球団で唯一優勝がない信濃グランセローズは、オフに大型補強を敢行した。投手はロッテ時代には2度の日本一を経験し、昨季は群馬に所属した小林宏之(春日部共栄高−ロッテ−阪神)、野手は途中加入ながら出場42試合で53安打、40打点(リーグ4位)、10本塁打(リーグ2位)、打率3割4分9厘をマークし、石川の日本一に貢献したヘサス・バルデス(ドミニカ)を獲得。2人が投打の柱となり、悲願の初優勝を狙う。昨オフに一度は退団した杉山慎(市立船橋高−日本大学国際関係学部−全足利クラブ)も復帰している。実績は十分で、大塚晶文新監督にとっても頼れる存在となりそうだ。

 かつては08〜10年と3年連続で地区チャンピオンシップを制し、09年にはリーグ優勝を達成。上信越地区では圧倒的な強さを誇っていた群馬だが、11年の後期以降、「優勝」から遠ざかり、低迷が続いている。今季は川尻哲郎新監督、松永浩美新コーチ、そしてプレーイングコーチとしてラミレスが加わり、心機一転、チーム再建を目指す。昨季、初の2ケタ勝利(11勝)を挙げた栗山賢(日本文理高−鷺宮製作所)は年々、確実に成長しており、エースとしての風格も出てきた。昨年6月にケガから復帰した堤雅貴(高崎商業高)が完全復活し、栗山と“Wエース”となれば、優勝に大きく近づく。

 打線は昨季本塁打王(24本)、打点王(63点)の2冠に輝いたフランシスコ・カラバイヨ(ベネズエラ)と、新加入のラミレスの両外国人でリーグ屈指の長打力を誇るだけに、2人の前にいかにランナーをためられるかが重要となりそうだ。だが、既にラミレスにはNPB復帰の話も浮上しており、抜けた時の戦力ダウンは否めない。日本人選手の奮起が優勝には不可欠となる。